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第二部 宰相閣下の謹慎事情
361 レイナ・ユングベリ
※1日複数話更新です。お気を付け下さい。
「そうか……〝ツェツィ・オンペル〟が蘇るか……」
王都商業ギルドに戻って来て、決めた物件についてイフナースが説明をすると、アズレート副ギルド長が、やや感慨深げな目になっていた。
元々、夫人の夫であるベルドヴァ男爵が、フォルシアン公爵領内にある領地を息子に任せて退いた後、王都学園の教師として雇われたと言う事で王都に居を構えていたらしい。
夫亡き後、領地に戻る話が出たものの「今更姑は邪魔でしょう」と、一人王都に残る事を選んで、自分もお直しのお店を手掛けるようになったんだそうだ。
先代ベルドヴァ男爵とその妻と言う肩書きを持ちながらも、清貧を尊ぶ為人だったそうで、周囲との衝突もなく、夫人が亡くなった際も、近隣住民皆が悲しんだ――と言う事らしい。
「ちょうど夫人が、亡き先代男爵から受け継いでいらした財産の整理と、ベルドヴァ男爵領への還元手続きが終わったところで、あの邸宅の保護権も同時に解除されましたからね。これも何かの縁と、ご案内したのですよ」
なるほど夫人の死去と共に、土地建物の権利がギルドに戻ってきたところだったと言う事か。
前回はまだ候補の中になかったと言う事は、本当にタイミングが良かったんだろう。
アズレート副ギルド長が口にした〝ツェツィ・オンペル〟は以前のお店の名前で、夫人の名前であるツェツィーリアと、夫人の故郷の言葉で「縫製」を意味する「オンペル」から名付けられていたそうだ。
「何しろ高齢の老婦人と使用人のみの暮らしだったからな。教員採用に携わっていたボードリエ伯爵の依頼で、私やギルド長も時々様子を見に行っては、お茶をご馳走になったものだ」
一応、わざと服のボタンを一つ外したり、見え見えなりの理由はいつも付けて行っていたそうだが、毎回バレバレで、夫人もクスクスと微笑いながらお茶を振る舞ってくれていたんだそうだ。
さすが夫が王都学園の教師にスカウトされるだけあって、夫人本人の知識も豊富で、ギルド長や副ギルド長が〝ロッピア〟関連のトラブルで王宮に上がる時などは、礼儀作法のチェックなんかもしてくれていたとか。
そんな女性なら、私も会ってみたかったと思う。
きっと公爵邸で礼儀作法を教えてくれる皆とは、また違った話が聞けただろうに。
「ボードリエ伯爵やフォルシアン公爵もご存知のご夫婦だったと言う事ですか?」
首を傾げる私に、どうだろうな…と首を傾げたのは、意外にもエドヴァルドだった。
「ボードリエ伯爵は、学園関連で顔を合わせる事くらいはあっただろうが、フォルシアン公爵となると、男爵家との身分の差が大きすぎて、会う機会もなかったかも知れん。恐らくは、傘下の貴族が王都にいる――あたりの認識だったと思うが」
「ええ。私も生前のご夫妻からは、ボードリエ伯爵以外の高位貴族のお名前を耳にする事はありませんでしたね。恐らく、ギルド長もそうでしょう」
アズレート副ギルド長も、そう言って頷いている。
フォルシアン公爵の事は、傘下貴族がベルドヴァ男爵家だとの情報だけ、頭にあれば(今は)良いのかも知れない。
「あ、店舗については、名前をそのまま残すのは難しいかも知れませんけど、間取りに関しては少なくとも、1階部分は今の間取りを維持したいと思ってるんです。玄関先あたり、商会で取り扱う予定の新商品を並べたいので、少し手を加えたいかな…と」
まだ素案ですが…と前置く私に、それでも元の店の雰囲気がそれほど損なわれないと聞いたからか「……そうか」と、アズレート副ギルド長はちょっと嬉しそうだった。
この様子だと、リーリャ・イッターシュギルド長の反応も、もしかしたら似たようなものになりそうな気がした。
「ああ、すまない。話が逸れてしまったな。先に身分証に名前を入れ直してしまおう。マノン女史や革職人のファルダからは何も言われなかったか?まぁ…名前の修正に行くだけで、揉める要素もないと思うが」
「そうですね……そう言えば、揉めはしなかったんですけど、ギルド長さんから、有能な眼鏡職人がいたら紹介して欲しいとは言われましたね」
