細かい文法を知らなくても、日本語の読み書きはある程度できます。しかし、ビジネスメールや正式な書類を書く際は、日本語の文法の正しい理解が必要です。
このコラムでは、きれいな日本語の文章を書きたい方に向けて、「段落」「文節」などの「言葉の単位」や「主語」「述語」といった「文の成分」を解説。「名詞」「動詞」などの品詞や敬語の種類についてもまとめています。
目次
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日本語の文法とはどのようなもの?
日本語の文法とは、文章を構成するうえでの決まりや書き方のことです。文法に誤りがあると、受け取り手に違和感を与えたり、意図が正しく伝わらなかったりと、さまざまな不都合が生じます。
たとえば、あなたが「もうご飯を食べましたか」と誰かに質問したとします。もしも「まだ食べませんでした」と答えが返ってきたら、相手の意図は汲み取れるものの、正しく会話が成立しているか不安になるのではないでしょうか。
このように文法に誤りがあると、相手に意図している内容が伝わりにくくなります。ちなみに、文法的に正しい回答例には「まだ食べていません」「これから食べます」などがあります。
もちろん、細かい決まりを覚えていなくても、日本語の読み書きや会話は可能です。しかし、ビジネスシーンでのやりとりや公的な書類の提出は、正確な日本語を求められます。
また、正しい日本語を使えた方が、自分の意見や気持ちを正確に伝えられるようになり、より円滑なコミュニケーションが可能になるでしょう。
基本的な日本語の文法
日本語の文法を身に付けるには、「言葉の単位」や「文の成分」などの正しい理解が必要です。以下では、日本語の文法の基本を解説します。
言葉の単位【文章・段落・文・文節・単語】
日本語は、大きい順に「文章」「段落」「文」「文節」「単語」の5つの単位で構成されています。それぞれの「言葉の単位」の定義は、以下のとおりです。
-
文章:言葉のまとまり全体(小説、記事など)
-
段落:長い文章を内容ごとに区切ってできたまとまり
-
文:句点から句点までのまとまった内容の文字列
-
文節:言葉の意味が通るように文を区切ってできたまとまり
-
単語:意味を持つ言葉の最小単位
中でも「文節」は、日本語を正しく理解する際に重要な言葉の単位です。「文節」ごとに区切る際は、文の終わりに付けて感嘆や強調などの意味を添える「ね」を入れても違和感がない箇所で区切ります。
「毎日、僕は朝早く起きて学校へ行きます。」→「毎日(ね)、/僕は(ね)/朝早く(ね)/起きて(ね)/学校へ(ね)/行きます(ね)。」
区切り符号【。、など】
区切り符号とは、文を見やすくするために付ける記号のことです。適切な位置に区切り符号を付けなければ、読みにくかったり文の意味が変わってしまったりします。日本語の主な区切り符号は、以下のとおりです。
区切り符号の名称 |
区切り符号 |
意味や役割 |
句点(くてん) |
。 |
文の最後に付ける |
読点(とうてん) |
、 |
文中の意味が切れる箇所に付ける |
かっこ |
() |
特定の文字列を囲ってほかと区別させる |
中点(なかてん) |
・ |
同種の内容を並べる際に使う |
3点リーダー |
… |
文頭や文末に付けて余韻を表現したり単体で沈黙を表したりする |
感嘆符 |
! |
感動を表現したいときに文末に付ける |
疑問符 |
? |
疑問を表したいときに文末に付ける |
句点と読点は、2つあわせて句読点(くとうてん)とよくいわれます。
文の成分【主語・述語・修飾語・接続語・独立語】
「文の成分」とは文節を役割によって区別した名称の総称で、「主語」「述語」「修飾語」「接続語」「独立語」があります。5つの「文の成分」の役割は、以下のとおりです。
-
主語:「誰が」「何が」を表す文節
-
述語:「どうする」「どんなだ」など、主語を説明する文節
-
修飾語:ほかの文節の内容を説明する文節
-
接続語:「また」「しかし」「~だから」など、前後の文を繋ぐ文節
-
独立語:ほかの文節と関係がなく独立しており、「ええ」「あら」といった感動や驚きなどを表現する文節
