「駄目ッス。残念ッスけど、買い替えッスね」
「ぷぎゅら。それじゃあ今日はお手上げプイ」

そこに鎮座した物言わぬそれ………電子レンジ

「明日にでもまたリサイクルショップ行くッスか。ついてきます？」
「行くプイ行くプイ」

プレハブ小屋で長いことお世話になってきた電子レンジが完全にぶっ壊れて
結果、久方ぶりの家電買い替えコースとなってしまった

●

「さーて、いいもんあればいいんスけどねぇ」

翌日。練習の休みを使って、我等は街のそこそこ大きいリサイクルショップへと足を運んでいた
背後にはプイ先輩。それに、エールちゃんとソングラインちゃん。そしてハギノモーリスちゃん。話を聞いてわざわざ来てくれたらしい
まあ物が物なもんで、買うもん決めたらトレーナーに連絡して車を出してもらうつもりなので人手はそこまで要らないんだけど。みんなで使うものだし意見を聞く意味では大事だろう

「みんなわざわざありがとうッス」
「な、なにかお手伝いできればと思いまして………」
「それに普段私達も使ってる物ですし」
「せっかくだからパワーのあるやつが欲しいですね！！！！！！！！！！！！！！！」

衣服姿の後輩三人、頼もしいことだ

「まぁ、あんまり下手にパワー上げても困るんスけどね。ブレーカー落ちてもアレですし、火事も怖いし」
「そうプイ？」
「７００ｗとか使うと温め時間に困るりますしね。無難に５００ｗ買うのがいいッスよ」

７００ｗとか温め時間とか書いてないこと多いしね。かといって業務用の１５００ｗ買う訳にもいかないし
本来であれば新品買ってもいいんだけど、やはり限られた部費は丁寧に使って行きたい。他のチームと違ってうちは小所帯だし
かといってすぐ壊れるようなもの掴まされたりしたら目も当てられない。その辺はしっかり見極めていかねば

「まぁ、用事自体はすぐに済むと思うんでそしたらみんな好き勝手買い物しますか。ただ、また近々プレハブの改装工事があるから不要に大きなもの買ったりはしないように注意ッス」
「そういえば大掃除待ちですからね！！！！！！！！！！！！！！！！！！！」
「………そ、そうですね」

ソングラインちゃんが若干目が泳いでる
あ、これアレだ。また古着コーナーでアロハシャツとか漁るパターンだ。まぁ自室行きになるものであれば別に問題は無いからいいけど
時々この子も変なモニュメントとか買ってくるからな……まぁ他の問題児共に比べればなんともない可愛いものなんだけど

「さ、入るッスよ。まずはさっさとレンジの目途つけちゃいましょ」
「え、えと。家電コーナーは、こっち………ですよね」

店内に入ると、軽快なＢＧＭに明るい店内。そして所狭しと並べられた商品の数々
久しぶりに来たけど、特にリニューアルとかはしてない様なので配置は前のままだろう。ハギノモーリスちゃんの言う通り、さっさと家電コーナーに向かうことにする
プイ先輩は物珍しそうにきょろきょろしてるけど……あ、エールちゃんもだ
そっか、エールちゃんもいい所の出だもんね……あんまり馴染みないかもしれない

「ぷきゅ、この辺プイ？なんかそれっぽいものがいっぱい並んでるプイ」
「確かこの辺に………あったあった。このコーナーッスね」

たどり着いた家電コーナーの一角。そこには目的の電子レンジがいくつも並んでいた
どれも見た感じでは状態は綺麗そう。何年製とかｗ数とか色々書いてあるのでそれを見つつ、大きさなども含めて吟味していく
あんまり大きすぎてもいけないし、性能がいいからと予算を大きくオーバーしても駄目。割と難しいぞこれ

「これとかどうプイ？大きさも問題なさそう……あ、お高いプイ」
「最新式に近いとどうしても値段張るッスからね」
「オーブンレンジじゃなくてもいいわけですし、ある程度お値段押さえたいですね」

オーブンは小さい奴が別にあるのでその機能は必要ない。要はお弁当とか温められればいいんだし

「無いとお弁当もおやつも温められないですからね！！！！！！！！！！！！！！！」
「意外と冷食食べる人も多いしな」
「冷食好きプイ。特に最近は焼きおにぎりとお好み焼きにハマっちゃったプイ」