――身分証を受け取ったアズレート副ギルド長の手が、ピクリと揺れた気がした。
「眼鏡職人……ちなみにだが、心当たりは?」
「リリアート領のガラスの事はご存知だったみたいで、レンズを1枚お貸し下さいましたよ。同じ物ではなく、それ以上が作れるかどうか、職人本人の指標になれば…と。なので近いうち、リリアート領にあるいくつかの工房で聞いてみようかとは思ってるんですけど」
「……っ」
その瞬間、黙ってこちらのやりとりを耳にしながら、視線は手元の紅茶に向いていたヤンネが、喉に紅茶を詰まらせたのか、ゴホゴホと咽ていた。
「ああ……ちょっと今、キヴェカス卿の気持ちが分かったな……何故、身分証の革漉きに行っただけで、マノン女史から仕事を依頼されて帰って来る事になるのか……」
「えっ、でも、他の商会にも声をかけてあるってギルド長さん仰ってましたし、すぐさまユングベリ商会の案件になるとは限りませんよ?確かに、ギルド長さんの納得のいく職人や工房が見つかれば、独占販売権を取るに等しい事になるでしょうから、その後は大変かも知れませんけど」
「だが可能性があると分かれば、少なくとも現在の眼鏡の流通や販権事情については学んでおく必要が出て来る。見つかってからアレコレとギルドに申請の伺いを立てるようでは、他の商会に出し抜かれる可能性だってある訳だからな」
当然ギルドは中立平等の精神でもって、早く完成形の申請をした方を受け付ける――と、アズレート副ギルド長は重々しい声で私とヤンネを見比べている。
「……その時はよろしくお願いしますね?」
――ここは、言ったモノ勝ちだ。
そしてヤンネが何か言いかける前に、バーレント伯爵領内の村人の、職人ギルドへの登録の話も上乗せしておく事にする。
「それとさっきの職人ギルドで、バーレント領の職人が、向こうの領都の職人ギルドにちゃんと所属しているか、あと新しい製品を作るつもりなら、場合によっては王都職人ギルドへの申請が必要かもと言われたので、会社設立の件とまとめて確認お願い出来ますか?」
「……は?」
どうやら要領を得なかったらしいヤンネに、フォローを入れてくれたのはアズレート副ギルド長だった。
「ああ、確かに既存の製品を王都に流通させたいだけなら領都職人ギルドへの所属確認だけで済むが、特許権絡みの何かを作るとなると、所属ギルドは王都職人ギルドとなると言われたか。特許権問題は地方で扱って良い案件じゃないとされているからな」
とは言えあくまで手工業に限っての話であって、料理レシピに関しては商業ギルド生産部門管轄となるため、職人ギルドへの報告は必須ではないらしい。
「さっきまでキヴェカス卿には、領都職人ギルドへの所属確認の話はしていたが、王都の話はまだこれからと言うところだった。さすがに驚きの方が上をいったんだろう」
苦笑交じりにそう言いながらも、手は焼きごてを持って、一文字ごとに入れ替えるように動かしている。
「いやはや。私もこれまで多くの商会や店舗の設立、廃業と見てきてはいるが、登録前からここまで案件を抱えているのは初めてかも知れんな。アンジェスにギーレンか……そのうち、バリエンダールやサレステーデ、ベルィフまで加わってきても、もはや驚くまいよ」
「………あはは」
アズレート副ギルド長は、ちょっとした冗談のつもりだったかも知れないけど、思わず私が乾いた声を返して、エドヴァルドがこめかみを痙攣らせているのを見たからか、ヤンネの唇が微かに「…まさか」と動いているのが見えた。
ベルィフだけは、まだ何の伝手もないけど――と言おうにも、私がテオドル大公殿下とバリエンダールに行くのは、まだ表沙汰になっていない話であるため、私もエドヴァルドも、それ以上の反応がとれなかったのだ
「…ヤンネ、午後から高等法院に立ち寄れるか」
代わりにエドヴァルドが、今は言えないと言う意味もこめてそれを告げる。
「助手の話を進められるようにしておく」
私ではなくエドヴァルドの言葉となれば、事実上拒否権は存在しない。
夕方になると思いますが――と返すのが精一杯な様に見えた。
(多分そこで、テオドル大公絡みの話を聞いて膝から崩れ落ちそうだなぁ……)
うん、イデオン公爵領の為、死ぬ気で働いて貰おう。
意趣返し?――気のせいです!
