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第一部
170 先行投資だそうです
※1日複数話更新です。お気を付け下さい。
「ボードリエ伯爵?王都学園理事長かい!こりゃあまた、意外なところからの保証人署名を貰って来たモノだねぇ!」
アズレート副ギルド長から書類を受け取ったリーリャギルド長は、面白そうに口元を歪めた。
「まぁ、宰相サンは反対するだろうと思っていたから、申請するかどうかは半々のつもりでいたんだけどね」
何故分かったのか、と言った表情になった私を、チラリと見やる。
「一般的な貴族なら、各家が持つ懐中時計で身分証明としては事足りるからね。あの時はアンタがまだ〝聖女の姉〟すなわち平民としての身分しか持たないと、自ら口にしたから、ギルド発行の身分証の話を提案したのさ。だけどその時宰相サンがちょっと顔色を変えていたから、ああこれは、アンタを公爵邸から出すつもりはない、速攻で懐中時計を作らせるだろうなと思ったんだよ」
まぁ気に入られたモンだね、と揶揄うように言われては、こちらとしても反論のしようがない。
実際に、仮とは言え懐中時計を手渡されたのも事実だ。
「どうやって宰相サン説き伏せたんだい。よく一人でここに来るのを許可したね」
「閣下はそこまで過保護な方じゃないですよ……」
私がそう言って笑ったら、物凄くヘンな表情をされたのは、何故だろう。
「アンタ大物だねぇ。閣下と呼んだだけで不機嫌になってたってのに。アレを無視出来るとか、相当だよ」
「え⁉」
「ああ、まあ、話が進まないから良いよ。その様子じゃ、宰相サンの預かり知らないところでアレコレ動いているんだね。まあウチは、とばっちりさえ来なきゃ何でも良いけどね」
話をしている間にも、アズレート副ギルド長の方が、カードサイズの、赤茶けた皮の様な何かをリーリャギルド長の机の上に置いた。
一緒に机に置かれたランプの灯に、引き出しから取り出した「何か」をかざして――恐らくは焼きごての要領で、そこに次々に印付けている。
「アンタの国じゃ見ないかい?これは、子牛の皮を鞣して染めてあるんだ。名前もこうやって印付けば、おいそれと他人の名前を書き加える事も破り捨てる事もしづらいだろう?皮の色に関しては、ギルドごとに微妙に変えてあってね。つまりはこれが、王都商業ギルド発行と言う証にもなるのさ」
「そうなんですね……」
「自前の店を持ったり、行商で販売をするようになれば、裏に紋様を増やすのさ。ギルドへの登録料なんかもその時に店の規模に応じて貰う事になる。今はただの登録だから、身元保証人が登録料代わりみたいなモンだね。この状態で犯罪なんかをやらかせば、保証人に慰謝料を請求する形になる」
実に良く出来たシステムだと思うし、ギルド長の説明も分かりやすい。
保証人に迷惑をかけるなと、暗に言われているのは分かったけど、至極納得のいく話だったので、私は理解をしたと言う様に頷いた。
「分かりました。ボードリエ伯爵に迷惑をかけるつもりは全くありませんが、頭の片隅に留め置くようにします」
「まあそうだね。どんな無茶をするつもりかは知らないが、それが頭の片隅にあるとないとじゃ、いざと言う時の動き方に差が出るからね」
ニヤリ、と言う表現が似合うギルド長の笑い方に、私も苦笑するしかない。
これは、無茶をするつもりがあると悟られていると言う事だろう。
