スーパースター国枝慎吾さんの愛車オデッセイは10点満点 引退後は新しいことに挑戦し続けたい。モータースポーツもトライしてみたい!

プロ車いすテニスの世界的プレーヤー、国枝慎吾選手
2月12日、東京青山にあるホンダ・ウエルカムプラザ青山で、車いすテニスの世界的プレーヤーである国枝慎吾選手がトークショー「Joy for Everyone特別展示×国枝選手トークショー」を行なった。国枝選手にクルマ、福祉車両、車いすテニスに関わる想いを訊いた。
PHOTO:生江凪子(NAMAE Naco-Motor-Fan)

国枝慎吾選手の愛車はオデッセイ

登場した瞬間から人を惹きつける何かを感じさせる国枝慎吾選手。多くのファンがいる理由がわかった。

国枝慎吾選手といえば、もう誰でも知っているスポーツ界のレジェンドだ。全豪、全仏、全英、全米の4大大会すべてを制覇(生涯グランドスラム達成)し、パラリンピックでも優勝しているスーパースターである。車いすテニス世界ランク1位のまま1月22日に現役引退を発表した。

国枝慎吾選手とホンダの関係は、国枝さんが18歳で運転免許を取得以来、3台乗り継いでいるオデッセイがきっかけだ。2007年のTBS『情熱大陸』に出演した際に映っていたのが、オデッセイだったそうだ。それが縁でホンダは2010年から国枝選手のスポンサーとなっている。

トークショーには、多くのファンが詰めかけた。40分間ほどのトークは、『国枝節』が随所に散りばめられ、聴衆が元気をもらえる内容だった。

国枝慎吾選手愛用のラケット

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ラケットには、有名なフレーズ「オレは最強だ!リラックス」と書かれたテープが貼られていた。

現役を引退してから変わったことは
「朝起きてから身体のチェックをしなくなりました。現役のときより、よく眠れるようになりましたね。現役時代は大会が迫ってくるとストレスト感じていたし、眠れなかった。そこからは解放されましたね」だという。

頂点を極めた国枝選手も、テニス協会に引退届を提出するときは
「引退届を出すときは震えました。最後の最後で揺れました。(引退届を)出してから自分自身、新しいチェレンジが始まると思いました。さあ新しい一日だって思えるようになりました。これからなにができるのか、自分自身で見つけるという、本当に新しい人生が始まったなという気持ちですね」

会場に展示されたグランドスラムのトロフィー。国枝選手自身がベストゲームを3つ選ぶとすると「2022年ウィンブルドン」「2020年全豪オープン」そして「2021年東京パラリンピック2020」だという。
クルマは必需品。18歳の誕生日直後に免許をとったそうだ。「自分自身で動ける環境がほしかった。電車よりもクルマ、移動の99%がクルマです」(国枝慎吾選手)

「僕自身、なにかにチャレンジいているときが一番楽しい。これからもそうありたいと思っています。とにかく、なんでもやってみることがキャリアを通して学んできたことです」と語る国枝選手。アスリートとしてだけでなく、ひとりの人間として魅力に溢れた人であることがわかる。

引退後は新しいことに挑戦したい。モータースポーツもアリかも

トークショー終了後、国枝選手にインタビューする機会を得た。
MF:引退なさってクルマとの関わり方も変化すると思います。国枝選手は2010年からホンダのスポンサードを受けられていて、オデッセイを3台乗り継いでいらっしゃるということでした。福祉車両、車いすの方が乗るクルマとしては、いまのクルマは「思い通りに動かせるクルマ」になっているのですか? もっとこういうふうに進化してほしいという部分があったら教えてください。
国枝選手:そうですね。今乗っているオデッセイは、本当に10点満点で10点をあげるくらい滅茶苦茶満足していますね。うちのテニスクラブも車いす用の駐車スペースが5台分くらいあるんですが、すごくオデッセイ率が高くて、1回4台オデッセイだったことがあります。5分の4。それくらい車いすユーザーは、オデッセイのスペースだとか、あのサイズにしては乗りやすいんですよ。車いすから運転席へ乗り移りやすいんです。だからオデッセイはかなり人気なんです。なので、ホンダさんに(オデッセイを日本市場で)もう1回復活してほしいなと思ってます。そのくらい評判いいです。

国枝選手のオデッセイは、ホンダ製のテックマチックシステム(手動運転補助装置)ではなく、サードパーティ製を使っている。ホンダ製のテックマチックシステムが搭載されているのは、フィットである。

MF:ホンダさんにフィットだけでなくホンダ製テックマチック付きオデッセイを作ってほしい?
国枝選手:そうですね。作らない理由はないかなと思いますね。やはり好きなクルマに乗って、好きに移動をするというのは、誰もが持っている権利だと思うし、車いすの人にとっては、健常者の方よりもクルマとの関係がすごく近いと思います。そういったところも含めて、自動車が果たせる貢献力ってあると思うので、ぜひぜひお願いしたいですね。

MF:モータースポーツというのがあります。車いすの名レーサーもいらっしゃいます。国枝さんほどの運動神経と筋力があればモータースポーツでも超一流になれそうです。ご興味ありませんか?
国枝選手:本当ですか! いいですね、その提案。本当ですか? 今からでも遅くないですか?
MF:遅くないです。ぜひ、挑戦を!
国枝選手:そう言われるとやってみたくなりますね。いまは何でもやってみたい時期なんですよ。ちょうど3週間前にバスケットボールを始めました。来週はバドミントンをやります。僕は泳げないんですよ。車いすに乗る前はバタフライもやっていたのですが、車いすに乗るようになってから10年以上、二十歳くらいまでずっと泳いでなくて、最初に水深170cmのアメリカのホテルにあるプールに行ったら溺れちゃったんです。それくらい、身体のバランスも健常者のときと違って、上半身は滅茶苦茶重くて下半身軽いんで、プールの中で一回転しちゃったんです。だから結構、水って苦手で、その苦手克服のためにも、旅行先のホテルにプールがあることがあるので、そこで時間を過ごしたいなって思うと、泳ぐって生活にも密接に関わってくるなと思ってきたので、いまちょっと水泳もパラ水泳の人にコーチをお願いするくらいやっています。モータースポーツも、もしかしたらやってみたら気持ちいいかもしれないと思うので、そう言われると興味出てきましたね。

国枝選手:プロテニス選手の間にある程度お金も稼がせていただいて、これからはお金じゃなくて、自分自身もテニスに変わる熱いものが挑戦として必要になってくると思います。それをたとえば、いままでやってきたことにすがりながら生きていくと、どうやっても過去の自分に勝てないんですよ。なので、モータースポーツの話もありましたけれど、新しいことに、それがスポーツじゃないかもしれません。新しいことにチャレンジすることで過去の自分を超えていくこともそれは可能かもしれないし、違うベクトルになるわけなんで、違う挑戦になる。そういうふうな考え方もいいんじゃないかなと。過去にすがりすぎて過去のことを言うよりもそっちの方が面白いと思います。そういう生き方をしていきたいと、いまは考えています。

トークショーのラストでホンダから花束贈呈が。花束のガーベラの花言葉は「限りなき挑戦」だ。国枝選手に相応しい言葉である。

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著者プロフィール

鈴木慎一 近影

鈴木慎一

Motor-Fan.jp 統括編集長神奈川県横須賀市出身 早稲田大学法学部卒業後、出版社に入社。…
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