……この人結構ジャンク系好きなんだよなぁ。普段の反動かもしれないけど
お偉いさんに見せたら何言われることか。いやこっちの責任でもなんでもないんだけど

「あ……こ、これとかどうです、か？」

ハギノモーリスちゃんがおずおずと言ってきたそれを見て見ると……あ、悪くない
そこまで新しい年式じゃないけど中も綺麗だし、機能的にも申し分ない
お値段もギリギリ予算内。多分ここに置いてある品ぞろえの中では、一番要望を満たしているんじゃないだろうか

「うん、これは良さそうッスね。みんな、どうッスか？」
「難しい操作もなさそうですね！！！！！！！！！！！！！！！！！！！」
「うんうん、いいと思います。大きさも今までのとほとんど同じですし」
「ぷきゅ。５００ｗ……大丈夫そうプイ」

みんなも特に問題はないと判断したようだ

「い、いいんですか？他にも見た方が………」
「いやぁ、十分ッスよ。いいの見つけてくれてありがとうッス」

ついつい俯きがちな頭を撫でてしまう。なんかこの子こういうのしたくなるんだよね。小動物的と言うか
あわわとか言いつつも逃げはしないでくれるから相当進歩したなぁ……最初の頃は近づくだけでも悲鳴あげて逃げちゃってたのに。先輩嬉しいです

「じゃあ、とりあえずこれにって事で。そしたら、少しみんなで買いものでもするッスか」
「あ、じゃあその……古着も、ぜひ………」
「ソングラインちゃんは平常運転ですね！！！！！！！！！！！」
「ど、どういう意味だメイケイエール！！！」

まぁ早目に済んだことだし、少しくらいゆっくり見て回る時間もあるだろう
とりあえず家電コーナーを抜けて、雑貨コーナーを見ていくことにする
プイ先輩とかもう興味津々で。目を離すとどこ行くかわからんなこれは

「ほら、プイ先輩。ちょろちょろせんといてください」
「ﾌﾟｷﾞｭﾗｯ」

襟を掴んで制止する。ええい、子供かこの人は

「こういうアクセとかって、先輩が作る奴に似てますね」
「あー、シルバーアクセッスね。時折参考にしてるッス」
「なんか変な仮面が置いてあります！！！！！！！！！！！！！正直ちょっと怖いです！！！！！！！！！！」
「どこかの民族物プイ？これ夜中に廊下にあったら腰抜かしそうプイ」

みんなそれぞれ、目についたものに反応していく
こういう雑多な所って見ていくだけでも楽しいのよね。個人的にはホームセンター歩いてるだけでもちょっとテンション上がったりも

「なんか変な置物プイ。何の生き物プイ？」
「よ、四本足で首が長い……なんでしょうか………」

と、そんなこんなであちこち見ていくと、今度はぬいぐるみの棚に
随分と可愛らしいぬいぐるみがたくさん………いや待て、なんだこれ

「ぱかプチだらけじゃないッスか。すごい数ッスね」
「す、すごい……先輩方のぱかプチも……たくさん………」
「ちょっとした専門店みたいプイ」

そこには、山のように積まれた様々なサイズのぱかプチの山。プイ先輩の言う通り、ちょっとしたショップにも負けない品ぞろえで。なんだこれ
見ていくと案の定プイ先輩のもあった。………もう持ってる、とは言わないでおこう。なんか恥ずかしいし

「………いつか私も………」

ボソッと、ハギノモーリスちゃんが呟く
そうだね。もっと活躍すれば、いずれはこうしてぱかプチにという話が来るだろう
そのためにも頑張らねばならないと、そう思ったのだろう。その手は固く握られていた

「あれ？これって………」
「あー、姉貴のバージョン違いッスね。ほら、普通のと違って歯をむき出しにしてるじゃないッスか」
「そんなバージョン違い出てるんですね………」
「私のもそういうのありますよ！！！！！！！！！！！！絶叫顔バージョンです！！！！！！！！！！！！」

いいのかそれは。本人がいいならそれでいいんだろうけど
まぁ実は自分にもあるんだけどね。マスクオフの別バージョン。プイ先輩からは「なんか違和感凄いプイ」とか言われたけど。なんでだ

「しかしこの数……どこかの店かゲーセンかでも閉店したんスかね」
「あ、なんか見たことないのがあるプイ」

そう言ってプイ先輩が手に取ったのは……おい、ちょっと待て

「ぷっきゅ！？」
「ぶふぅ！？」
「違和感が凄いです！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！」
「え、ええ………と」