それはそうかも知れない。
国から出るつもりがなければ、懐中時計を持ちながら身分証も並行して作るなんて事は、普通はしない。
「店のメドはまだ付いていないのかい?一応、この前の物件はまだあるし、あれから増えた分を見たければ、持ってこさせるよ」
「有難うございます。今まだ、宰相閣下の公務が終わっていないので、そちら側は動けないんです。キヴェカス卿が特許権の取得申請に来る方が先だと思います。既に動ける商品がいくつかありますから」
リーリャギルド長も、分かっていてそれ以上は聞かないでくれたので、逸らしてくれた話の矛先に、私も乗っかる事にした。
アズレート副ギルド長やスリアンさんが、そんな彼女の私のやりとりを、驚いた様に見つめている。
…私は、この時は「キヴェカス」の名と特許権の話に反応したのだと思っていたんだけど。
「おや、一つじゃないんだね」
「そうですね。少なくとも三点は。あとはまだ開発途中なので、おいおい――って感じでしょうか」
バーレント領の木綿紙、オルセン領デ・ベール村のフルーツワイン、ケスキサーリ領の卵を使う事にしたオムレツ。
名称さえ決めてしまえば、この三つはもう動き出せるのだ。
シーベリーの染め物は結果待ちだし、エッカランタ産スヴァレーフのポテトチップスは、料理人とレシピ保護の詳細を詰める必要がある。ハルヴァラ白磁器の新シリーズは、まだまだこれからだ。
フルーツワインだって、他の村からもいずれレシピは出て来るだろうし、フォルシアン公爵家と共同開発予定のチョコレート製品の話もある。
ネタばらしは出来ないので、とりあえず天井を見上げて指折り数を数えていると、ギルド長も含めたその場の全員が、ちょっと唖然としていた。
「まあ特許権申請自体、取扱量は少なくないから、おかしな事じゃないと言えば、おかしな事じゃないんだがね……」
「そもそもギルド長と会話が成立している事からして驚きですが、この年齢のお嬢さんが取扱う量としても、異例でしょうな」
「いえいえ待って下さい、ギルド長、副ギルド長!今彼女『キヴェカス卿が申請する』って言いましたよ⁉」
スリアンの悲鳴に、二人の愕然とした視線がこちらに向く。
私は慌てて両手を振った。
「いえ確かに、申請に関してはキヴェカス卿に教師役を拒否されたんで――まぁ今頃後悔しているかは知りませんけど――ぜんっぶ丸投げしたんですけど、だからこそ、副ギルド長を出せとか、そう言う事を言ってるヒマがなくなる筈なんです。行った時に、窓口にいる人と話を済ませてしまわないと、どんどんと仕事が後回しになって、何日も徹夜して働く羽目になるか、締切破りをして自分の評判が落ちるかになるって、多分すぐに気が付くでしょうから」
ここでは言わないが、バーレント伯爵主導の会社設立案件もある上に、オルセン侯爵夫人が自分の離婚裁判案件までねじ込んだから、尚更だ。
「…商法書ぶん投げて、説教しただけじゃ足りなかったのかい」
「イヤですね、リーリャさん。お説教は途中だったって、この前言ったじゃないですか。なので、ささやかな復讐ですよ。これで態度が改善されなかったら、この場をお借りして、お説教の続きをさせて頂けるんですよね?」
「―――」
扇はないけど、うふふと笑ってみれば、一瞬の間を置いて、アズレート副ギルド長は明後日の方向に顔をそむけ、リーリャギルド長は正直に声をあげて爆笑した。
スリアンさんは…あ、魂がどこかに飛んでます?