文の成分の順番は、「主語」のあとに「述語」がくるのが一般的です。「修飾語」は詳しく説明したい文節の前に、「接続語」は繋ぎたい文や文節の間に置かれます。「独立語」は文の最初、もしくは最後にくる場合がほとんどです。
各文の成分が複数の文節でできているときは、それぞれ「主部」「述部」「修飾部」「接続部」「独立部」と表します。
たとえば、「赤い風船が飛んでいた」という文章は、「赤い」と「風船が」の2つの文節からなる「赤い風船が」が「主部」です。「飛んでいた」は、「飛んで」と「いた」の2つの文節で構成されているため、「飛んでいた」が「述部」になります。
品詞【名詞・副詞・接続詞・連体詞・動詞など】
品詞とは、単語が持つ役割を分類ごとに分けたものです。
日本語の文法には、「名詞」「副詞」「接続詞」「連体詞」「感動詞」「動詞」「形容詞」「形容動詞」「助詞」「助動詞」の10種類の品詞があります。
品詞の分類を考える際は、文を単語ごとに分けてその単語だけで意味が通じるかどうかを判断しましょう。一つの単語だけで意味が通じるものを「自立語」、一つの単語では意味が通じないものを「付属語」といいます。
たとえば、「私」や「明日」は一つの単語だけで意味が通じるため「自立語」です。
一方、「が」や「で」はほかの単語と繋げないと意味が通じないため、「付属語」に分類されます。
「自立語」と「付属語」は、前後の単語によって形が変わる「活用」の有無によって、さらに分けられます。たとえば、「教える」は「ない」の前に来ると「教えない」、「て」の前に来ると「教えて」に変化するのです。
品詞を「自立語」と「付属語」、「活用の有無」でまとめると、以下に分類できます。
【自立語(活用がないもの)】
-
名詞:「私」「車」など名称を表す品詞
-
副詞:「よく」「しっかり」など、ほかの言葉の意味を説明する品詞
-
接続詞:「また」「しかし」など前後の文を繋ぐ品詞(単独で接続語として使われる)
-
連体詞:「この」「大きな」など名詞の詳細を説明する品詞
-
感動詞:「さあ」「あら」など呼びかけや感動、応答を表す品詞
【自立語(活用があるもの)】
- 動詞:「食べる」「歩く」など、動作や状態を表す品詞(う段で終わる)
- 形容詞:「美しい」「美味しい」など、物事の状態を表す品詞(言い切る場合に「い」で終わる)
- 形容動詞:「安全だ」「きれいだ」など、物事の状態を表す品詞(言い切る場合に「だ」で終わる)
【付属語(活用がないもの)】
- 助詞:「に」「で」など名詞に付属して、主語や述語を補う補語になる品詞
【付属語(活用があるもの)】
- 助動詞:「れる」「ない」など、名詞や動詞、形容詞に付属して意味を添える品詞
品詞の一部は、主語と述語のどちらになるかで「体言」と「用言」に区別されます。「体言」は主語になれる「名詞」のこと、「用言」は述語になれる「動詞」「形容詞」「形容動詞」のことです。
敬語【尊敬語・謙譲語・丁寧語】
日本語の敬語には、「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」があります。
「尊敬語」と、目上の人に対して尊敬を表す敬語です。
「謙譲語」は、自分自身を下げて相手への敬意を表す敬語を指します。
「丁寧語」は、「です」「ます」など日常的な場面で使う機会が多い敬語です。
同じ言葉でも、「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」のどれを使うかによって表現が異なります。たとえば、「言う」「食べる」を3つの敬語表現で言い換えた場合は、以下のとおりです。
・「言う」
尊敬語:おっしゃる、言われる、仰せになる
謙譲語:申す、申し上げる
丁寧語:言います
・「食べる」
尊敬語:召し上がる、お食べになる、食べられる
謙譲語:いただく、頂戴する
丁寧語:食べます
日本のビジネスシーンでは、立場によって敬語表現を使い分ける必要があります。どの敬語表現を使うべきか迷ったときは、主語が誰であるかを考えると判断しやすいでしょう。
文の種類と特徴【意味上の文・構造上の文】
文の意味や構造の違いを表す言葉が、「意味上の文」と「構造上の文」です。
「意味上の文」の種類には、「疑問文」「命令文」「感動文」「平叙文(へいじょぶん)」、「構造上の文」の種類には「単文」「重文」「複文」があります。
