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第一部
183 続・その鳥に手紙は運べるのか
※1日複数話更新です。お気を付け下さい。
「一般開放されていない区画の畑と花壇だけでもこんなにあるんですねー……」
これから机を並べる研究員の紹介を一通り受けた後は、とりあえずこの植物園で育てられている、実験用の畑や花壇を、キスト室長に頼んで見せて貰う事にした。
知っている野菜の名前とまるで一致しないのは〝スヴァレーフ〟で学習済みだ。
もうこれは、実物をこの目で見た方が早いだろう。
「それで、調理もしてみたいと?」
「その遠い異国の方が持っていた葉物野菜や香草などは、全てここにあるものと名前が違うんです。どう見てもそっくりな物は多々あるので、あとは味をみて確かめるしかないなと。その共通性が分かれば、私以外の方が他の植物で実験も出来ますよね?」
「確かに……」
「とりあえず、収穫可能な範囲を教えて下さいますか?その後で食堂の厨房を使わせて頂けたら有難いです。室長もお忙しいでしょうから、厨房のどなたかに話だけを通しておいて頂ければ、後は試食して、該当する植物があれば、それだけを研究室に持ち帰るようにしますので」
「あ、ああ」
私がそう言うと、キスト室長は一瞬不思議そうな表情を見せたものの、そのあとすぐに「ああ!」と、一人で得心したみたいに頷いた。
「ユングベリ嬢は、恋人かあるいは婚約者がいるのか」
「え?」
キョトンとなった私に、キスト室長は自分の首元をトントンと叩いた。
どうやら真面目に学ぶ気があると、さっきの騒動で知れたからか、口調から丁寧さが取れ、上役としてのそれに変わった。
「私はそれほど宝石に詳しくないが、それが安い石ではないと言う事くらいは分かる。ソレ、贈り物だろう?自分で言うのも何だが、私のこの顔は女性受けしやすいようだから、貴女がまるで私に興味を持っていない風な事を考えても、既に慕っている誰かがいるのだろう、と」
「‼︎」
私は思わず自分の胸元を飾るネックレスに手をあてていた。
そうか。通常のタイプよりチェーンが短いと言っていたから、何を着ても見えるんだ。
「こ…れは、常に身に付けていないと怒られると言うか…会えない間は付けなくても良いだろうと言われると、そうでもなく……きっとどこからか、そう言う横着はバレて後で倍怒られると言うか……いや、そんな事は良いんです!室長、世の女性のほとんどが自分を振り返るとか、そもそもだいぶ自意識過剰ですよ⁉︎」
私はビシリと室長を指差して言ったつもりが、何故かキスト室長はいつまでも笑っていた。
「分…かった、分かった。貴女が私を籠絡しに来た訳でも、研究資料を盗みに来た訳でもないと分かれば、こちらはそれで良いし、皆の態度とて、もう少し柔らかくはなるだろう。何しろ、ここには前例が多すぎるんだ。一応、私にも相応の言い分はあるつもりだ」
「……はあ」
幾分、情熱の薄い答えになっていたとは思う。
金髪碧眼の美形を、ちょっとやそっとで信用しようとは、私も思ってはいない。
多分、きっと、信用しきれていないのはお互い様だ。
「では私は、少し通常業務を片付けてこよう。厨房には話を通しておく。貴女なりのキリが付いたら、声をかけに来てくれ。定時を過ぎるようなら、それもその時点で声をかけるように。さすがにいきなり残業させるつもりはないから」
そう言うと、キスト室長はまだ笑いを残したまま立ち去って行き、私は一人、花壇と畑の境の小道に取り残された。
もちろん、目に届く範囲内で他の作業をしている人たちもいる為、厳密には一人と言えないのかも知れないが。
「チチチッ!」
「⁉︎」
その時、頭の上に小さな可愛らしい鳴き声と共に、何かがぽすっと落ちた感覚があった。
「えっ、あっ、リファちゃん⁉︎」
頭の上からそっと下ろせば――そこには相変わらずの、悶絶級の可愛さを誇るシマエナガ…じゃなく、ヘリファルテ種の〝リファ〟が、掌に転がった。
