「二連ポスター使わないで」 立候補予定者に自民衆院議員が苦情

編集委員・土居貴輝
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 自分の顔写真を使ったポスターやのぼりを早く外してほしい――。4月の長崎県佐世保市長選に、無所属で立候補を表明している宮島大典県議(59)が自民党衆院議員から、こんなクレームを受けていることが分かった。一体、何があったのか。

 「させぼ大起動」。赤地に白抜きの文字でこう書かれたのぼりやポスターには、宮島氏とともに、自民衆院議員の長島昭久氏の写真が並ぶ。「二連」と呼ばれる形式だ。長島氏の氏名の脇に「自民党衆議院議員」と書かれている。宮島氏が昨年末ごろから市内に設置し始めたのぼりやポスターだ。

 長島氏の事務所によると、昨年末、宮島氏側から「佐世保市長選で自民党県連の推薦をとるので、長島氏の写真を使わせてほしい」と依頼があった。

 2人は2012年、民主党(当時)の野田佳彦政権で、長島氏が防衛副大臣、宮島氏が防衛政務官を務めるなど「近い関係」(関係者)にあった。長島氏はその後、自民に転じたが、「宮島氏が自民県連の推薦をとるなら同じ党として応援できる」(長島事務所)として写真データを宮島事務所に送ったという。

 のぼりやポスターには、2人の名前の横に「元防衛副大臣」、「元防衛大臣政務官」とあり、「基地のまちである佐世保の有権者に、防衛省の政務の要職にあったことをアピールする狙いが明らか」(自民県連関係者)なデザインだ。

 だが、県連は1月22日、市長選への対応をめぐって、立候補表明していた橋之口裕太市議(39)の推薦を決定。長島氏の事務所によると、この後、宮島氏本人から「自民県連の推薦をとれなかった」と連絡があった。長島事務所側は、「宮島氏が県連の推薦をとるというから長島議員の写真使用を認めた。県連が別の候補の推薦を決めたなら、今後は長島氏の写真は使わないでほしい」と伝えたという。

 宮島氏はかつて自民衆院議員だったが、04年に離党届を提出。同年、除名され、現在に至る。県連関係者によれば、今回の市長選に先立ち、宮島、橋之口両氏から推薦願が出されたが、自民党佐世保支部は橋之口氏を推薦する方針を決め、県連に上申した経緯がある。県連関係者は「除名されているのに、自民党の推薦をもらえると本当に考えていたのか。宮島氏は復党願を出したわけでもない。自民党を除名されている人を党として推薦することはそもそもあり得ない」と話す。

 だが、2月に入り、宮島氏と長島氏の二連のポスターやのぼりの掲示が逆に増加。佐世保支部から報告を受けた県連は党本部へこうした状況を通報した。党本部からも長島事務所に「県連が橋之口市議の推薦を決めたのに、長島氏が自分の写真を対抗候補の宮島氏に使わせているのは問題だ。党紀に関わる話なので早く対応してほしい」と注意があったという。

 長島事務所の担当者は「宮島氏側からは『(ポスターやのぼりは)外します』とのことだったので、その言葉を信用するしかない」と困惑しながら話す。

 宮島氏は朝日新聞の取材に「今、掲示されている分は今後張り替える」と話した。事務所の担当者は「長島氏側からの申し入れを宮島事務所内で共有できていなかった。すでに掲示されているものを回収するが、事務所の人手に限りがあるので時間がかかる」と弁明している。(編集委員・土居貴輝)

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