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自分をいじめた同級生がメディアで活躍していることを知り苦しいと訴える37歳女性に、鴻上尚史が「悔しいですよね」と声をかけ、勧めたこととは
鴻上尚史のほがらか人生相談~息苦しい『世間』を楽に生きる処方箋
2023/04/18 16:00

送ってくれた相談には、実際の名前が書いてあって(編集部の判断で伏せたようです)本当に誰もが知っている会社と雑誌なので、保田さんの苦しみはすごいだろうと思います。
「二度目のいじめ」そのものだと思います。
保田さんの相談を読みながら、「いじめ問題はこんなふうに終わりがないんだなあ」と暗澹たる気持ちになりました。保田さんとレベルは違っても同じような経験をしている人は多いんじゃないかと想像します。
さて、保田さん。「企業宛てに●●さんにいじめられましたと手紙を送りつけようか、SNSに書き込んで周りから恥をかかせてやろうか」というのは、保田さんが予想するように、復讐の手段として効果的ではないと思います。
企業宛ての手紙は無視されるでしょうし、SNSは、保田さんが書くように、あまりにしつこく続けたら「名誉毀損」で訴えられる可能性があります(「グラウンド端の砂場に連れていかれ、背中やお腹を蹴られた」り「死ねばいいのにと笑いながら言われた」動画があればまだしも、残っているわけないですもんね)。
なによりも、復讐をずっと考えることは、保田さんの人生を台無しにすると思います。これは間違いないことだと僕は思っているのですが、ネガティブなことにフォーカスして生きていくと、ネガティブな顔になり、ネガティブな人やことが周りに集まり、ネガティブな人生を送ることになるのです。
昔の言葉で言うと「人を呪わば穴二つ」ですね。人を呪おうとすると、やがて自分も呪われて、墓穴が二つになるぞという戒めです。
でも、悔しいですよね。保田さんは何も悪くないのに。恨んで呪って当り前なのに。悪いのはこの二人なのに。なのに、この二人は、平気な顔で華やかな業界で名前を出しているなんて。
保田さんの感情は当然だと思います。「昔の辛い経験を乗り越えて明るく生きてきたつもりが、30年近くたった今も全く克服できていない自分に驚き」と書かれていますが、いきなり華やかな業界の中で名前を突きつけられたら、感情が揺さぶられるのは当り前です。いじめの記憶がフラッシュバックするのは普通のことです。それほど深く傷ついていたということです。それを懸命に抑えて、生きてきたということです。
鴻上尚史のなにがなんでもほがらか人生相談 息苦しい「世間」を楽に生きる処方箋
鴻上 尚史


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