どこから飛んで来たのかと辺りを見渡せば、花壇の奥に広がる人工林の木の影から、トーカレヴァが小さく手招きをしていた。
私は、植物を探すフリをしながら、ゆっくりとトーカレヴァの方へ歩を進めて、木を挟んで背中越しの体勢になりつつ、さも植物を眺めているかの様に、屈み込んだ。
「イデオン宰相を乗せた馬車が王都を出たようですよ。事前の情報の通り、ナリスヴァーラ城に向かったのだと」
トーカレヴァは公爵邸ではなく、アンジェス王宮、すなわち今現在フィルバートの下にいるため、彼はエドヴァルドを「お館様」とは言わない。
「……そう。だけど、わざわざそれだけを言いに?」
それなら、仕事終わりに植物園を出た後でも良い筈だ。
イザクやシーグも合流している筈で、むしろ説明は一度で済むだろうに。
そんな私の内心を知ってか知らずか、トーカレヴァはゆっくりと首を横に振った。
「どうやらギーレン王宮派遣の使用人達の中に、我々のような裏方の人間もいるらしく、連絡が取りづらそうだと、様子を見に行ったハジェスがファルコに報告をしたみたいですね」
「―――」
じゃあどうするのかと、言葉に出さないまでも眉を顰めた私に、トーカレヴァは私の掌で転がるヘリファルテを指さした。
「初手として、コイツを飛ばして繋ぎさえ取れれば、あとは〝鷹の眼〟同士何とでも出来ると、ファルコが」
伝書鳩もどきと違い、まさかヘリファルテが手紙を運ぶなどと誰も思わないため、こう言う時には頼もしすぎる連絡手段になると聞いてはいたが、まさに今が、その時と言う事か。
「ねぇでも、この子に『エドヴァルド様に手紙を届けて』なんてお願いしても、理解は難しそうじゃない?今って、私とレヴとの間くらいしか往復していないでしょ」
レヴと呼ばないと、ヘリファルテは貸さないと言われて以降、私は潔く白旗を上げている。
あの愛らしさの前に、意地を張っても仕方がないと、近頃周りも諦めぎみだ。
「そうですね。どなたかが、なかなか手放して下さらないので」
ただ、トーカレヴァの厭味はキッチリ無視している。
「これまで詳しく説明をする機会もなかったですが、元々ヘリファルテは、この魔道具に取り込まれた魔力の持ち主を目がけて飛ぶように仕込まれていまして」
そう言うと、トーカレヴァは懐から小さなゴルフボールサイズの球体を取り出した。
「えっと、それはリファちゃん限定?それともヘリファルテ種全般の話?って言うか、私、魔力ないけど」
「どうでしょう。これは管理部の友人が以前に実験的にくれた魔道具で、持っているのはまだ私だけなものですし……恐らく他のヘリファルテでも、私が仕込めば同じように手紙を運ぶようになるとは思いますが。ちなみにレイナ様の場合は、初回はイザク目がけて飛ばせたんですよ。まぁあの地下牢で、拷問とは言いませんがイロイロとやってくれたものですから、彼の魔力を仕込む事は割と容易かった」
「…そ、そう……」
「二回目からは、貴女があまりに可愛がって下さるものだから、単にコイツが懐いたんですよ。一応、魔力を仕込まずにコイツを放てば私のところに戻る仕様の筈なんですが、私が魔力を仕込まずに放てば、貴女めがけて飛ぶように、最近ではなってしまった」
「あ…だから私が飛ばせばレヴの所に戻るし、レヴが魔力を仕込まずに飛ばせば、私の所に飛んでくるようになったんだ……」
手元に視線を落とせば、正解だとでも言う風に、リファがピッ!と短く鳴く。
――いつ見ても、やっぱりカワイイ。
「まあそれで話を戻しますが、レイナ様が身につけておられるそのネックレス、それをちょっと使わせて頂きたいんですよ」
「え、コレ?」
今日はよくネックレスに注目が集まる日だと、私は胸元の青い石を撫でた。
「ファルコが言うには、イデオン宰相からの贈り物だそうですね、それ。しかも迂闊に値が付けられない程の希少石だとか」
「思い出させないで……気にしたら、怖くて付けられなくなるから……」
