女優の岡田茉莉子(90)が15日、生誕120年と没後60年を記念した「小津安二郎展」を開催中の神奈川近代文学館でトークイベントに出演した。
岡田は小津作品の「秋日和」(1960年)、「秋刀魚の味」(62年)に出演。また父で無声映画時代のスター俳優だった岡田時彦さん(1934年死去、享年30)が小津監督と親友だったことなどゆかりが深いことから、この日の登壇となった。
親子二代の背景もあり、同監督からは「お嬢さん」「茉莉子さん」と呼ばれていたという。小津氏といえば、徹底したこだわりで演出の注文が厳しいことでも知られた。「“脚本読み”も出演者が読むのではなく、小津さんが全部読んでいた。そして俳優は、その通りに演じなければならなかった。私は意図的にテンポを早めて演じたことがあったが、何もおっしゃらなかった」と回想した。
また、「撮影中、プーンとにおうんですね」と、景気づけに一杯ひっかけてメガホンを執っていたこともあったという秘話を披露。監督の体が心配で「おやめになった方が」と直接伝えると、小津監督が「自分に忠告するのは茉莉子さんくらいだ」と言って苦笑したことなど、岡田ならではの巨匠とのエピソードを懐かしみを込めて語った。
岡田は最愛の夫で映画監督の吉田喜重氏を昨年12月に失った。二人三脚で映画作品を生み出してきた同志でもあっただけに、悲しみは完全には癒えていないが「しのぶ会、百か日法要も終え、少し落ち着きました」といい、「(吉田監督は)小津さんとは撮りたいものは全く違ったけれど、尊敬していたのは間違いないです」とも話していた。