弊サークル「夜話.zip」のC101新刊エロマンガ評論本は『永世流転』と台湾エロマンガ特集。今回は記事の中から、サークル「三色坊」にて台湾で活躍、日本のロリババア専門誌「永遠娘」で、中華圏の神話や歴史を元にした壮大なエロマンガ「永世流転」シリーズを連載している黒青郎君先生とHaku先生のロングインタビューを先行公開します。通訳は三色坊作品の翻訳を担当するアレスさんにお願いしました。
描かない生き方がわからない
――三色坊のメインメンバーは黒青郎君先生とHakuさん、アレスさんのお三方でよろしいでしょうか?
アレス(以下、あ) メインメンバーはHakuと黒青の二人だけで、私はHakuの妻として手伝っています。
――そうなんですね。お三方のペンネームの由来からお聞きできればと思います。
黒青郎君(以下、こ) 「黒青」は台湾の方言で青あざとか、睡眠不足の時の目の下の隈という意味です。「郎君」は昔の男性の呼び方です。組み合わせて、「殴られた男」とか「睡眠不足でクマがある男」という意味です。今も眠いです。
あ 黒青は、いつもこの時間は寝ているので(笑)。
――失礼しました(笑)。
こ 『霹靂布袋劇』の黒白郎君(図)というキャラが好きで、その名前をもじってペンネームにしました。
Haku(以下、は) 自分の苗字は「白」と書いてパイなんです。大学の日本語の授業で、日本語の名前をつけるときに「はく」にして、今でも使っています。家族全員同じペンネームですね(笑)。
――アレスさんは?
あ 自分の英語名です。高校の英語の先生が付けた呼び方を、そのまま日本語でアレスにしました。戦の神様ですよね。最初は全然気付いていませんでした。
――お三方の役割分担をお聞きできますか?
あ 黒青の仕事はマンガを描くことで、Hakuの仕事はマンガ以外の全てです。例えば脚本の調整とか、資金や在庫の管理とか、イベントの手続きとか、仕事に関する連絡など、黒青がやりたくないことを全部Hakuがやっています。生活もほとんど全部Hakuに任せています(笑)。
――脚本にもHakuさんが関わるんですか?
は 「永世流転」(単行本二〇二〇)も含め、ネームを作る前に、二人で打ち合わせをします。喧嘩をしながら(笑)。お前は何もわかってないぞとか、このシナリオは駄目だとか、いつも喧嘩します。ネーム以降はペン入れとかトーン貼りとか、黒青がやります。
――担当編集者さんみたいなイメージですかね。
は そうですね。
――三色坊作品の翻訳は基本的にアレスさんが担当されてるんですか。
あ そうです。私が時間的に作業し切れないときは友達にも頼みますが。
――「永世流転」シリーズもアレスさんが訳されたんですか?
あ 「永世流転」の翻訳は特別で、最初に私が訳したものを「永遠娘」の編集長が詳しく修正しています。とても品質が高い翻訳で、私では書けないセリフ回しだと思います。
最初のファンなんです
――三色坊というサークルを結成されるまでの流れをお聞きできればと思います。
は 私と黒青は高校時代からの大親友です。黒青は自分の才能をうまく活かせずに、生活がきつくなってしまった時期もありました。私が大学を卒業して仕事をして、ちょっと貯金ができてから黒青に「お前は好きなマンガを描いて、後のことは私に任せて」と言って、二人で三色坊を結成しました。最初に三色坊が出版した本は『真・三國無双Online』(二〇〇七〜二〇二二)の全年齢ギャグマンガでした。その後描いたエロマンガ、『鉄扇公主のラブラブ日記』(二〇一〇)や『撫鏡軼聞』(二〇一二)(図)が人気を得て、その作風が今まで続いています。
『撫鏡軼聞』は、とある屋敷に閉じ込められた天女と屋敷の主人の稚児が優しい愛を育むも、二人とも主人の凶悪なチンコに堕とされてしまうという、NTR3Pエロマンガ。中国の敦煌石窟に描かれた壁画を元にしている。
――黒青郎君先生がマンガを描き始めたきっかけはなんだったんでしょうか?