「ああ、そうだった、悪い悪い!そうかい、窓口でごねるなら、ごねていられなくなるくらいに忙しくしてやれと思ったワケか!まああのお坊ちゃん、仕事は出来るから、確かにその策は使えるね!いやはやホントに、宰相サンが骨抜きになるだけのコトはあるよ!何ならウチで、誰か特許権申請のイロハを代わりに教えてやっても良いかと思ったんだが、じゃあまあ、もうしばらくは様子見にするかい?」
「あ、教えて頂けるんでしたら、その方が有難いですね……先々どこで役に立つか分かりませんし……ただでもそこは、閣下の公務がひと段落ついた頃に相談の上とさせて下さい。私もちょっと今、色々と抱えてまして……」
エドヴァルドがアンジェス国を離れていると言うのは、どこまでオープンにして良い情報なのかが分からない。
なのでちょっとぼかした言い方になったけれど、リーリャギルド長は特に追及をしてこなかった。
「構わないよ。店舗の話が具体的に動き出して、時間がとれるようになったら、また声をかけてくれれば良いさ。じゃあまあ、ほら、カードは渡しておくよ。現時点で何か質問はあるかい?」
「そうですね…ボードリエ伯爵様から、規模の大きなギルドには、手紙専用の転移装置があると伺ったのですが、その利用方法を伺っても宜しいですか?」
「そうか、伯爵は学園理事長だから、教え子にギルド職員がいたりもするから知っているのか。そうだね、実物は帰りにスリアンとでも見れば良い。とりあえずざっくりと説明しておくと、専用の窓口で身分証を見せて、保護用の皮袋を買うんだ。それからそこに手紙を入れて、再度窓口に預けるのさ。皮袋の綴じ紐には、宛先を書いた木簡を括り付けてね。身分証の代わりに、相手から届いた手紙を皮袋ごと見せる場合もあるね。店舗から、個人の家なんかに配送をした場合の返信には、往々にしてそのやり方が使われる。要は差出人と受取人、どちらかが最低、ギルド発行の身分証を持っているって言うのが利用の条件なんだよ」
「それは、どこの商業ギルドでもですか?」
「ああ。どこの国でも同じ方式さ」
「分かりました。それが分かれば充分です。有難うございます」
軽く頭を下げた私を、リーリャギルド長はしばらく物言いたげに見ていた。
「あの……?」
「ついでだから、聞いておこうかね。――推薦状、いるかい?アタシの名前だから、どこでもそれなりに役に立つと思うけどね」
「!」
私は、そんな彼女の視線を真正面から受け止めた。
私が秘密裡に、アンジェス国以外のどこかに行こうとしている事を、彼女は察しているに違いない。
「もしかしたら、使わずに済むかも知れませんが……保険として頂けるなら、大変有難い話だと思います。ちなみに高くつきますか?」
「正直だねぇ。そうだね、それで得た物がもしあれば、全てウチのギルドに還元して貰うってコトくらいかね。先行投資として受け取ってくれて構わないよ」
なるほど確かに、商売には先行投資も重要だ。
ギーレン国で使いどころがあるかどうかは見通せないけれど、私は有難くそれを書いて貰う事にした。
「ボードリエ伯爵?王都学園理事長かい!こりゃあまた、意外なところからの保証人署名を貰って来たモノだねぇ!」
アズレート副ギルド長から書類を受け取ったリーリャギルド長は、面白そうに口元を歪めた。
「まぁ、宰相サンは反対するだろうと思っていたから、申請するかどうかは半々のつもりでいたんだけどね」
何故分かったのか、と言った表情になった私を、チラリと見やる。
「一般的な貴族なら、各家が持つ懐中時計で身分証明としては事足りるからね。あの時はアンタがまだ〝聖女の姉〟すなわち平民としての身分しか持たないと、自ら口にしたから、ギルド発行の身分証の話を提案したのさ。だけどその時宰相サンがちょっと顔色を変えていたから、ああこれは、アンタを公爵邸から出すつもりはない、速攻で懐中時計を作らせるだろうなと思ったんだよ」
まぁ気に入られたモンだね、と揶揄うように言われては、こちらとしても反論のしようがない。
実際に、仮とは言え懐中時計を手渡されたのも事実だ。
「どうやって宰相サン説き伏せたんだい。よく一人でここに来るのを許可したね」
「閣下はそこまで過保護な方じゃないですよ……」
私がそう言って笑ったら、物凄くヘンな表情をされたのは、何故だろう。
「アンタ大物だねぇ。閣下と呼んだだけで不機嫌になってたってのに。アレを無視出来るとか、相当だよ」
「え⁉」
「ああ、まあ、話が進まないから良いよ。その様子じゃ、宰相サンの預かり知らないところでアレコレ動いているんだね。まあウチは、とばっちりさえ来なきゃ何でも良いけどね」
話をしている間にも、アズレート副ギルド長の方が、カードサイズの、赤茶けた皮の様な何かをリーリャギルド長の机の上に置いた。
