「本気の交際」ではなく「ただの客」にじむ後悔

東京地方裁判所

裁判で証言した父親は「子どもの頃からおとなしいタイプで、まさか風俗店で働くなんて思いもしなかった」と驚きを隠せなかった。被告本人は、こう悔やんだ。

【被告人質問】
ーーいま、被害者に恋愛感情は?
ないです。今までの交際は普通ではなかった。
ーーどこが?
お金をたくさん使って、使った分だけ仲良くなれたところ。
ーー被害者とはどんな関係だった?
私の中では本気の交際だったが、ただのお客さんだったのかなと。
ーー嫌だった風俗の仕事も、被害者から勧められたんですよね?
嫌な部分も多くあったが、仕事を理解してくれるのは~さん(被害者)だけだったので感謝している。

裁判員からは、こんな質問も投げかけられた。

ーー被害者からのプレゼントは?
誕生日やクリスマスに、ぬいぐるみやカバンをもらった。
ーー高額なもの?
1000円ぐらい。
ーー釣り合わないと思わなかった?
全部うれしかったです。

執行猶予付き判決「被害者に利用された面も」

迎えた判決の日。傍聴席で家族が見守る中、懲役3年、執行猶予5年、保護観察付きの有罪判決が言い渡された(求刑6年)。裁判長は「生命に対する重大な危険を生じさせた犯行」と非難した。そのうえで「被告がホストクラブの客となることで被害者に利用されていた側面もある」と言及した。

裁判長
「社会の中で責任を果たしてもらうという判断になりました。ただ、どうしてこういうことになったのか、あなた自身深く考えるにいたってないのではないか」

こう諭した女性裁判長は、51歳。22歳の被告とは親子ほど年が離れている。「あなたを支えてくれる家族のことを考えたら、こういうことにならなかったんじゃないかと思います」と語りかけると、被告は深くうなずいた。

(TBSテレビ社会部 司法記者クラブ 高橋史子)