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(校長)折り入って 相談があってね君 小学校の教師にならんか?
(万太郎)はあ!?
え… 先生は おりますろう?
今は 児童の数も増えてな教師の育成も間に合わんで地元で教師になってもらえる人に当たるよう 通達があっての。
あ~ いや…わしは 小学校も出ちょりませんが。
(せきばらい)まあ そこは 村の人たちが口をそろえて佐川一の秀才は 紛れもなく君だと。ああ~…。
まあ しかも 仕事もしないでフラフラしていると。
まさに うってつけ。フラフラゆうか…。
(市蔵)さすが 校長先生 お目が高い!お目が高い!
手前どもの主は 秀才じゃき。
書店に毎月えらい高い金を払いゆうわしが言うがですき 間違いありません!
これで もう 昼行灯とは言わせません!
お客様にも 格好がつきます! のう?そうじゃ!
とにかく やらんと!
そんなことしゆう暇はない!うん 忙しいきの。忙しい?
これから 心の友に会いに行くがじゃ。
そのためには わしも頑張っちょったゆう証しを用意せんと。
(竹雄)心の友?ついに… 会えるがじゃ!
会えるゆうて… 夢で?
竹雄…。 竹雄 来い!あっ ちょっと! ちょちょちょ… 若!
あっ! 校長先生 失敬。 エヘヘヘ…。
ちょ…。番頭さん…。
忙しい様子じゃな。 ほかを当たる。
あ… 待っちょってください!説得しますき! 校長先生!
ありゃ アホだな。
ちょっと若 待ってくださいよ!長旅になるき。 荷造りは どうしよう?
どこへ行くがです? 高知ですか?
東京じゃ!はあ!?
先生方に会うがじゃ!
♪~
♪「言葉足らずの愛を 愛を貴方へ」
♪「私は決して今を」
♪「今を憎んではいない」
♪「命ある日々 静かに誰かを 愛した日々」
♪「空が晴れたら 愛を、愛を伝えて」
♪「涙は明日の為 新しい花の種」
♪「空が晴れたら」
♪「逢いに、逢いに来て欲しい」
♪「涙は枯れないわ 明日へと繋がる輪」
お~!きれいじゃのう。きれいじゃのう。
わあ~!きれいじゃのう!
綾さん おきれいじゃ。ホンマにのう…。
(どよめき)
(タキ)はあ… くっ! はあ…。
綾! 縁談は 先様も仲人も おることじゃ。家と家の話じゃ。
おまんには 恥をかかされた!
(綾)申し訳ありません…。
(ふじ)あ… 綾様…。
♪~
こんなとこに…。よう分かったね。
若様のマネですか?
えい方やったよ。 立派なお店でのう。
あちらさんは40を超えたぐらいじゃろうか。
前の奥さんを病で亡くしちゅうき私には 何もせんでえいのんびり過ごしてほしいと。
(綾)けんど…。
お膳の酒 飲んでしもうて。
うまかったですか?
うん。
ほんでも うちの酒の方が うまかった。
博覧会には あちこちの蔵元が自慢の酒を出して競うがじゃろ?
考えただけで カアッとしてくるがじゃ。
うちの峰乃月は一等を取れるがじゃろうか思うて。
「見合いどころじゃない」。つい言うてしもうた。
悲しそうな顔されちょった。
もうね 私やち きれいな着物着て機嫌よう片づく方がえいゆうて分かっちゅうがじゃ。
それで みんなあ 幸せじゃき。
なのに… 自分のことばっかり。
醜いよ。
♪~
竹雄 バッタがおる!
あっ!はあ~…。
はあ…。
冬になると 酒造りは佳境を迎えます。
(綾)これが麹?(幸吉)はい。
甘い。 栗みたい。
(幸吉)出来たての麹の味です。麹の作り方一つで 酒の味も変わります。
味の濃い麹を作って醸したらもっと濃い辛口になりますき。
ほいたら そういう麹を作ればもっと濃い辛口にできる?