「さて」
エドヴァルドとヤンネとの間の微妙な空気は敢えて見て見ぬフリで、アズレート副ギルド長は身分証を私の方へと戻して来た。
「実店舗登録申請書類と、現物としての銀は、先ほどキヴェカス卿経由で受け取らせて貰った。物件契約に関しては書類がまた別になる。仮契約書面をまず渡して、代金や内装外観工事の条件やなんかを持ち帰って最終検討してきて貰うのが一般的な流れだ。ユングベリ商会も、その形で良いか?」
「あっ、はい!その辺りはギルドの規則を遵守するつもりです」
「まあ規則と言うよりは、一番、後からの揉め事が少ない『慣習』と言った方が良いかも知れないがな」
そう言って、アズレート副ギルド長はニヤリと口元を歪めた。
「それでもこれで〝ユングベリ商会〟は実店舗のある独立した商会となり、同時に王都商業ギルドの本会員となった。――おめでとう、商会長〝レイナ・ユングベリ〟殿?」
再発行された身分証には、未だ見慣れないアンジェス国の文字で〝レイナ・ユングベリ〟――と、新たな名前が書き込まれていた。
「そうか……〝ツェツィ・オンペル〟が蘇るか……」
王都商業ギルドに戻って来て、決めた物件についてイフナースが説明をすると、アズレート副ギルド長が、やや感慨深げな目になっていた。
元々、夫人の夫であるベルドヴァ男爵が、フォルシアン公爵領内にある領地を息子に任せて退いた後、王都学園の教師として雇われたと言う事で王都に居を構えていたらしい。
夫亡き後、領地に戻る話が出たものの「今更姑は邪魔でしょう」と、一人王都に残る事を選んで、自分もお直しのお店を手掛けるようになったんだそうだ。
先代ベルドヴァ男爵とその妻と言う肩書きを持ちながらも、清貧を尊ぶ為人だったそうで、周囲との衝突もなく、夫人が亡くなった際も、近隣住民皆が悲しんだ――と言う事らしい。
「ちょうど夫人が、亡き先代男爵から受け継いでいらした財産の整理と、ベルドヴァ男爵領への還元手続きが終わったところで、あの邸宅の保護権も同時に解除されましたからね。これも何かの縁と、ご案内したのですよ」
なるほど夫人の死去と共に、土地建物の権利がギルドに戻ってきたところだったと言う事か。
前回はまだ候補の中になかったと言う事は、本当にタイミングが良かったんだろう。
アズレート副ギルド長が口にした〝ツェツィ・オンペル〟は以前のお店の名前で、夫人の名前であるツェツィーリアと、夫人の故郷の言葉で「縫製」を意味する「オンペル」から名付けられていたそうだ。
「何しろ高齢の老婦人と使用人のみの暮らしだったからな。教員採用に携わっていたボードリエ伯爵の依頼で、私やギルド長も時々様子を見に行っては、お茶をご馳走になったものだ」
一応、わざと服のボタンを一つ外したり、見え見えなりの理由はいつも付けて行っていたそうだが、毎回バレバレで、夫人もクスクスと微笑いながらお茶を振る舞ってくれていたんだそうだ。
さすが夫が王都学園の教師にスカウトされるだけあって、夫人本人の知識も豊富で、ギルド長や副ギルド長が〝ロッピア〟関連のトラブルで王宮に上がる時などは、礼儀作法のチェックなんかもしてくれていたとか。
そんな女性なら、私も会ってみたかったと思う。
きっと公爵邸で礼儀作法を教えてくれる皆とは、また違った話が聞けただろうに。
「ボードリエ伯爵やフォルシアン公爵もご存知のご夫婦だったと言う事ですか?」
首を傾げる私に、どうだろうな…と首を傾げたのは、意外にもエドヴァルドだった。