そこにあったのは……その、自分のぱかプチ。いや、正確にはぱかプチではなく
こんなバリエーション、自分は知らない。タグもついてないところを見ると………

「……パチモンッスね」
「ぷ、ぷきゅきゅ………め、目が………」

ハギノモーリスちゃん以外みんな笑い堪えてるし
そのぱかプチ……によく似たナニカは。明らかに自分を模して作ってあるんだけど。それはわかるんだけど
何かがおかしい。何かっていうか、もう明らかに一点だけなんだけど
目だ。目が、明らかに………

「目がきらっきらです！！！！！！！！！！！！！」

エールちゃんの言う通り
他のぱかプチから移植でもしたのか、どうなのか。自分で言うのもアレだけど、ぬーんとした感じで作られているはずの自分のぱかプチもどきはやたら目がキラキラぱっちりで
自分のことながら、まるで姐御みたいなぱっちりお目目が自分に付いてるというのはその……はっきりいって、異質といってもいいレベルの違和感を感じざるを得ない

「ちょっと、そんな感じの目してほしいプイ………ぷ、ぷきゅきゅきゅ………」」
「オルチョーップ」
「ﾌﾟｷﾞｭﾗｯ！！」

めっちゃ笑い堪えながらそんな事言ってくるプイ先輩にチョップ一閃。ええい、何を期待しておるか

「どこの海賊版業者ッスかこんなもん拵えおったのは」
「あ、悪質な所もあるんですね………ふふ」
「………………………………………………………………！！！！！！！！！！！！！」

ソングラインちゃんもめっちゃ笑い堪えてるし、エールちゃんとかもうプルプルしまくってるし
ええい、こんなもん姉貴にでも見られたら当分ネタにされかねん

「さ、他も見て回るッスよ。余計なもんは置いておくッス」
「い、いいんですか？」
「いいッスいいッス。見なかったことにするッスよ」

そう言って、まだ笑い堪えてるプイ先輩の襟を掴んで引きずってその場を去る
これは当分、このネタで弄られる流れか
まったく、碌なもんじゃない

●

「………よし。使えてるッスね」

ぶーんと、独特の音を鳴らしながら駆動する電子レンジを見て。まずはこれで一安心か、と息をつく

「これでやっと焼きおにぎりが食べられるプイ」
「好きッスねえ」

あれから少し経って
トレーナーに車を出してもらって、買った電子レンジをプレハブ小屋まで運んで試験運転中の今
特に動作には問題なさそうだし、冷食もちゃんと温まってるようだ
トレーナーもコンビニ弁当温めるのに安心したと言っていた。………また食生活荒れてるんじゃないだろうか。ちゃんとしたもん食えといっているのに
また部屋を強襲せねばならんか。汚部屋のままだったらどうしてくれようか

「それにしてもみんな色々買ったッスね」
「あ、あはは………」

恥ずかしそうに笑うのは、おニューのアロハシャツを着て上機嫌のソングラインちゃん。半袖、まだ寒くないのかな
かと思ったら何を思ったのか一緒にアロハシャツ買ってるエールちゃんもいるし。お揃いで満足げに笑ってるのちょっとかわいいな

「プイ先輩のそれ、なんスか」
「面白そうだったから買ったプイ。今度みんなでやってみるプイ」

プイ先輩が買ったのは、なんか見たことないボードゲーム
確かに暇つぶしには良さそうだし、折り畳み式で場所も取らない。いい買い物かもしれない
以外と空いた時間って多いしね。今でもオセロとか置いてあるし

「で、ハギノモーリスちゃんは………」
「は、はい………部屋に、置こうかと思って………」

ハギノモーリスちゃんが買ったのは、なんかモコモコしててかわいいぬいぐるみ
にしても、やたらうすらデカいの買ったな………ハギノモーリスちゃんの上半身くらいあるじゃん。満足そうに抱きしめてるからいいんだろうけど

「で、そっちは何買ったプイ？」
「あー、ウチはこれッス。結構気になってたシルバーアクセ」

結構悩んだんだけど、結局一個買ってしまった
なかなか尖ったデザインだけど、割と気にいったし創作の参考になるかなと。「ガラ悪プイッ」とかなんか聞こえたけど無視してチョップ一発入れておこう。ていっ

「ﾌﾟｷﾞｭﾗｯ!?」

まったく失敬な人だ。人をまるでチンピラみたいに

「ぷぎゅー………痛いプイ。今日二回目プイ。先輩虐待プイ」
「余計な事言うからでしょうが。あ、ほら。焼きおにぎり出来上がるッスよ」
「お、やっとプイ。待ちくたびれたプイ」