【意味上の文】
- 疑問文:「今日は何をしますか」「好きな色は何ですか」などの疑問を述べる文(文末が「か」で終わる)
- 命令文:「早く支度してください」「静かにしなさい」など、命令や禁止の意味を表す文
- 感動文:「あら、きれいな花が咲いている」「なんて面白いのだろう」など、感動を表す文
- 平叙文:「私はこの学校の卒業生だ」「明日は雨が降る」など、断定や推量を表す文
文の意味や内容を理解できれば、「疑問文」「命令文」「感動文」「平叙文」のどれに該当するかの区別は簡単でしょう。
【構造上の文】
- 単文:「私は飛行機に乗ります」「明日は晴れます」など、主語と述語が一つだけ使われている文
- 重文:「見た目が良く、性格も良い」「母は看護師で、父は医者だ」など、対等な関係の単文が並んでいる文
- 複文:「明日は雨なので、遠足は中止です」「体調が悪いので、学校を休みます」など、原因と結果といった対等でない関係の単文が並んでいる文
「重文」と「複文」は、前後の文を入れ替えても意味が通じるかどうかで判断できます。意味が通じる場合は「重文」、意味が通じない場合は「複文」です。
「日本語の文法は難しい!?外国人に教えるときに知っておきたいポイントを紹介」や「日本語の特徴とは?文法や漢字など言語学習において難しいポイントを解説」では、日本語の習得が難しい理由を、言語的特徴を踏まえて解説しています。
動詞に関する日本語の文法
自然な日本語の文章を書くためには、動詞に関する文法も知っておく必要があります。動詞の活用・他動詞と自動詞の違い・時制の表現方法は、以下のとおりです。
動詞の活用
動詞は、あとに続く言葉や文の意味によって「未然形」「連用形」「終止形」「連体形」「仮定形」「命令形」の6つの形に変化する品詞です。以下では、「書く」を例に6つの活用形と動詞に続く言葉・区切り符号、活用後の言葉を説明します。
活用形 |
活用形の意味や役割 |
活用後 |
動詞に続く言葉・区切り符号 |
---|---|---|---|
未然形 |
打ち消しやまだ起こっていない内容を表す際に使う活用形 |
書か 書こ |
「ない」「う(よう)」など |
連用形 |
用言や助動詞に続く際の活用形 |
書き |
「ます」「た」 |
終止形 |
文が終わるときや言い切る際に使われる活用形 |
書く |
「。」 |
連体形 |
名詞に続くときの活用形 |
書く |
「とき」「こと」など |
仮定形 |
条件を仮定するときの活用形 |
書け |
「ば」 |
命令形 |
命令の意味で文を終わらせるときに使う活用形 |
書け |
「。」 |
「終止形」と「命令形」は、どちらもあとに句点が付くのは同様ですが、文の意味により活用形を使い分けます。
他動詞と自動詞の違い
動詞は「自動詞」と「他動詞」に分けられます。「自動詞」は動作の対象や目的となる「目的語」が必要なく、「他動詞」は「目的語」が必要です。以下では、「自動詞」と「他動詞」を使った例文を紹介します。
【自動詞】
- 窓が開いた。
- 彼は笑った。
- 私は遊んだ。
【他動詞】
- 私はご飯を食べた。
- 彼女は扉を閉めた。
- 彼はえんぴつを落とした。
「自動詞」と「他動詞」の区別がついていないと、正確な意味が伝わりません。
たとえば、「落ちる」は自動詞で、「落とす」は他動詞です。男性がえんぴつを落とした様子を表現する際に、「自動詞」を使って「彼はえんぴつを落ちた」というのは間違っています。この場合は、「他動詞」を使い、「彼はえんぴつを落とした」とするのが正しい表現です。
時制の表現方法
日本語の時制には、「現在形」と「過去形」の2つの形があります。「現在形」は、現在と未来を表現する際に使われる時制です。対して、「過去形」は以前に合った内容を表す際に使われます。「現在形」と「過去形」の例文は以下のとおりです。
【現在形】
- 今、職場にいる。
- これから家に帰る。
- 明日、遊園地に行く。
【過去形】
- 昨日は学校にいった。
- もう家に帰った。
- たくさん勉強した。
「現在形」で「今から」「これから」「明日」などの言葉が使われている場合は、未来の内容を表しています。