思わず地面に「の」の字を書きそうになった私の気持ちなんて、きっと分かるまい。
庶民がちょっとやそっとバイトして稼げるような金額でない事くらいは、私もヘルマンさんから聞いている。
「何もずっと貸せと言っている訳ではないんですよ。一瞬掌に乗せて、そこにある魔力をこちらの装置に移させて欲しいだけですから」
トーカレヴァの言った事がとっさによく分からなかった私は、顔をあげた。
「魔力を……移す?」
「自分の髪や瞳の色を宿した宝石を贈る事自体、生半可な思いでする事ではありませんからね。ましてそれほどの宝石となれば、イデオン宰相の魔力の残滓が相当に残されているだろうと、そう言う話になりまして」
「!」
揶揄われているのか、そうでないのか。
反応に困る私は、パクパクと口を開けるしかない。
「ですから、上手くいけばそのネックレスにある魔力を使って、ヘリファルテをイデオン宰相の所まで遣れるのではないかと。そう言う話になったので、こちらまで参上した次第です。ファルコはかなりイヤそうでしたが、その仕込みが出来るのは私だけですからね。それで私が魔力を仕込んでいる間、イデオン宰相様に一筆書いて下さいますか。道具は持参してきましたから」
「一筆って……」
「書ける文章量には限りがありますから、とりあえずは今ギーレンのベクレル伯爵邸にいる事と、この後は〝鷹の眼〟たちがどこかで接触すると言う事と、それだけで宜しいんじゃないですか。後はまた、おいおいやり取りをなさっていかれたら」
本来なら、ヘリファルテ(シマエナガもどき)の足に巻き付けられる手紙自体、書けるのは十数文字が限界だ。
そこは、特殊な用紙を使って、魔道具で小さくして、足に付いた円筒に入れ込むのだけれど、だけどそれでも、文庫本サイズの用紙一枚分なので、書ける事は限られる。
もう、魔法の世界は私の理解の外側の話なので、ここは言われた通りにの内容を手紙にしたためて、トーカレヴァに預けた。
――うん、リファちゃん頑張れ!
「一般開放されていない区画の畑と花壇だけでもこんなにあるんですねー……」
これから机を並べる研究員の紹介を一通り受けた後は、とりあえずこの植物園で育てられている、実験用の畑や花壇を、キスト室長に頼んで見せて貰う事にした。
知っている野菜の名前とまるで一致しないのは〝スヴァレーフ〟で学習済みだ。
もうこれは、実物をこの目で見た方が早いだろう。
「それで、調理もしてみたいと?」
「その遠い異国の方が持っていた葉物野菜や香草などは、全てここにあるものと名前が違うんです。どう見てもそっくりな物は多々あるので、あとは味をみて確かめるしかないなと。その共通性が分かれば、私以外の方が他の植物で実験も出来ますよね?」
「確かに……」
「とりあえず、収穫可能な範囲を教えて下さいますか?その後で食堂の厨房を使わせて頂けたら有難いです。室長もお忙しいでしょうから、厨房のどなたかに話だけを通しておいて頂ければ、後は試食して、該当する植物があれば、それだけを研究室に持ち帰るようにしますので」
「あ、ああ」
私がそう言うと、キスト室長は一瞬不思議そうな表情を見せたものの、そのあとすぐに「ああ!」と、一人で得心したみたいに頷いた。
「ユングベリ嬢は、恋人かあるいは婚約者がいるのか」
「え?」
キョトンとなった私に、キスト室長は自分の首元をトントンと叩いた。
どうやら真面目に学ぶ気があると、さっきの騒動で知れたからか、口調から丁寧さが取れ、上役としてのそれに変わった。
「私はそれほど宝石に詳しくないが、それが安い石ではないと言う事くらいは分かる。ソレ、贈り物だろう?自分で言うのも何だが、私のこの顔は女性受けしやすいようだから、貴女がまるで私に興味を持っていない風な事を考えても、既に慕っている誰かがいるのだろう、と」
「‼︎」
私は思わず自分の胸元を飾るネックレスに手をあてていた。