よくレンジで温めることを「チンする」っていうけど、今のレンジって大体チンって言わないよね。電子音が多い気がする
これもその例に漏れず、ピーッという電子音が鳴り響く。開けてみればほっかほかに出来上がった冷凍食品の焼きおにぎり。うん、完璧だ

「昨日から食べそびれてたから楽しみだったプイ。いただきまプーイ」

美味しそうに熱々の焼きおにぎりを頬張るプイ先輩。満足してくれたようでなによりだ

「とりあえず機能は問題なさそうッスね。一安心ッス」
「これで冷食のタコ焼きが食べられます！！！！！！！！！！！！！！！！！！！」
「ちょ、メイケイエール！！ズルいぞ、私も食べたい！！」

早速と言わんばかりに冷蔵庫へ向かう後輩ｓを微笑ましく見つめて、ふぅと一息。さあ、お茶でも淹れようか

「あ、あの。お茶、入れるのお手伝いします………」
「お、ありがとうッス。お願いするッスよ」

なんだかんだと騒がしい一日になってしまったけど、問題も解決できて万々歳と言うところだろう
これで当面、弁当や冷食のオヤツを食べそびれずに済む。まぁ結構自分で料理しちゃうから無いと詰むわけでもなかったけど、あるとないとでは大違いだし
これでしばらくの間は………

「………あれ？」
「ん？どうしたッスか」

冷凍庫を漁っていたエールちゃんがきょとんとした顔で固まってる。なんだ、タコ焼き誰かに食べられちゃってたか

「あれ？先輩………これ、冷凍庫が………」

ソングラインちゃんも何かに気づいたようで。プイ先輩もそっちに近づいて行って………「あ」と声を漏らす

「冷気が出てないプイ」
「………なんですと？」

おい待て、どういうことだそれは
慌てて近寄ってみると、確かに。凍ってるものから漂ってくる冷気は僅かにあるものの、冷凍庫自体からの冷機はほぼ感じられない
ていうか、よく聞くと駆動音がしてない。コンセントは………刺さってる。つーか、さっきプイ先輩が冷凍庫開けてた時点ではまだ普通だったということは
そして、今このタイミングでこうなってるということは

「………故障、ッスね」
「………ぷきゃー」

悪いこと程、こうして重なるもので
思わず天を仰ぎたくもなる。なんでこんなことに

「………えと、その………つまり………」
「……先輩。直せたりは」
「ウチはそんなスキルねーッスねぇ………」

冷蔵庫は、その役割上電子レンジよりも急を要する
これは………もう一度リサイクルショップに向かう必要があるだろう

「とりあえずトレーナーさんに連絡しますね！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！」
「………弱り目に祟り目。泣きっ面に蜂、プイ」

結局、この日は門限にギリギリ何とか間に合わせてリサイクルショップへと赴き、新たな冷蔵庫を買いに出る羽目になり
決して潤沢とは言えない部費は大きな出費を強いられ、その後しばらくチーム首脳陣の頭を悩ませることになった

以上。リサイクルショップで家電買ったので酒飲んで舎弟した

やはり舎弟の綺麗な目はチームでも解釈違いなのか

良いものを読ませてもらった

西日本だと６００Wは普通だぞ

冷食はちょっとしたおやつには丁度いいからね
コンビニ弁当ばかりとかはいかんけど

ｷﾀ━━━━━━(ﾟ∀ﾟ)━━━━━━ !!!!!

プイプイもしかしてわりと暇なのか…？

>1681912151201.png
目ぇキモッ！！

>No.1048884608
これは確かに違和感が

>No.1048884608
これはいいパチモン

変な仮面…石で出来てる？

>1681912151201.png
少なくとも実際にウマ娘化してこのデザインじゃなかったとしてもこんなキラキラした目だけは絶対無いな

>プイプイもしかしてわりと暇なのか…？
お仕事の貴重な合間を縫ってだらけてるんだろう
多分

プリティ担ってる…

>「なんか変な置物プイ。何の生き物プイ？」
>「よ、四本足で首が長い……なんでしょうか………」
キリンだよね？そうだよね？

プイの悲鳴がいちいち珍獣のそれなのよ

そーいえばあれだけ数あったのに芦毛の娘のぱかプチだけなかったプイ

ちなみに今回で９０作目に達しました
今年中に１００行きたいですね

>ちなみに今回で９０作目に達しました
>今年中に１００行きたいですね
すげえ…

ｷﾀ━━━━━━(ﾟ∀ﾟ)━━━━━━ !!!!!

>No.1048902084
プイは確かにこういうところテンション上がるよな…