【独自】公園に「ありがとう」、感謝の模造紙を掲げられず 封じられた児童の気持ち 青木島遊園地問題
■長野市社協の指導主事「押し付け」と制限
「子どもの声がうるさい」といった一部住民の苦情をきっかけに、長野市が4月末まででの廃止を決めた同市青木島町大塚の公園「青木島遊園地」を巡り、利用してきた隣の児童センターの子どもたちが14日、公園への感謝を示す模造紙を掲げて記念撮影しようとしたところ、センターを管理する市社会福祉協議会が「子どもへの押し付けだ」として模造紙掲示を一方的に制限した。模造紙に書いていたのは「だいすき」といった感謝の気持ち。それを伝えようとしたのを阻み、子どもの権利を侵害したことに識者から厳しい批判が出ている。
児童センターの子どもたちは、荻原健司市長が公園の存廃の再検討を表明した後の2月下旬から利用を再開。新たな苦情が来ないよう、一度に遊ぶ人数を10~20人、遊ぶ時間を20分~1時間に抑えるなど工夫もしてきた。
最終的に公園の廃止を決めた市が今月17日に原状回復工事を始めるため、子どもたちが公園を利用できるのは14日が最後だった。小学1、2年の約80人は、公園への感謝を書いた模造紙を掲げて記念写真を撮る予定だった。
■理由「答える義務はない」
センターにはこの日、職員不足を補うため、市社協から2人が応援に来ていた。子どもたちは全員で公園に出て、模造紙を掲げて写真を撮ろうとしたところ、市社協の指導主事が、全ての子どもがそう思っているわけではない―などとし、模造紙掲示を制限。本紙「声のチカラ」(コエチカ)取材班がその場で指導主事に理由などを尋ねたが「答える義務はない」とした。
メッセージは「ずっとわすれない あおきじま♡ゆうえんち だいすき♡ ありがとう♡」が全文。センター職員が事前に、以前にセンターを利用していた小中学生と相談して内容を考え、赤い模造紙に白い絵の具で手書きして用意したものだった。
模造紙掲示なしの記念撮影を終えた後、子どもたちは職員に詰め寄り「なんで(模造紙を)出せなかったの?」「出したかったのに」などと尋ねた。職員は理由をはっきり説明できずに「約束したのにごめんね」と繰り返し、「残念だ」と肩を落とした。
取材班は14日、指導主事の対応についての説明を市社協に求めたが、庭山透事務局長兼総務課長は「現時点では事実確認が取れていない」とだけコメントした。
◆
■「子どもの表現の自由を侵害」 専門家ら厳しく批判
公園の利用主体だった児童センターの子どもたちが感謝を書いた模造紙を掲示するのを長野市社会福祉協議会が制限したことについて、東京未来大の大西斎・元教授(憲法学・教育法)は「子どもの表現の自由に対する明らかな侵害だ」と厳しく批判している。
大西氏は「感謝を述べる行為自体は社会通念上、意見の対立につながるものではなく、何ら押し付けには当たらない」と指摘。「このような行為が許されれば、何も意思表現ができない社会になってしまう」としている。
一方、立教大の渋谷秀樹名誉教授(憲法学)も「感謝の気持ちは特定の思想とは関係ない。(模造紙の掲示は)特定の思想や価値観を押し付ける行為ではなく何ら問題ない」と指摘。「感謝の気持ちを有している人の思いを踏みにじる行為であり、許されるものではない」と市社協の対応を批判した。
子どもの権利に詳しい浦和大の林大介准教授は「明らかな権利侵害。謝罪すれば済む話ではない」と批判。「社協は日頃、権利を擁護する立場にあり、権利侵害に敏感であるべき組織。一職員の資質の問題なのか、組織風土の問題なのか、厳しく追及する必要がある」と指摘した。
◆
【関連記事】
■廃止理由、子どもに説明なし 青木島遊園地の原状回復工事、17日から開始