はい、どうも、こんにちは、ゆうこーです。
今回は調和振動子のゼロ点振動について解説していきたいと思います。
よろしくお願いいたします。
ハミルトニアンの期待値
前回、調和振動子のハミルトニアンの期待値を求めていきましたが、今回は位置と運動量の分散を用いて求めていきます。
前回の記事は以下にあります。
37. 一次元調和振動子のハミルトニアンの期待値
前回でもやったようにハミルトニアンの期待値は調和振動子の波動関数を un(x) とすると、次のようになります。
調和振動子の波動関数についての詳細は以下の記事をご覧ください。
33. シュレーディンガー方程式による1次元調和振動子の解法①
34. 1次元調和振動子~シュレーディンガー方程式を用いた方法~②
位置と運動量の分散を求めるために、位置と運動量の期待値と2乗平均を求めていきます。
位置と運動量の期待値はこちらの記事から両者ともゼロになります。
⟨x⟩=⟨p⟩=0
位置と運動量の2乗平均はそれぞれ次のようになります。
⟨x2⟩=∫−∞∞un∗(x)x2un(x)dx
⟨p2⟩=∫−∞∞un∗(x)(−iℏ∂x∂)2un(x)dx
そして、分散 (Δx)2, (Δp)2 は次のようになるので
(Δx)2=⟨x2⟩−⟨x⟩2=⟨x2⟩
(Δp)2=⟨p2⟩−⟨p⟩2=⟨p2⟩
ハミルトニアンの期待値は次のようになります。
⟨H⟩=2m(Δp)2+21mω2(Δx)2
不確定性原理
不確定性原理とは、量子力学上では、位置 x と運動量 p を観測したときに、位置と運動量の測定値の誤差を同時に0にすることができない原理のことです。
つまり、位置と運動量は同時に測定することができず、確率的に広がっているということです。
不確定性原理については以下の記事をご覧ください。
9.ハイゼンベルグの不確定性原理とは
不確定性原理について定式化すると、次のようになります。
Δx⋅Δp≥2ℏ
これを用いてハミルトニアンの期待値について言及していきます。
ゼロ点振動
不確定性原理の式をハミルトニアンの期待値に代入すると、次のような不等式になります。
En=2m(Δp)2+21mω2(Δx)2=2m1(Δp−mωΔx)2+ωΔx⋅Δp≥ωΔx⋅Δp≥21ℏω
よって、エネルギー固有値 En は最小値を持つことが分かります。
このことをゼロ点振動といいます。
En≥21ℏω
上式は、調和振動子のエネルギー固有値
En=(n+21)ℏω
から、n≥0 であることを用いても導くことができます。
ここからはゼロ点振動の物理的意味について説明していきます。
ゼロ点振動とは、たとえ絶対零度の状況下であっても、エネルギーがゼロになることがないので、原子が静止せずに振動し続ける量子力学的現象のことです。
例として、ヘリウムは絶対零度近傍でも固化せずに液体の状態を保ちます。
さらに固体では原子が完全に静止しているのではなく、微小に振動しています。
この振動のことを格子振動と呼びます。
ゼロ点振動は、上の式変形で用いたように不確定性原理によって起こります。
ゼロ点振動が不確定性原理が原因であることを分かっていただくために、何記事かにわたって、調和振動子の期待値と分散を求めていきました。