はい。それ 試してみたいがじゃ。試す?
峰乃月の 何本飲んでも澄み切った味わいも えいけんど濃ゆうて キリッとして一口目から忘れられん味の酒もきっと えいと思う。
峰乃月とは別に試しに造ってみたいがじゃけんど…。
分かりました。では 親方に頼んでみましょうか?
うん お願い 幸吉。はい。
(くしゃみ)あっ いかん!
(くしゃみ)
はい。
若 お寒うないですか?
うん?
何されゆうがです?
堀田先生から「植学啓原」を借りてきたきこれやったらと思うたがじゃけんど…。
載っちゃあせんがですか?載っちゃあせん!
自分で名前も突き止められんようじゃ恥ずかしゅうて心の友に お会いできんき。
若は 幸せですね。どこがじゃ?
若は その…人に関心を持つことがあるがです?
あるに決まっちゅうじゃろ?
蘭光先生 心の友の里中先生 野田先生。みんなあ 先生じゃないですか!
そうじゃのうて… 例えば…おなごとか。おなご?
まあ よう出来ちゅうとは思うけんど…。どういう意味ですか?
花を見よったら きれいな色や変わった形で 虫を呼びゆうがじゃ。
つまり おなごが着飾っちゅうがもあれと同じ理屈じゃろう。
もう えいです。 理屈じゃないがです!
若に言うたち 無駄でした。
はあ…。
何じゃ? あいつ…。
あっ… あっつ! あっつ…。
そして 春が来て 峰乃月を東京の博覧会へ出品する日がやって来ました。
(寅松)大奥様 若旦那様 お確かめを。
うん…。 峰乃月。 うちの酒じゃ。
若旦那は ようございますか?あ… うん。
わしは 酒のことは全部親方に任せますき。
ほんなら…。(綾)お待ちください。
綾様…。
この味も 確かめてくださいませんか?
はあ?ちょ… 何しちゅうがや!
新しく仕込んだ 濃い口の酒です。
はっ… なんと!?いや~…。
峰乃月は 峰屋の看板大事なお酒ではございますけんど博覧会で競うやったら一口で忘れられん酒も どうかと。
(ざわめき)
その酒はおまんが言いだして造らせたゆうことか?
いえ! わしが造りました。幸吉は 私に従うただけです。
お願いです。 一口だけ確かめてくださいませんろうか?
あ… 市蔵。はっ…!
う… ほんなら…。(タキ)いかん!
おまんは 峰乃月が まずいということか!?
いいえ 違います! それは違います!ただ…。
そんな さもしい酒 下げなさい!
♪~
幸吉 ごめんなさい。 私のわがままで…。
面白かったですね。
試して 試して…うまい酒が出来たら 面白いですき。
また いつか やりましょう。
いつかゆうて… そう言うてくれるが?
綾様のお気持ち よう分かっちょりますき。
♪~
(幸吉)ずっとお返しすることができませんでした。
♪~
綾様が 今も酒造りをお好きで よかった。
♪~
うおっ!
うっ!あっ! ちょちょ… おい おい 竹雄!
ちょ… 何やりゆうがじゃ!?おい 竹雄!
暑いがです! ほっちょいてください!
若…!
ああ~!竹雄!
そしていよいよ 出発の日が やって来ました。
万太郎 峰屋の酒 気張って広めてきいや。
姉ちゃんの分まで行ってくるき。
竹雄 万太郎を お願いね。はい… 綾様。
くれぐれも体に気を付けて。無事に帰ってきいよ。
はい! 行ってまいります!
若様 行ってらっしゃいまし!(一同)行ってらっしゃいまし!
お気を付けて!ご無理のないように!
竹雄!分かったき!
こうして万太郎にとって初めての東京旅行。
新たな出会いの旅が始まったのです。
ああ~!
海じゃ~!うお~!
竹雄 行くぞ!はい!