スウェーデン企業Mycorenaが菌類由来の代替脂肪「Mycolein(マイコレイン)」の発売を発表した。
Mycorenaは2021年11月、動物性脂肪の挙動と感覚特性を模倣した史上初の菌類由来脂肪の開発を発表した。同社によると、この代替脂肪はプラントベース食品の味と構造特性を向上させることから、植物性脂肪に代わる優れた代替品になることが確認された。
Mycorenaの主力製品「Promyc」は現在、プラントベース食品会社との協力により、欧州の複数の国で販売されている。菌類由来脂肪は、「Promyc」に続く同社の新ブランド「Mycolein」として販売される準備が整ったという。
Mycorenaの創業者兼CEOであるRamkumar Nair氏は「Mycolein」発売に際し、次のように述べている。
「パートナーの食品企業が安定した脂肪成分の調達で直面している課題を認識し、2021年にプロトタイプとして最初の菌類で安定化された脂肪を発表しました。当時はまだ、市場にある多くの類似の製品と同様に、製品の拡張性について確認している段階でした。そして今、約1年半にわたる開発を経て、製品を製造するための本格的なプロセスの構築に成功し、商用化する準備が整いました」
史上初の菌類由来脂肪「Mycolein」
出典:Mycorena
プレスリリースによると、マイコプロテインで安定化された代替脂肪「Mycolein」は用途が広く、植物肉などの代替タンパク質や代替肉製品を含むあらゆる食品のジューシーさと風味を高めることができる。
動物性脂肪や植物性脂肪と比較して優れた栄養特性を備えており、脂肪分は40%削減されている。ココナッツオイルとの比較では飽和脂肪酸の割合は85%少なく、従来の脂肪製品よりも健康的で低脂肪な製品となるという。
Mycorenaは菌類由来の脂肪を使用する利点の1つとして、エマルションの安定化に役立ち、これにより動物性脂肪のような融解挙動をもたらす点を挙げている。同社の特許出願中の乳化技術により、脂肪を閉じ込め、動物脂肪細胞を模倣し、霜降り製品を作り出すことが可能となったという。
Mycorenaで製品イノベーション部長を務めるSandra Zachrisson氏は、「この技術の潜在的な用途は無限です。私たちは当初、脂肪ソリューションを通じて食製品の強化に焦点をあてていましたが、これは始まりに過ぎません。最終的な目標は、この技術を活用して新しく、持続可能な食品製造ソリューションを創出することです」と述べている。
欧州のプラントベース企業との試験を経て商用化へ
Juicy Marblesの植物肉に使用されたMycolein 出典:Mycorena
Mycorenaのチームは代替脂肪を検証するため数ヵ月にわたり、多くのプラントベース企業と協力して商品開発の試験や試食を実施した。協力した企業の中には、霜降り植物フィレミニヨンステーキを開発するスロベニア企業Juicy Marblesもおり、「Mycolein」を使用した霜降り製品の作製に成功している。
Mycorenaはまた、「Muu」や「Rebl Eats」のプラントベースブランドで知られるフィンランド企業Meeat Food Tech Oyとも協業している。これらの試験の結果、Mycorenaは現在パートナー企業と「Mycolein」の発売を計画しており、今後もさまざまな代替タンパク質企業とパートナーシップを拡大していくと予想される。
次の段階として、同社は代替脂肪の生産をスケールアップし、クライアント企業によるさらに大規模な検証を実施し、製品を市場に投入するための本格的な製造の準備をするとしている。
2017年設立のMycorenaはマイコプロテインを活用し、これまでに代替肉、脂肪、バターなど多様な製品を開発している。スウェーデンにマイコプロテインのパイロット工場を有し、今年はさらなる生産拡大を予定している。
昨年7月には脂肪に続き、バターのプロトタイプを発表した。今年2月にはマイコプロテインで代替シーフードを開発するため、3Dプリンティング技術を有するRevo Foodsとの提携を発表している。
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アイキャッチ画像の出典:Mycorena