重症化しにくいとされるオミクロン株によって、新型コロナウイルス感染症は「季節性インフルエンザに近づいた」とも言われます。国立国際医療研究センターの河岡義裕・国際ウイルス感染症研究センター長(兼東京大学医科学研究所特任教授)に、ウイルス学的な視点から、インフルと新型コロナの共通点や違いについて聞きました。
――二つのウイルスの違いは。
どちらも、たんぱく質や脂質でできた「殻」の中にRNA(リボ核酸)でできた遺伝子が入っていて、感染して呼吸器症状を引き起こす、といった点が共通します。
しかし、遺伝子の構造だけに着目しても、新型コロナウイルスでは一本の鎖のようにつながっているのに対し、インフルエンザウイルスでは八つの「分節」というかたまりに分かれています。
また、新型コロナウイルスは肺で増殖して肺炎の原因になりますが、季節性のインフルエンザウイルスは肺で増殖せず、細菌感染が肺炎につながります。ウイルス学的には、まったく別のウイルスです。
――流行の広がり方については。
インフルエンザウイルスは、どんな人もだいたい2、3歳までに感染して、その後、何度も感染して、大人になるとあまり感染しなくなります。
感染を繰り返すうちに免疫がつくられていくためです。
一方、新型コロナウイルスは、多くの人が一度も感染したことがありません。だから、大人も子どもも免疫がありませんでした。
そのため、何度もワクチンをうったり、感染したりしていかないと、その後、しばらく感染しない状態にはならないのです。ここが大きな違いです。
――新型コロナは次々と変異株が出ました。インフルとの違いは。
インフルエンザウイルスは、流行しているウイルスの「子孫」が、次に流行するウイルスになります。
一方の新型コロナウイルスは、一番最初に武漢から出てきたウイルスが世界に広がり、次にデルタ株が出てきて、世界中で主流のウイルスになりました。
ここで、デルタ株の中から次の変異株が出てくるのではなく、以前に流行していたウイルスの「子孫」としてオミクロン株が出てきました。
新型コロナウイルスも、いずれはインフルエンザウイルスと同じような進化の仕方になるのかもしれません。あるいは、複数の変異株が同時並行的にそれぞれ流行することになるのかもしれません。
新型コロナウイルスは出てきてから、まだたった2年しかたっていません。
次の変異株がオミクロン株から出てくるか、別のところから出てくるか、まったくわからない状態です。
――変異を繰り返すと「弱毒化」すると言われることもあります。今後、新型コロナはどう変わっていくと考えられますか。
100年とか1千年とか、長…
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