過去最深の海中で泳ぐ魚を確認 伊豆・小笠原海溝=国際研究グループ

ジョナサン・エイモスBBC科学編集長

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これまでに最も深い海中で泳ぐ魚が確認された(最初の15秒。その後の映像はわずかに浅い場所で撮影された)

日本やオーストラリアなどの科学者が参加する国際研究チームがこのほど、これまでに最も深い海中で魚が泳いでいるのを確認した。「スネイルフィッシュ」として知られるクサウオの一種で、伊豆・小笠原海溝の水深8336メートルで撮影された。

研究チームの科学者は、これはスネイルフィッシュが生存できるぎりぎりの深さだと指摘している。

これまで、魚が確認された最も深い場所は水深8178メートルで、今回の海域の南側にあるマリアナ海溝だった。今回の観察により、この記録が158メートル更新された。

西オーストラリア州の深海学者、アラン・ジェイミーソン教授はBBCニュースの取材に対し、「もしこの記録が更新されたとしても、それはほんのわずか、数メートルの差に過ぎないだろうと思っていた」と語った。

ジェイミーソン教授は10年前、魚の生存が確認できるのは水深8200~8400メートルくらいまでだろうと推測していた。10年にわたって世界中で調査をした結果、この推測が確認された格好だ。

Alan Jamieson

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西オーストラリア大学のアラン・ジェイミーソン教授

今回撮影されたのは、スネイルフィッシュの幼魚。

深海探査船「DSSVプレッシャー・ドロップ」から「ランダーズ」と呼ばれるおもりとカメラを搭載した調査装置を投下し、撮影した。ランダーズには、深海生物を引き寄せるためのえさがくくりつけられた。

撮影された魚を特定する目的で捕獲することはしなかった。しかし日本海溝の近く、水深8022メートルで複数の魚が捕獲された。

こちらも「チヒロクサウオ」というスネイルフィッシュの一種で、最も深い場所で捕獲された魚となった。

画像提供, Minderoo-UWA Deep Sea Research Centre

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水深8022メートルで捕獲されたチヒロクサウオ

スネイルフィッシュは300種以上が確認されているが、その大半は浅瀬に生息し、河川の河口などにもみられる。

一方で、北極海や南極海といった冷たい海にも適応するほか、水圧が非常に強い、世界で最も深い海溝でも生息が確認されている。

水深8000メートルでは、海水面の800倍もの圧力がかかっている。

ゼラチン質の体が深海で生存できる秘密だという。

また、多くの魚が浮力を保つために持っている鰾(ひょう、うきぶくろ)を持たないことや、深海に生息する小さな甲殻類を吸い込むようにして食べることも、深海で有利にはたらいている。

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調査船「DSSVプレッシャー・ドロップ」

ジェイミーソン教授は、マリアナ海溝で見つかった魚よりも深い場所に魚がいたのは、伊豆・小笠原海溝の方が水温がわずかに暖かいからだろうと述べた。

「最も深いところにいる魚は伊豆・小笠原海溝にいるだろう、そしてそこにいるのはスネイルフィッシュだろうと予測していた」とジェイミーソン教授は語った。

「人々から、深海のことは何も分かっていないと言われるとイライラしてしまう。私たちは知っている。物事は本当に速く変化している」

ジェイミーソン教授は、ミンデルー財団と西オーストラリア大学による深海研究センターの創設者でもある。今回の調査では、東京海洋大学の研究チームと共に、琉球海溝でも探査を行った。

ジェイミーソン教授は魚だけでなく、世界で最も深い場所にいるタコやクラゲ、イカも発見している。

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ランダーズにくくりつけられたえさに、深海魚が引き寄せられてくる

DSSVプレッシャー・ドロップと、その有人潜水艇「リミティング・ファクター」は、2018年と2019年にアメリカ人探検家ヴィクター・ヴェスコヴォ氏が行った、地球の5大海の最深部を訪れる計画で使われた。

ヴェスコヴォ氏はこうした潜水を行った史上初の人物となり、ジェイミーソン教授は当時、この探検で科学主任を務めていた。

船と潜水艇は昨年、海洋調査組織「インクフィッシュ」が買い取り、米サンディエゴで改修が行われていた。

また、船名はダゴンに、潜水艇の名前はバクナワに変更され、今年6月には再びジェイミーソン教授を科学主任として、新たな調査に使われるという。

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水深8178メートルで撮影されたスネイルフィッシュ