そうか。通常のタイプよりチェーンが短いと言っていたから、何を着ても見えるんだ。
「こ…れは、常に身に付けていないと怒られると言うか…会えない間は付けなくても良いだろうと言われると、そうでもなく……きっとどこからか、そう言う横着はバレて後で倍怒られると言うか……いや、そんな事は良いんです!室長、世の女性のほとんどが自分を振り返るとか、そもそもだいぶ自意識過剰ですよ⁉︎」
私はビシリと室長を指差して言ったつもりが、何故かキスト室長はいつまでも笑っていた。
「分…かった、分かった。貴女が私を籠絡しに来た訳でも、研究資料を盗みに来た訳でもないと分かれば、こちらはそれで良いし、皆の態度とて、もう少し柔らかくはなるだろう。何しろ、ここには前例が多すぎるんだ。一応、私にも相応の言い分はあるつもりだ」
「……はあ」
幾分、情熱の薄い答えになっていたとは思う。
金髪碧眼の美形を、ちょっとやそっとで信用しようとは、私も思ってはいない。
多分、きっと、信用しきれていないのはお互い様だ。
「では私は、少し通常業務を片付けてこよう。厨房には話を通しておく。貴女なりのキリが付いたら、声をかけに来てくれ。定時を過ぎるようなら、それもその時点で声をかけるように。さすがにいきなり残業させるつもりはないから」
そう言うと、キスト室長はまだ笑いを残したまま立ち去って行き、私は一人、花壇と畑の境の小道に取り残された。
もちろん、目に届く範囲内で他の作業をしている人たちもいる為、厳密には一人と言えないのかも知れないが。
「チチチッ!」
「⁉︎」
その時、頭の上に小さな可愛らしい鳴き声と共に、何かがぽすっと落ちた感覚があった。
「えっ、あっ、リファちゃん⁉︎」
頭の上からそっと下ろせば――そこには相変わらずの、悶絶級の可愛さを誇るシマエナガ…じゃなく、ヘリファルテ種の〝リファ〟が、掌に転がった。
どこから飛んで来たのかと辺りを見渡せば、花壇の奥に広がる人工林の木の影から、トーカレヴァが小さく手招きをしていた。
私は、植物を探すフリをしながら、ゆっくりとトーカレヴァの方へ歩を進めて、木を挟んで背中越しの体勢になりつつ、さも植物を眺めているかの様に、屈み込んだ。
「イデオン宰相を乗せた馬車が王都を出たようですよ。事前の情報の通り、ナリスヴァーラ城に向かったのだと」
トーカレヴァは公爵邸ではなく、アンジェス王宮、すなわち今現在フィルバートの下にいるため、彼はエドヴァルドを「お館様」とは言わない。
「……そう。だけど、わざわざそれだけを言いに?」
それなら、仕事終わりに植物園を出た後でも良い筈だ。
イザクやシーグも合流している筈で、むしろ説明は一度で済むだろうに。
そんな私の内心を知ってか知らずか、トーカレヴァはゆっくりと首を横に振った。
「どうやらギーレン王宮派遣の使用人達の中に、我々のような裏方の人間もいるらしく、連絡が取りづらそうだと、様子を見に行ったハジェスがファルコに報告をしたみたいですね」
「―――」
じゃあどうするのかと、言葉に出さないまでも眉を顰めた私に、トーカレヴァは私の掌で転がるヘリファルテを指さした。
「初手として、コイツを飛ばして繋ぎさえ取れれば、あとは〝鷹の眼〟同士何とでも出来ると、ファルコが」
伝書鳩もどきと違い、まさかヘリファルテが手紙を運ぶなどと誰も思わないため、こう言う時には頼もしすぎる連絡手段になると聞いてはいたが、まさに今が、その時と言う事か。
「ねぇでも、この子に『エドヴァルド様に手紙を届けて』なんてお願いしても、理解は難しそうじゃない?今って、私とレヴとの間くらいしか往復していないでしょ」
レヴと呼ばないと、ヘリファルテは貸さないと言われて以降、私は潔く白旗を上げている。
あの愛らしさの前に、意地を張っても仕方がないと、近頃周りも諦めぎみだ。
「そうですね。どなたかが、なかなか手放して下さらないので」
ただ、トーカレヴァの厭味はキッチリ無視している。