「ボードリエ伯爵は、学園関連で顔を合わせる事くらいはあっただろうが、フォルシアン公爵となると、男爵家との身分の差が大きすぎて、会う機会もなかったかも知れん。恐らくは、傘下の貴族が王都にいる――あたりの認識だったと思うが」
「ええ。私も生前のご夫妻からは、ボードリエ伯爵以外の高位貴族のお名前を耳にする事はありませんでしたね。恐らく、ギルド長もそうでしょう」
アズレート副ギルド長も、そう言って頷いている。
フォルシアン公爵の事は、傘下貴族がベルドヴァ男爵家だとの情報だけ、頭にあれば(今は)良いのかも知れない。
「あ、店舗については、名前をそのまま残すのは難しいかも知れませんけど、間取りに関しては少なくとも、1階部分は今の間取りを維持したいと思ってるんです。玄関先あたり、商会で取り扱う予定の新商品を並べたいので、少し手を加えたいかな…と」
まだ素案ですが…と前置く私に、それでも元の店の雰囲気がそれほど損なわれないと聞いたからか「……そうか」と、アズレート副ギルド長はちょっと嬉しそうだった。
この様子だと、リーリャ・イッターシュギルド長の反応も、もしかしたら似たようなものになりそうな気がした。
「ああ、すまない。話が逸れてしまったな。先に身分証に名前を入れ直してしまおう。マノン女史や革職人のファルダからは何も言われなかったか?まぁ…名前の修正に行くだけで、揉める要素もないと思うが」
「そうですね……そう言えば、揉めはしなかったんですけど、ギルド長さんから、有能な眼鏡職人がいたら紹介して欲しいとは言われましたね」
――身分証を受け取ったアズレート副ギルド長の手が、ピクリと揺れた気がした。
「眼鏡職人……ちなみにだが、心当たりは?」
「リリアート領のガラスの事はご存知だったみたいで、レンズを1枚お貸し下さいましたよ。同じ物ではなく、それ以上が作れるかどうか、職人本人の指標になれば…と。なので近いうち、リリアート領にあるいくつかの工房で聞いてみようかとは思ってるんですけど」
「……っ」
その瞬間、黙ってこちらのやりとりを耳にしながら、視線は手元の紅茶に向いていたヤンネが、喉に紅茶を詰まらせたのか、ゴホゴホと咽ていた。
「ああ……ちょっと今、キヴェカス卿の気持ちが分かったな……何故、身分証の革漉きに行っただけで、マノン女史から仕事を依頼されて帰って来る事になるのか……」
「えっ、でも、他の商会にも声をかけてあるってギルド長さん仰ってましたし、すぐさまユングベリ商会の案件になるとは限りませんよ?確かに、ギルド長さんの納得のいく職人や工房が見つかれば、独占販売権を取るに等しい事になるでしょうから、その後は大変かも知れませんけど」
「だが可能性があると分かれば、少なくとも現在の眼鏡の流通や販権事情については学んでおく必要が出て来る。見つかってからアレコレとギルドに申請の伺いを立てるようでは、他の商会に出し抜かれる可能性だってある訳だからな」
当然ギルドは中立平等の精神でもって、早く完成形の申請をした方を受け付ける――と、アズレート副ギルド長は重々しい声で私とヤンネを見比べている。
「……その時はよろしくお願いしますね?」
――ここは、言ったモノ勝ちだ。
そしてヤンネが何か言いかける前に、バーレント伯爵領内の村人の、職人ギルドへの登録の話も上乗せしておく事にする。
「それとさっきの職人ギルドで、バーレント領の職人が、向こうの領都の職人ギルドにちゃんと所属しているか、あと新しい製品を作るつもりなら、場合によっては王都職人ギルドへの申請が必要かもと言われたので、会社設立の件とまとめて確認お願い出来ますか?」
「……は?」
