-旧譜も新しいコラボだと新鮮な感じもします

長尾氏 最近だと、反響が大きかったのは大黒摩季さんとTRFのYU-KIさんのコラボですかね。2人は初めてコラボしたんですよ。僕は2人とも30年前から関係があったから、くどいてみたら「面白い! やりましょう」ってことに。最後に「ら・ら・ら」を2人で歌唱したら、ファンは奇跡のコラボだって思われたみたいです。そういうチャレンジは、毎回やろうとしています。

-結局、80~90年代はヒット曲が多かったと

長尾氏 昨年の紅白でも中森明菜さんがいろいろとニュースになりました。これは、テレビを見る世代が彼女を好きで、落ち着いて見られるアーティストだということなのでしょう。80年から00年代くらいまでは、CDも売れて、お金があったから、手間ひまかけた、いい楽曲が多かったということだと思います。過去のヒット曲を聴いて、もう1度聞きたいと思って、サブスクに登録してくれればいいのかなと。一番いいのは、CDを買ってくれることなのですが。

-過去のヒット曲だとCDは売れず、サブスクも実入りは少ないです

長尾氏 よくヒット曲がないって聞きますけど、それは音楽が、それほど生活の中で重要ではなくなってきたのかもしれません。昔のミュージシャンはマネタイズできたけど、今は、あまり割のいい商売ではないのでしょう。録音もPCでできる。自ら発信も可能になり、レコード会社という音楽の媒介の仕事も減ってくる。必然的に全体のパイが縮小傾向になっています。昭和のJ-POPや歌謡曲を聴いている人たちも、あと、10年20年たつといなくなって、雅楽(古典邦楽? や民謡)のような、文化として、国からの補助金がないと成り立たない世界になるのかもしれません。

-さびしいですね

長尾氏 でもね、先日も野口五郎さんと話したんです。よく何億回再生とか言うけど、アーティスト側にはお金が入るかもしれないけど、ユーザーはお金は払ってないでしょって。僕のファンは、お金を払って来ていただけて、コンサート会場でCDを買っていただけるんです…って。たしかに、五郎さんもそうですが、八神純子さんや、渡辺真知子さん、岩崎宏美さんなどのコンサートに顔出しますが、いつも満席にお客さんが入っている。みんな公演後に握手をしながらCDを「手売り」しているんだけど、すごい行列だった。何百人も並んでいるんです。「コンサートがあるなら行きたい」という問い合わせがNHKにも来るくらいですから。僕は、もっとこの番組を利用して欲しいって思いますね。

-世代間格差ですね

長尾氏 ただ、我々も過去ばかりを引っ張ってきているわけでもありません。若い才能の発掘もしています。今回もトランペッターでキーボード奏者でもある藤井空さんには、五郎さんの「甘い生活」を演奏してもらいました。過去の名曲が現代のアーティストに伝播(でんぱ)して、若い世代にも、あれは良い楽曲、新曲として広がるんじゃないかと思っています。民放のワイドショーのコメンテーターを務める、ハーバード大学やジュリアード音楽院を首席卒業したバイオリニストの廣津留すみれさんやストリートピアノで有名なハラミちゃんなんかもレギュラーミュージシャンです。番組で新しい才能を育てることも責務だと思っています。

◆NHKBSプレミアム「歌える!J-POP黄金のヒットパレード決定版!」 年に3回、これまで第8弾まで放送された。誰もが歌えるヒット曲や誰もが歌えるカバー曲の数々を大熱唱する。第9弾は、野口五郎とハラミちゃんが「ラヴ・イズ・オーバー」を披露する。ほか出演は、太田裕美、加藤いづみ、華原朋美、杏子、SHOW-YA、杉山清貴、なかざわけんじ、HOUNDDOG、花*花、hitomi、B.B.クイーンズ、三浦和人。司会はDJKOO、平野ノラ、廣瀬智美アナ。BS4Kでは3月に先行放送され、BSプレミアムでは5月以降の放送予定。