改めてチェックしておきたい日本語の文法
日本語は、真逆の意味で使われる言葉や意味が似ており使い分けが難しい単語が存在する言語です。以下では、疑問になりやすい日本語の文法について解説します。
「すぎる」の使い方
「すぎる」はプラスの意味でもマイナスの意味でも使われるため、意味を捉えるのが難しいと感じるときもあるでしょう。
プラスの意味で使われている例文は、「美味しすぎる」や「楽しすぎる」などです。一方、「常識がなさすぎる」や「テストの点数が悪すぎる」などは、マイナスの意味で使われています。
「すぎる」は、良くも悪くも普通以上であることを伝えたいときに使いましょう。
「こと」と「の」の使い分け
「こと」と「の」は同じ意味があり、言い換えられる場合がある言葉です。「歩くことは健康に良いでしょう」は、「歩くのは健康に良いでしょう」と言い換えられます。
ただし、「です」や「だ」の前だと「の」が使えません。
たとえば、「私の趣味は泳ぐことです」という文で「こと」を「の」に変えると、「私の趣味は泳ぐのです」となります。この場合は意味が通じないため、「の」に言い換えられません。
「ことがある」「ことはない」などの経験を表す文も、「の」は使えません。「約束する」「決める」などがあとに続く文の場合も、「の」に言い換えられないので注意しましょう。
対して、「聞こえる」や「見える」などの知覚動詞の前に「こと」は使えません。例文としては、「友達が歌っているのが聞こえる」「彼が手を振っているのが見える」などが挙げられます。
「こと」と「の」は、条件によって言い換えられない場合があると覚えておきましょう。
「くらい」と「ほど」の違い
「くらい」と「ほど」は、どちらも大体の程度を表すときに使います。例文として挙げられるのは、「1時間くらい本を読んだ」「動けないほど疲れた」などです。言葉の意味はほとんど同じですが、より程度が高いときは「ほど」を使う場合が多いでしょう。
なお、「くらい」は最低限の状態・様子を表すときにも使えます。たとえば、「それくらい大丈夫でしょ」「お礼くらい言いなさい」などです。このような場合は、「くらい」を「ほど」に言い換えられません。
具体的な例文は「外国人が難しいと感じる日本語の例文を紹介!理解できるか挑戦してみよう!」でご紹介しています。
日本語の文法を理解するには
日本語の文法を学ぶには、日本の映画や本など、興味のあるものに触れると良いでしょう。ここでは、日本語の文法を学ぶ方法を3つ紹介します。
1.本やWebサイトの文章を読む
日本語の文法を学ぶには、本やWebサイトの文章を読むと良いでしょう。
出版されている本や大手メディアのWebサイトは、プロが編集しているものです。そのため、正しい日本語の文法を身に付けるのに適しているといえます。
また、小説は独特な言い回しが多く使われているので、正しい文法に加えて新たな表現を学べるでしょう。
2.日本の映画やドラマを観る
日本の映画やドラマを観るのも、日本語の文法を学ぶ方法の一つです。
日本の映画やドラマでは、日常的な場面で使う自然な会話を学ぶことができます。字幕や吹き替えを選べば、目と耳の両方で日本語を勉強できるのもメリットです。
また、最新の映画やドラマは、その作品が作られているときに流行っている言葉が使われます。そのため、日本の映画やドラマを観ると、若者言葉やSNSで流行っている言葉など、新しく生まれた単語を学ぶことも可能です。
3.分からない単語や文章を辞書で調べる
日本語の文法を学ぶ際は、辞書を用意しておくのがおすすめです。
本やWebサイトを読んでいる途中で、分からない単語や文章が出てくる場合があるでしょう。辞書で調べる習慣を付けると、疑問点を曖昧なままにせず解決できるため効率良く学べます。
また、一度調べた単語は記憶に残りやすいこともメリットです。
効率の良い勉強方法については「日本語を効率良く勉強する方法とは?外国人に向けて解説」もご参考ください。
まとめ
日本語の文法とは、文章を構成するうえでの決まりや書き方のことです。正しい日本語の文法を使うには、ことばの単位や文節、品詞を理解する必要があります。
日本のドラマや映画を見たり、本やWebサイトを読んだりするなかで、楽しく日本語の文法を学べるでしょう。