バスケットボール男子のBリーグ、サッカーJリーグの新たなスポーツ振興くじ「WINNER(ウィナー)」。1口200円から購入できて、予想がシンプルだからサッカーやバスケットボールにあまり詳しくない人でも、注目の試合や大会だけピンポイントで楽しめる。当せん金は変動するオッズに応じて決定。Bリーグは1部(B1)と2部(B2)の全試合で、勝者とスコアの1~3点差、4~6点差などの16択。J1~J3は1―0、1―1、0―1といった結果で18択となる。詳しくはオフィシャルサイト(https://www.toto-dream.com)まで。
◆明治安田生命J1リーグ第10節 横浜FC1―4札幌(29日・ニッパツ三ツ沢球技場)
【横浜FC担当・田中孝憲=@sph_tnk】Jリーグでは一つの光景だが、ブーイングは見ていて辛い。4失点目の印象があまりにも悪かった。キャプテンマークを巻いたMF三田啓貴は誰よりも長い間、深々とサポーターに頭を下げた。選手たちがうつむきながら歩き出すと、その背中へ今度は鼓舞するチャントが飛んだ。
この試合で負けたことへの叱咤。でもイレブンを支えていくという、サポーターの意思を感じた。ブーイングをする方も、好きでやっているわけではない。プロなので結果が出ないと批判を受けるのは当然だ。でもやっぱり、見ていて辛い。 * * *
ただ、ピッチで戦う人たちにも、知っておいて欲しいことがある。
サポーターたちは、想像以上にクラブのためにお金と時間を使っている。ユニホームやグッズに始まり、年間パス、スタジアム飯代、遠征費、ご当地飯にもお金がかかる。横断幕だってすぐにはできない。DAZNに加えて、ルヴァン杯も見るならスカパー契約も必要だ。試合の後には仲間で「感想戦」もやらなきゃいけない。
みんな好きで勝手にやっている。横浜近辺に住んでいて勝つところを見たいなら、新横浜や武蔵小杉方面に行けば、もっと見られるはず。晴天の土曜には、他のエンタメだってたくさんある。
しかし、横浜FCのサポーターは、他に選択肢がある中で、この道を選んだ。何千円も払って、悔しい体験しかできないなんてあんまりだ。
それでもスタジアムに足を運ぶ。それはひたむきに挑戦し、はい上がる選手たちの泥臭い姿を見たいから。心の底から、エンブレムのために戦う姿を見たいから。そして一緒に喜びたいから。
そのクラブにも、土日に家族を残して、お客さんの笑顔のために頭を下げているスタッフたちがいる。
プロなのだから、彼らの期待に応える義務が、ピッチで戦う人には課せられている。
だからこそ、なんとかして欲しかった光景だった。後半ロスタイムの4失点目。札幌の細かいパス交換についていけず、ボックス内にGKを含めて9人いて、棒立ちの守備はゴールを破られた。直後、席を立つ人が出た。負けていても何かを期待していた人たちの、心の糸が切れた瞬間だった。
ここまでサッカーの話ではなく精神論になったが、開幕10戦未勝利の今だからこそ、記しておきたかった。プロとして不自由なくサッカーができる環境は、彼らの思いがあるからこそということを、改めて心に刻んで欲しい。
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試合開始直後の38秒、右サイドMF近藤友喜のスローインから生まれたゴールは、全員の意識がゴールに向いていたからこそ。「スローインは試合前から話していて、狙う通りだった。ふらふらと入っていったら、こぼれてきた。泥臭かったけれど、取れて良かった」とゲームプランとしては最高の入りだった。
だが「今日こそ勝てるかも」という思いを吹き飛ばしたのは強風だった。失点シーンはまさに「風のいたずら」。前半39分、横浜FCのスローインやり直しから、札幌がボールを奪う。MF福森晃斗が苦し紛れに蹴り出したボールは、ぐんぐん伸びた。下がりながらボールを追ったDFンドカ・ボニフェイスは風の影響について認めた上で「自分でも何が起きたかよく分からなくて…。滑ってしまった」。転倒した後も何とか頭でボールに触ったが、フリーの浅野雄也にボールを収められた。そしてわずかな隙間を狙う低いミドルシュートが、これも風にのって伸びるように、ゴール右下隅に突き刺さった。
すぐにイレブンがンドカの元に駆け寄り、声をかけて気合いを入れた。この時はチームとして「切れて」いなかった。
だが前半ロスタイムに逆転を許す。後半も失点を重ね、1―3の後半ロスタイムにグサリと突き刺さる4失点目を喫した。鹿島戦でも見た、力尽きた姿だった。
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見出しの「フリエ万歳! たとえ敗れようとも」には元ネタがある。
スペイン・セビリアにベティスというよく知られたチームがある。強豪ではない。降格と昇格を繰り返してきたが、熱心的なファンに支えられてきた。「Viva el Betis manque pierda」ベティス万歳! たとえ敗れようとも。サポーターにとってベティスは生活の一部。アンダルシア地方なまりの格言を思い起こさせる、試合後の三ツ沢の光景だった。
次節は昨季J2で戦った新潟が相手。支えてくれる人たちに応える姿を見せて欲しい。