「これまで詳しく説明をする機会もなかったですが、元々ヘリファルテは、この魔道具に取り込まれた魔力の持ち主を目がけて飛ぶように仕込まれていまして」
そう言うと、トーカレヴァは懐から小さなゴルフボールサイズの球体を取り出した。
「えっと、それはリファちゃん限定?それともヘリファルテ種全般の話?って言うか、私、魔力ないけど」
「どうでしょう。これは管理部の友人が以前に実験的にくれた魔道具で、持っているのはまだ私だけなものですし……恐らく他のヘリファルテでも、私が仕込めば同じように手紙を運ぶようになるとは思いますが。ちなみにレイナ様の場合は、初回はイザク目がけて飛ばせたんですよ。まぁあの地下牢で、拷問とは言いませんがイロイロとやってくれたものですから、彼の魔力を仕込む事は割と容易かった」
「…そ、そう……」
「二回目からは、貴女があまりに可愛がって下さるものだから、単にコイツが懐いたんですよ。一応、魔力を仕込まずにコイツを放てば私のところに戻る仕様の筈なんですが、私が魔力を仕込まずに放てば、貴女めがけて飛ぶように、最近ではなってしまった」
「あ…だから私が飛ばせばレヴの所に戻るし、レヴが魔力を仕込まずに飛ばせば、私の所に飛んでくるようになったんだ……」
手元に視線を落とせば、正解だとでも言う風に、リファがピッ!と短く鳴く。
――いつ見ても、やっぱりカワイイ。
「まあそれで話を戻しますが、レイナ様が身につけておられるそのネックレス、それをちょっと使わせて頂きたいんですよ」
「え、コレ?」
今日はよくネックレスに注目が集まる日だと、私は胸元の青い石を撫でた。
「ファルコが言うには、イデオン宰相からの贈り物だそうですね、それ。しかも迂闊に値が付けられない程の希少石だとか」
「思い出させないで……気にしたら、怖くて付けられなくなるから……」
思わず地面に「の」の字を書きそうになった私の気持ちなんて、きっと分かるまい。
庶民がちょっとやそっとバイトして稼げるような金額でない事くらいは、私もヘルマンさんから聞いている。
「何もずっと貸せと言っている訳ではないんですよ。一瞬掌に乗せて、そこにある魔力をこちらの装置に移させて欲しいだけですから」
トーカレヴァの言った事がとっさによく分からなかった私は、顔をあげた。
「魔力を……移す?」
「自分の髪や瞳の色を宿した宝石を贈る事自体、生半可な思いでする事ではありませんからね。ましてそれほどの宝石となれば、イデオン宰相の魔力の残滓が相当に残されているだろうと、そう言う話になりまして」
「!」
揶揄われているのか、そうでないのか。
反応に困る私は、パクパクと口を開けるしかない。
「ですから、上手くいけばそのネックレスにある魔力を使って、ヘリファルテをイデオン宰相の所まで遣れるのではないかと。そう言う話になったので、こちらまで参上した次第です。ファルコはかなりイヤそうでしたが、その仕込みが出来るのは私だけですからね。それで私が魔力を仕込んでいる間、イデオン宰相様に一筆書いて下さいますか。道具は持参してきましたから」
「一筆って……」
「書ける文章量には限りがありますから、とりあえずは今ギーレンのベクレル伯爵邸にいる事と、この後は〝鷹の眼〟たちがどこかで接触すると言う事と、それだけで宜しいんじゃないですか。後はまた、おいおいやり取りをなさっていかれたら」
本来なら、ヘリファルテ(シマエナガもどき)の足に巻き付けられる手紙自体、書けるのは十数文字が限界だ。
そこは、特殊な用紙を使って、魔道具で小さくして、足に付いた円筒に入れ込むのだけれど、だけどそれでも、文庫本サイズの用紙一枚分なので、書ける事は限られる。
もう、魔法の世界は私の理解の外側の話なので、ここは言われた通りにの内容を手紙にしたためて、トーカレヴァに預けた。
――うん、リファちゃん頑張れ!
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