一緒に机に置かれたランプの灯に、引き出しから取り出した「何か」をかざして――恐らくは焼きごての要領で、そこに次々に印付けている。
「アンタの国じゃ見ないかい?これは、子牛の皮を鞣して染めてあるんだ。名前もこうやって印付けば、おいそれと他人の名前を書き加える事も破り捨てる事もしづらいだろう?皮の色に関しては、ギルドごとに微妙に変えてあってね。つまりはこれが、王都商業ギルド発行と言う証にもなるのさ」
「そうなんですね……」
「自前の店を持ったり、行商で販売をするようになれば、裏に紋様を増やすのさ。ギルドへの登録料なんかもその時に店の規模に応じて貰う事になる。今はただの登録だから、身元保証人が登録料代わりみたいなモンだね。この状態で犯罪なんかをやらかせば、保証人に慰謝料を請求する形になる」
実に良く出来たシステムだと思うし、ギルド長の説明も分かりやすい。
保証人に迷惑をかけるなと、暗に言われているのは分かったけど、至極納得のいく話だったので、私は理解をしたと言う様に頷いた。
「分かりました。ボードリエ伯爵に迷惑をかけるつもりは全くありませんが、頭の片隅に留め置くようにします」
「まあそうだね。どんな無茶をするつもりかは知らないが、それが頭の片隅にあるとないとじゃ、いざと言う時の動き方に差が出るからね」
ニヤリ、と言う表現が似合うギルド長の笑い方に、私も苦笑するしかない。
これは、無茶をするつもりがあると悟られていると言う事だろう。
それはそうかも知れない。
国から出るつもりがなければ、懐中時計を持ちながら身分証も並行して作るなんて事は、普通はしない。
「店のメドはまだ付いていないのかい?一応、この前の物件はまだあるし、あれから増えた分を見たければ、持ってこさせるよ」
「有難うございます。今まだ、宰相閣下の公務が終わっていないので、そちら側は動けないんです。キヴェカス卿が特許権の取得申請に来る方が先だと思います。既に動ける商品がいくつかありますから」
リーリャギルド長も、分かっていてそれ以上は聞かないでくれたので、逸らしてくれた話の矛先に、私も乗っかる事にした。
アズレート副ギルド長やスリアンさんが、そんな彼女の私のやりとりを、驚いた様に見つめている。
…私は、この時は「キヴェカス」の名と特許権の話に反応したのだと思っていたんだけど。
「おや、一つじゃないんだね」
「そうですね。少なくとも三点は。あとはまだ開発途中なので、おいおい――って感じでしょうか」
バーレント領の木綿紙、オルセン領デ・ベール村のフルーツワイン、ケスキサーリ領の卵を使う事にしたオムレツ。
名称さえ決めてしまえば、この三つはもう動き出せるのだ。
シーベリーの染め物は結果待ちだし、エッカランタ産スヴァレーフのポテトチップスは、料理人とレシピ保護の詳細を詰める必要がある。ハルヴァラ白磁器の新シリーズは、まだまだこれからだ。
フルーツワインだって、他の村からもいずれレシピは出て来るだろうし、フォルシアン公爵家と共同開発予定のチョコレート製品の話もある。
ネタばらしは出来ないので、とりあえず天井を見上げて指折り数を数えていると、ギルド長も含めたその場の全員が、ちょっと唖然としていた。
「まあ特許権申請自体、取扱量は少なくないから、おかしな事じゃないと言えば、おかしな事じゃないんだがね……」
「そもそもギルド長と会話が成立している事からして驚きですが、この年齢のお嬢さんが取扱う量としても、異例でしょうな」
「いえいえ待って下さい、ギルド長、副ギルド長!今彼女『キヴェカス卿が申請する』って言いましたよ⁉」
スリアンの悲鳴に、二人の愕然とした視線がこちらに向く。
私は慌てて両手を振った。
「いえ確かに、申請に関してはキヴェカス卿に教師役を拒否されたんで――まぁ今頃後悔しているかは知りませんけど――ぜんっぶ丸投げしたんですけど、だからこそ、副ギルド長を出せとか、そう言う事を言ってるヒマがなくなる筈なんです。行った時に、窓口にいる人と話を済ませてしまわないと、どんどんと仕事が後回しになって、何日も徹夜して働く羽目になるか、締切破りをして自分の評判が落ちるかになるって、多分すぐに気が付くでしょうから」
ここでは言わないが、バーレント伯爵主導の会社設立案件もある上に、オルセン侯爵夫人が自分の離婚裁判案件までねじ込んだから、尚更だ。
「…商法書ぶん投げて、説教しただけじゃ足りなかったのかい」
「イヤですね、リーリャさん。お説教は途中だったって、この前言ったじゃないですか。なので、ささやかな復讐ですよ。これで態度が改善されなかったら、この場をお借りして、お説教の続きをさせて頂けるんですよね?」
「―――」
扇はないけど、うふふと笑ってみれば、一瞬の間を置いて、アズレート副ギルド長は明後日の方向に顔をそむけ、リーリャギルド長は正直に声をあげて爆笑した。
スリアンさんは…あ、魂がどこかに飛んでます?
