Great Barrier Coral Reef in Australia
Photograph: Francois Gohier/Getty Images

危機にあるサンゴ礁を救うべく、ロボットを用いた修復プロジェクトが動き始めた

激減するオーストラリアのサンゴ礁に養殖したサンゴの“骨格”を移植し、生態系を復活させる試みが生物学者たちによって進んでいる。サンゴ礁の復活には広範囲への移植とスピード感も重要になるが、そこで活躍するのがロボットだ。

オーストラリアのサンゴ礁は危機的な状況にある。しかし、まだ救うことができるはずだと、タリン・フォスターは確信している。そして、そのためには自身の活動をもっとスピードアップすることが必要だと考えている。

フォスターをはじめとする生物学者たちは長年にわたり、気温上昇と海の酸性化に苦しむサンゴ礁に手を差し伸べてきた。サンゴのかけらを採集して陸上で繁殖させたり、高温への耐性をもたせるために交配したり、致命的な病気への対策としてプロバイオティックスを取り入れるなどして実験をしてきたのだ。

しかし、傷ついたサンゴ礁に改良された健康なサンゴを数千単位で移植しても、生態系全体を救うには不十分だったとフォスターは語る。「サンゴを大規模に配置する方法が必要だったのです」

そんなときこそ、ロボットの出番だろう。

サンゴのための「骨格」

健全なでは、ポリプと呼ばれるサンゴの小さな個体が海水から炭酸カルシウムを取り込みながら骨格を形成する。そして同じ遺伝子構造のサンゴと融合し、巨大なコロニー、つまりサンゴ礁を形成する。

ところが、海が大気から吸収する二酸化炭素が増えると海水が酸性に傾くことから、ポリプが骨格をつくることが難しくなり、骨格が海中に溶け出しやすくなる。つまり、海の酸性化がサンゴ礁の成長を妨げ、サンゴの生息を困難にしてしまう。しかも、世界的な海水温の上昇が問題をさらに悪化させる。

例えばオーストラリアのグレート・バリア・リーフでは、数十年前からサンゴの成長速度が落ちている。サンゴの組織内に生息して栄養源となる小さな藻類が熱波によって排出され、サンゴが白化することが一因だ。

サンゴは白化しても死なないが、栄養不足や病気のリスクが高まる。そしてサンゴ礁の消失は、サンゴ礁を隠れ家にしたり、サンゴ礁で餌を得たりしている魚やカニなどの海洋生物に壊滅的な影響を及ぼす。

代わりとなるサンゴを育てて既存のサンゴ礁に手作業で移植するには、労力やコスト、時間がかかる。というのも、サンゴはもともと成長が遅い。種にもよるが、骨格が完成するまでに3~10年かかるのだ。

このプロセスをフォスターは、自身が2019年に創業したスタートアップのCoral Makerを通じて加速させようとしている。

フォスターはサンゴ礁と気候変動に関する研究をさまざまな大学や研究機関で進めてきたが、その前は家業である石工業に従事していた。そこでコンクリートの成型に使うドライキャスト用の装置を用いて、サンゴの骨格を模した石灰質の造形物を製作している。若いサンゴが速く成長できるよう適切な土台を用意する計画なのだ。

最初の試作品は小さなドーム状の骨格で、生きたサンゴのかけらを入れる6個のプラグ(穴)が付いていた。このデザインは自然界からインスピレーションを得たものだ。キクメイシ科の「脳サンゴ」など、多くのサンゴはドーム状に成長する。一方で、固形の土台から上向きに、枝状や板状に成長するサンゴもある。

ただし、フォスターによるとドーム状の骨格には課題もある。「平らな面で構成されているものに比べると、製造が容易ではありません。また、荷台に載せて運ぶのも、接着剤でくっ付けるのも容易ではありません」

このためフォスターは設計の調整を続けており、近い将来には1日わずか数ドルで最大10,000個をつくれるようになる見込みだ。このプロセスは、ほかの工場でも再現できる。

長い目で慎重に育成

骨格を形成したサンゴのかけらをサンゴ礁に複数移植すると、1年から1年半で完全に成長する。場所、水、光の条件がよければ、助けなしに自力で成長するよりはるかに速い。

サンゴは暖かさを好むが、暖かすぎる状態は嫌いである。そして明るさを好むが、明るすぎる状態も嫌いだ。そして餌を運んできてくれる水流が必要だが、流れの速さは繊細な構造を壊さないくらいのものである必要がある。「サンゴは少し好みがうるさいのです」と、フォスターは説明する。

フォスターは1年以上前から、地元である西オーストラリア州アブロホス島近くのサンゴ養殖場で、人工骨格を用いてサンゴの最初の一群を育てている。この一群の目的は、ダイバーが石灰質の骨格を容易に運べるか、条件のいい場所でサンゴがどうなるかを検証することだった。

フォスターらは2022年12月2日、海中養殖場の砂地に第2群を配備した。今回の骨格は円盤状で、ダイバーや遠隔操作機が取り扱うための小さなハンドルが付いている。

サンゴが順調に骨格を包み込んでいくなか、フォスターは陸上での手作業を自動化し、年間28万個の骨格で約170万のサンゴを育てる必要があると考えている。フォスターはサンフランシスコにあるオートデスクのAIラボの研究者と共同で、画像センサーを搭載したロボットアーム2種類の開発と訓練を進めている。

ひとつはサンゴのかけらを細かく切り、土台となるプラグに接着するロボット。もうひとつは、プラグを石灰質の骨格に埋め込むロボットだ。

これらが実用化したら、次の目標は世界中のサンゴ礁や海岸沿いにプロジェクトを展開することだという。「わたしはこのプロジェクトを、サンゴの植栽ような人々が開発しているほかの技術を展開・拡大するためのメカニズムだと考えています」と、フォスターは語る。「ただ、そのスピードがはるかに速く、規模が大きいだけなのです」

WIRED US/Translation by Kaori Yonei, Galileo/Edit by Mamiko Nakano)

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