[ニュース断面]
陸上自衛隊のヘリコプターが行方不明になった事故。大きく破損した機体とみられるものや隊員らしき姿が海底で確認された。急な異変で、機体が海面に衝突する大規模な事故だった可能性が高まった。防衛省は捜索救助と事故原因の究明を急ぐ。「防衛力強化」の最前線とする沖縄で、機体の安全性などへの懸念は広がる。(東京報道部・新垣卓也、政経部・大野亨恭、宮古支局・當山学)
「お知らせできる段階ではない」。浜田靖一防衛相は14日朝の記者会見で、機体の主要部分とみられるものや人らしき姿が確認されたとの本紙などの報道を公式には認めず、慎重に確認を進める意向を示した。
防衛省は、安否が分からない幹部を含む10人の救助と機体の捜索に「まずは全力を注ぐ」(同省幹部)との姿勢だ。
一方で大規模な事故を受け、南西防衛強化への影響を憂う声もある。
搭乗していた陸自第8師団(熊本県)の坂本雄一師団長(55)らは、有事や災害派遣を想定した地形偵察のため飛行していたという。自衛隊関係者らは「任務遂行に必要だった」としており、今後も沖縄の島々で同様の地形偵察を繰り返す可能性が高い。
「宮古の住民はもちろん、県民にも不安を与えてしまった」。ある防衛省関係者はこう話し、過重な基地負担を抱える沖縄での世論の行方に気をもむ。
在日米軍施設の約7割が集中する沖縄では米軍機による事故が相次ぎ、そのたびに運用の詳細や事故原因に関する説明を求めるものの、ほとんどが不十分で米側の対応に不満を募らせることが多い。
米軍と同じ轍(てつ)を踏まぬよう、政府関係者は「県民の信頼を回復し、自衛隊への理解を得るには、できる限り説明を尽くすしかない」と強調。「そのためには、隊員の救助と機体の引き揚げを急がなければならない」と話す。
■「人命最優先の中で軽々と批判はできない」
「防衛省に何を求めるのかは、事故が解明されてから検討すべきだろう」。玉城デニー知事は14日の定例会見で、政府に再発防止などを求めるか問われ、言葉を選んだ。
県は従来、軍用機の事故などの際には地域住民の安全に配慮し、速やかに再発防止などを求めてきた。
今回は「10人もの隊員が安否不明。人数の問題ではないが、人命最優先の中で軽々と批判はできない」(県幹部)と硬い表情を浮かべる。
県首脳の一人は「徹底した説明がなければ、南西諸島での活動継続は困難だと自衛隊自身が感じていてほしい」と望んだ。
宮古島市役所に勤める50代男性は「もし陸地に墜落していたら、大変な事態になっていた」と不安そうに言い、こう要望する。
「なぜ事故が起きたのか、本当に機体は安全なのか、住民に説明する必要がある」