こ わかりません。
――えっ(笑)。
こ 高校時代から一コママンガとか掌編を描いて友達に見せていましたが、いつマンガを描こうと思ったかは覚えていません。頼まれて『霹靂』の四コママンガを描いたときが、きちんとマンガを描き始めた時かなと思います。『霹靂』のファンの会の月刊誌で、四コママンガを連載しました。二〇年ぐらい前のことでしたかね。
――自然とマンガを描いていて、その延長で。
こ Hakuに流されて……ああマンガ描けるんだ、マンガ家やるぞという流れで今に至りました。強いて言えば、私にはマンガを描く以外の才能がなくて、描かないとどう生きていいかわからないから、ですね。
は 私は黒青の親友で最初のファンなんです。自分が編集者になれば一番に黒青のマンガを読めるから、活動を始めたんです。
ババア感が大事です
――私(新野)は初めて三色坊さんの作品に触れたのが『永世流転』だったんですけれども、本当にびっくりしまして。歴史とか神話をここまでシリアスにフィーチャーしてエロマンガを描くっていうのは読んだことがなかった。
こ 中国の歴史とか古典とかは学校で学んできて、小さい頃から大好きなテーマでした。エロマンガも大好きですから、二つの好きなものを融合したんです。台湾でも誰もこのようなマンガは描いていなかったので、自分で描きました。
――『山海経』(各地の神話・怪獣・妖怪などを伝えた古代中国の本。「永世流転」に登場する太歳(視肉)、『涿鹿』の蚩尤など、三色坊作品の元ネタも登場する。)とかそういう話は、台湾の学校で教えているものなんですね。
は そうですね、台湾ではほとんど常識ですね。私たちと同世代の人だと、中国古典や神話は、小学校から高校まで教えられていました。
こ 『霹靂布袋劇』にも強く影響を受けました。小さい頃から見ていましたので、神話や古典に興味をもったきっかけになりました。最近は忙しくて布袋劇を見る機会がないのですが。
――たくさんのロリババアを作品に描かれてますけど、ロリババアの魅力とは。
こ ギャップ萌えです。……。
――……というと。
は 黒青はとても無口なので、代わって話しますね(笑)。黒青はロリコンではありません。彼にとってはババア感が大事です。落ちついてる気品とか、あるいは堂々とした態度とか、それを幼女の体で表現することで妖艶さを感じます。そういうギャップ萌えがたまらない、ということかと。
――なるほど(笑)。 最初にロリババアを好きになったきっかけは何ですか?
こ 『天上天下』(一九九八〜二〇一〇)とか? 昔はロリババアって意外と多くて、どれがきっかけなのか、もう既にわからなくなっています。でも一番「これがロリババアだ!」という感じがしたのは、ゲームの『VenusBlood −FRONTIER−』(二〇一二)のオーディンというキャラ(図)です。ロリババアへの性癖が覚醒しました。
――オーディンはどの辺が魅力なんですか?
こ やっぱりギャップ萌え。あと大きくなったり小さくなったりできますので、巨乳が見たいときは大きくなったり、ときに貧乳を味わいたいなら小さくなってくれて、便利(笑)。
――軼聞シリーズのヒロイン、綾羅も変身しますよね。
こ 綾羅は自分の好きなものを詰め込みました。
――ギャップ萌えを描くために気をつけているところはありますか?
こ ロリババアを描いているときは何も意識していなくて……何か問題がありましたら、Hakuが指摘します。
――たとえばすごく表情が豊かだなって思うんですよね、黒青先生の描くロリババアって。徐福もおばあちゃんみたいな優しい表情だったり、超然とした神のような表情だったり。こういうのは……。
こ 何も考えないで描きました(笑)。あの、直感と自然のままに。このキャラはこういう顔が一番いい、行けるという感じで描きました。本能のまま。
股間と太ももの逆三角形
――具体的な作品を取り上げていきたいと思います。多分「和平的曙光」(WEBマンガサイトWEICOMICに掲載された作品。ファンタジー世界の戦争をとある娼婦が収める。)が、最初のエロマンガですかね?