どうやら要領を得なかったらしいヤンネに、フォローを入れてくれたのはアズレート副ギルド長だった。
「ああ、確かに既存の製品を王都に流通させたいだけなら領都職人ギルドへの所属確認だけで済むが、特許権絡みの何かを作るとなると、所属ギルドは王都職人ギルドとなると言われたか。特許権問題は地方で扱って良い案件じゃないとされているからな」
とは言えあくまで手工業に限っての話であって、料理レシピに関しては商業ギルド生産部門管轄となるため、職人ギルドへの報告は必須ではないらしい。
「さっきまでキヴェカス卿には、領都職人ギルドへの所属確認の話はしていたが、王都の話はまだこれからと言うところだった。さすがに驚きの方が上をいったんだろう」
苦笑交じりにそう言いながらも、手は焼きごてを持って、一文字ごとに入れ替えるように動かしている。
「いやはや。私もこれまで多くの商会や店舗の設立、廃業と見てきてはいるが、登録前からここまで案件を抱えているのは初めてかも知れんな。アンジェスにギーレンか……そのうち、バリエンダールやサレステーデ、ベルィフまで加わってきても、もはや驚くまいよ」
「………あはは」
アズレート副ギルド長は、ちょっとした冗談のつもりだったかも知れないけど、思わず私が乾いた声を返して、エドヴァルドがこめかみを痙攣らせているのを見たからか、ヤンネの唇が微かに「…まさか」と動いているのが見えた。
ベルィフだけは、まだ何の伝手もないけど――と言おうにも、私がテオドル大公殿下とバリエンダールに行くのは、まだ表沙汰になっていない話であるため、私もエドヴァルドも、それ以上の反応がとれなかったのだ
「…ヤンネ、午後から高等法院に立ち寄れるか」
代わりにエドヴァルドが、今は言えないと言う意味もこめてそれを告げる。
「助手の話を進められるようにしておく」
私ではなくエドヴァルドの言葉となれば、事実上拒否権は存在しない。
夕方になると思いますが――と返すのが精一杯な様に見えた。
(多分そこで、テオドル大公絡みの話を聞いて膝から崩れ落ちそうだなぁ……)
うん、イデオン公爵領の為、死ぬ気で働いて貰おう。
意趣返し?――気のせいです!
「さて」
エドヴァルドとヤンネとの間の微妙な空気は敢えて見て見ぬフリで、アズレート副ギルド長は身分証を私の方へと戻して来た。
「実店舗登録申請書類と、現物としての銀は、先ほどキヴェカス卿経由で受け取らせて貰った。物件契約に関しては書類がまた別になる。仮契約書面をまず渡して、代金や内装外観工事の条件やなんかを持ち帰って最終検討してきて貰うのが一般的な流れだ。ユングベリ商会も、その形で良いか?」
「あっ、はい!その辺りはギルドの規則を遵守するつもりです」
「まあ規則と言うよりは、一番、後からの揉め事が少ない『慣習』と言った方が良いかも知れないがな」
そう言って、アズレート副ギルド長はニヤリと口元を歪めた。
「それでもこれで〝ユングベリ商会〟は実店舗のある独立した商会となり、同時に王都商業ギルドの本会員となった。――おめでとう、商会長〝レイナ・ユングベリ〟殿?」
再発行された身分証には、未だ見慣れないアンジェス国の文字で〝レイナ・ユングベリ〟――と、新たな名前が書き込まれていた。
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書籍刊行記念 書き下ろし番外編小説「森のピクニック」は下記ページ バックナンバー2022年6月欄に掲載中!
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