(5)体重が増えない赤ちゃんの発育、どう評価する?
一般的に、母乳で育つ赤ちゃんは
ミルクの子より少し体重増加がゆっくりめであることが
知られています。(もちろん例外もありますよ!)
なので、
『パーセンタイル曲線』の
真ん中(中央値)からかなり外れていたとしても
それだけで栄養不足だとか母乳不足だとかは
判断できません。
早産児の成長や発達は、出生予定日の基準に
修正月齢で評価することが原則ですが、
保健センターでの体重評価は、
それさえも考慮されていないことが多い印象があります。
体重評価をするのに必ず必要な
基本中の基本の知識が抜け落ちていて、
体重増加不良もなにも
あったもんじゃありませんね。
また、
早産児じゃなくても
低体重出生児じゃなくても、
出生体重によって
赤ちゃんのその後の体重増加度の傾向が
微妙に異なることをご存知でしょうか。
すべての赤ちゃんを
同じものさしに当てはめても
それだけでは何の評価もできないのです。
例えば
2000g~2500gで生まれた健康な赤ちゃんは
生後2週間頃から生後2ヶ月頃まで
ハイペースで体重が増え続けることが多いです。
それに比べ
2500g以上で生まれた赤ちゃんは
生後2週間頃に加速的に体重が増えますが
生後1ヶ月を過ぎるころから増加速度がゆっくりに
落ち着いてくる傾向があります。
つまり、彼らは、2000~2500gの赤ちゃんほど
成長加速が長続きしないんですよね。
さらには
急激に体重が増える時期、その度合いは
実際にはかなり個人差が大きく
赤ちゃんによってバラバラであることも
珍しくありません。
定期的に、急激に体重増加する時期があり、
その時期が落ち着くと、再び体重増加度は
緩やかになります。
体重は直線で伸びていくのではなく
階段状に伸びていくこともあるのです。
加速的に体重が増える前には
さっぱり体重が増えず横ばいの時期が
しばらく続いたりしますが、
これは多くの赤ちゃんに起こる自然な現象であり、
決して母乳不足が原因ではないのです。
でも、たまたま、
横ばいに落ち着いているタイミングで
運悪く体重増加度の評価が行われたら
どうなるでしょうか・・・。
「たいへん!
体重ほとんど増えてない!」
「ちゃんと飲ませてるの?」
まるでママが育児放棄しているような言い方や
この子の成長は大問題だというような
不適切な判断をされ
無駄にミルク補足を促されてしまうことも
あります。
今日、来院された直樹くん(4ヶ月)も
3ヶ月健診でママは
ボロクソに言われました。
身長、頭囲、発達、顔色、肌のつや、
どれをとっても健康!
おっぱいは溢れるように出ています。
体重以外のさまざまな材料を
引っぱり出して適正に判断したら
「成長加速現象のちょうど休眠時期だね」
ってことぐらいすぐにわかるはずです。
そもそも、彼は発育曲線に当てはめたら
「低体重」ではありません。
保健師さん
ここ1ヶ月の体重推移だけを見て
「この1ヶ月、何をしてたの?」
「ちゃんと赤ちゃん見とかな!」
そして、
指導は、
「ミルクを足して来月もう一度測りにきてください」
でした。
・・・え。
「ミルクを足す」って
ずいぶんアバウトな指導ではないですか?
どれだけ足すの?
いつ足すの?
体重増えてないことをさんざん問題視し、
ママが今まで一生懸命やってきたことを全否定して、
「ミルクを足せ」というなら具体的に
『今日現在の直樹くんの状態は〜です。
その理由は○○だと推測されます。
それゆえに、1日何回、どのような場面で何ccのミルクを
足して様子をみて、1ヶ月後に再びアセスメントします』
ここまで継続的に
具体的指導ができてこそ、指導なのですよ。
そして指導したからには
しっぱなしではなく
医学的根拠も基づき、
責任を持って最後まで結果を評価し、
さらに具体策を修正する柔軟性のあるスキル。
集団健診、本来は
こうでなくちゃいかんのだー!!
ママをけなして、
雑で抽象的な指導(いや、これは指導と言わないな)を
するのは、ただのいじめですよ。
直樹くんママは
「この1ヶ月何してたの?」の一言に
涙をこらえるだけで精一杯だったそうです。
(ほんとすごいこと言うよね・・・)
乳幼児の発育評価、保健指導、
栄養指導の基本といえるのは
昭和35年度
乳幼児発育調査結果をとりまとめた報告において
国立公衆衛生病院が述べたものです。
以下、ずいぶん昔の見解ではありますが、
現代の視点からみても基本だと言われている
素晴らしい内容なので
引用して紹介したいと思います。
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健全な発育ということは、
単に早く大きくなったとか、
体重だけが重いということだけではない。
身体と、それにともなった
心の発達が総合的に評価され
子どものからだ全体としてみなければわからない。
身体の発育、心の発達と、さらに
心身に異常がなく、疾病もないということであり
恵まれや環境で育っている状態でなければならない。
発育は、心身の成熟への動きであって
乳幼児のただ1回の検査だけでは
真の発育状態のよしあしは判定できない。
生まれてから大人になるまで、
あるいは早く、あるいはゆっくりと
波はあっても着実に向上していく姿が
発育の大切なひとつの要素である。
したがって、
発育していく過程がどのようであるかを
よく見なければならない。
発育のしかたには個人差がある。
生まれたときの体重でも、
遺伝や在胎期の状態など
いろいろな原因によって千差万別である。
さらにその後の発育は、
個体のみならず、
育児環境によって大きな影響を受ける。
生まれつき小さいものもあり、
大きいものもある。
また、早く大きくなるもの、遅いもの、
肥ったもの、やせているものなど
いろいろな形になる。
しかし、どのような体型、
どのような発育の仕方が理想なのか
ということは決められない。
小さいから劣っている、
大きいから優れているということも
簡単に決めてしまうことはできない。
健康に育つということは、
それぞれのもって生まれた生きる力が妨げられることなく
存分に発揮できる恵まれた環境であって
はじめて実現されるもので、
ただ一時的な見かけや、
一部分の観察だけでは正しい評価はできない
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