は はい、「和平的曙光」は最初にネットで発表した作品です。具体的な時期は忘れてしまいましたが、三色坊を結成する前のことです。二〇〇〇年くらいの時期ですね。
――昔の絵柄は今とやっぱり違いますよね(図)。どのように絵柄を作っていったかをお聞きできればと思うんですが。
こ 自然のままに……。今のような絵柄が綺麗で好きだから、こう描いてきました。実は今でもどう描いたら綺麗か模索している途中で、他の作品で好きな絵柄を見つけると真似したくなります。例えば韓国マンガの『新暗行御史』(二〇〇一〜二〇〇七)の梁慶一さんの絵柄(図)は昔から大好きで、意識して真似してきました。もうすごく昔のことですけどね。
『新暗行御史』第1巻より
――今の黒青郎君先生の絵とはだいぶ違いますよね。もっとデフォルメが効いてるような印象がありますが。
こ 昔の作品、「和平的曙光」や「山中艷譚」は、全部手で作画してトーンも手で貼ってます。その後の作品はパソコンで描いていますので、楽なやり方をしたいなという気持ちで、徐々にそういう絵柄になりました。
――ちょっと目を大きめにしてみたほうが描きやすくて可愛いかも、みたいに意識してたんですか?
あ ……意識していない顔をしています。
――なるほど(笑)。
こ いつも忙しくて、そういうことを考える暇がまったくないんです。全部描いて振り返ってみれば、絵柄が変わったんだなという感じで、本当に感覚派です。
――他にも、まつ毛が豊かだなという印象を受けますが(図)。
『百華荘』第6巻より
あ まつ毛を描くときはなんか楽しいなと思って、徐々に豊かにした……という顔をしています(笑)。
こ 女性のまつげが長い方が可愛いと思いますし。やはり性癖ですよね。
――性癖というと、なにかフェチとかってありますか?
こ お尻が大事です。巨乳や貧乳ではなくお尻派です。肉のついている豊かな曲線が大好きです。大きいお尻というわけではなく、藤田和日郎さんのような体の描き方、太ももと局部の間にできる逆三角形の空間(図)が大好きで、これを意識して女性の身体を描いています。ロリババアも含めたすべての女性キャラでお尻と太ももの三角形を大事にしています。男の娘を描くときも意識していますね。男のお尻じゃないだろうと指摘されたこともありますが、好きだからいいやと思ってます。
『からくりサーカス』第1巻より。
ルーツとしての武侠映画
――『寄血軼聞』(二〇一五)『附骨軼聞』(二〇一六)は、少年マンガのようにワクワクするシーンも多くて。日本のエロマンガで、ここまでバトルアクションとかの要素を本格的に入れるっていうのはあんまりないと思うんです。このような作品がどこから発想されたのかお聞きしてみたくて。
こ 子供の頃から香港の18禁武侠映画を見ていて、その影響でエロもバトルも全部入れたマンガを描きたいと思ったんです。少ないからこそ、自分でやってみようと。
――じゃあ発想の源は武侠映画なんですね。
こ 昔から見ていた香港の三級片の武侠映画はそういうテイストでしたから。一級が全年齢向けで、三級は一八歳以上向けの映画のことです。そういう映画が小さい頃テレビでよく流れていて。あの頃の三級片の映画はヒーローアクションをしたら、そのまま「セックスしないと死ぬ薬を飲んじゃった」ってなったりして、子供の頃からこういう流れが普通かな?と思っていました(笑)。
――なるほど……。特に印象に残っている作品はありますか?
こ 今思いついたのだと『新仙鶴神針』(一九九三)や『白髮魔女傳』(一九九三)という武侠映画が大好きで。あとは『大唐十二行房』(一九九四)とか(注10)(図)。(中国語でHakuさんと会話)
日本版DVDパッケージ。どちらも戦闘力が高すぎる女性が登場し、バトルとともにエッチなシーンが満載。『新仙鶴神針』のヒロインは琴を武器にしており、これは『附骨軼聞』の綾羅と同様である。
あ いま黒青とHakuが昔の映画について盛り上がっています(笑)。香港にはこのような映画がたくさんあって、三級片ではなくてもエロシーンが暗示されていました。私から見れば、こういう映画があってこそ黒青があるという感じですね。本当にこの二人は、小さい時からこういう映画が趣味なんですよね。
――次に『寄血軼聞』のヒロインですけど、既に別の男に調教されて悪堕ちしている女の子が降ってくる、っていうのが意表を突かれました。
というわけでサンプルはここまで!この後は本をゲットして読もう!