“暴露”という手法で著名人を追い詰め、国会議員にまで成り上がったガーシー劇場が、遂に終盤を迎えようとしている。著名人らを脅迫したなどとして警視庁が暴力行為等処罰法違反(常習的脅迫)などの疑いで逮捕状を取った元参院議員のガーシーこと東谷義和容疑者が、4月13日付で国際手配された。いよいよ当局が本気を出してきた──事件を取材するジャーナリストの赤石晋一郎氏が、その背景を解説する。
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ガーシー包囲網が狭まっている。警視庁はガーシー容疑者のSNSアカウントについて運営会社に凍結を要請し、『ツイキャス』や『TikTok』のアカウントは実際に凍結された。今後の狙いは“兵糧攻め”だと見られている。
ガーシー容疑者の実家の家宅捜索も、警視庁サイドによる「見せしめ捜査」であることは公然の秘密だといわれている。“帰国しなければ徹底的にやるぞ”という警視庁の姿勢を示すためであり、「帰国しない」とガーシー容疑者が繰り返し行なってきた挑発行為に対する警告でもあった。
警視庁の動きは迅速で、ガーシー容疑者が利用していた妹の口座は使えなくなった。日本国内の金融機関にも犯罪収益の送金に加担しないようにと警告を入れているともいわれている。警視庁は彼の収入源を徹底的に潰していくことで、ガーシー容疑者に帰国するようにプレッシャーをかけ続けるつもりなのだ。
そこでポイントになるのが、ガーシー容疑者はいつまで兵糧攻めに耐えられるかである。現在、主な発信ツールとしている「GASYLE」というオンラインサロンの維持コストは高額であるとされており、ドバイ生活の物価高のなか、いつまで海外逃亡生活を維持できるのかが注目されるところである。
また、ドバイに滞在している「ガーシー一味」と呼ばれる日本人コミュニティ、あるいは日本国内の支援者がガーシーに対して何らかの形で便宜を図れば、国際手配者である人物への犯人蔵匿(ぞうとく)罪、もしくは犯人隠避(いんぴ)罪に問われる可能性がある。犯人隠避罪とは刑103条に規定されており、その刑事罰は「3年以下の懲役または30万円以下の罰金」で、隠避に該当するのは、「逃走のための資金援助をすること」などが上げられる。ガーシー容疑者に資金提供すれば、その人物が摘発対象となる可能性があるのだ。
さらに生命線となりそうな「GASYLE」会費収入についても、警視庁が送金ルートを解明して関連口座の凍結に成功すれば、ガーシー容疑者は資金を手にすることができなくなる。
4月12日、ガーシー容疑者は在ドバイ日本領事館に旅券紛失届を提出し、同日付でパスポートが失効した。ガーシー容疑者はドバイに10 年間滞在できるゴールデンビザを持っているので引き続きドバイに滞在は可能だとされている。旅券紛失届を提出したのは刑が重くなることを怖れてのガーシー容疑者側の対策だと思われるが、当局は次の手として捜査員のドバイ派遣を検討していると報じられている。