「ああ、そうだった、悪い悪い!そうかい、窓口でごねるなら、ごねていられなくなるくらいに忙しくしてやれと思ったワケか!まああのお坊ちゃん、仕事は出来るから、確かにその策は使えるね!いやはやホントに、宰相サンが骨抜きになるだけのコトはあるよ!何ならウチで、誰か特許権申請のイロハを代わりに教えてやっても良いかと思ったんだが、じゃあまあ、もうしばらくは様子見にするかい?」
「あ、教えて頂けるんでしたら、その方が有難いですね……先々どこで役に立つか分かりませんし……ただでもそこは、閣下の公務がひと段落ついた頃に相談の上とさせて下さい。私もちょっと今、色々と抱えてまして……」
エドヴァルドがアンジェス国を離れていると言うのは、どこまでオープンにして良い情報なのかが分からない。
なのでちょっとぼかした言い方になったけれど、リーリャギルド長は特に追及をしてこなかった。
「構わないよ。店舗の話が具体的に動き出して、時間がとれるようになったら、また声をかけてくれれば良いさ。じゃあまあ、ほら、カードは渡しておくよ。現時点で何か質問はあるかい?」
「そうですね…ボードリエ伯爵様から、規模の大きなギルドには、手紙専用の転移装置があると伺ったのですが、その利用方法を伺っても宜しいですか?」
「そうか、伯爵は学園理事長だから、教え子にギルド職員がいたりもするから知っているのか。そうだね、実物は帰りにスリアンとでも見れば良い。とりあえずざっくりと説明しておくと、専用の窓口で身分証を見せて、保護用の皮袋を買うんだ。それからそこに手紙を入れて、再度窓口に預けるのさ。皮袋の綴じ紐には、宛先を書いた木簡を括り付けてね。身分証の代わりに、相手から届いた手紙を皮袋ごと見せる場合もあるね。店舗から、個人の家なんかに配送をした場合の返信には、往々にしてそのやり方が使われる。要は差出人と受取人、どちらかが最低、ギルド発行の身分証を持っているって言うのが利用の条件なんだよ」
「それは、どこの商業ギルドでもですか?」
「ああ。どこの国でも同じ方式さ」
「分かりました。それが分かれば充分です。有難うございます」
軽く頭を下げた私を、リーリャギルド長はしばらく物言いたげに見ていた。
「あの……?」
「ついでだから、聞いておこうかね。――推薦状、いるかい?アタシの名前だから、どこでもそれなりに役に立つと思うけどね」
「!」
私は、そんな彼女の視線を真正面から受け止めた。
私が秘密裡に、アンジェス国以外のどこかに行こうとしている事を、彼女は察しているに違いない。
「もしかしたら、使わずに済むかも知れませんが……保険として頂けるなら、大変有難い話だと思います。ちなみに高くつきますか?」
「正直だねぇ。そうだね、それで得た物がもしあれば、全てウチのギルドに還元して貰うってコトくらいかね。先行投資として受け取ってくれて構わないよ」
なるほど確かに、商売には先行投資も重要だ。
ギーレン国で使いどころがあるかどうかは見通せないけれど、私は有難くそれを書いて貰う事にした。
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