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「自分は誰か」公的に証明…世界でも珍しい、家族単位の仕組み「戸籍」

読売新聞 / 2023年4月12日 5時0分

 [New門]は、旬のニュースを記者が解き明かすコーナーです。今回のテーマは「戸籍」。

 愛したはずの夫は、まったくの別人でした――。3月10日に授賞式が行われた第46回日本アカデミー賞で、作品賞を含む8冠に輝いた映画「ある男」は、戸籍を偽っていた男性が何者だったかを探るヒューマンミステリーだ。自分が誰かを示すことのできる戸籍。家族に対する価値観が変わりつつある近年、そのあり方を問う裁判も起きている。

家族単位の仕組み 世界でも珍しい

 「大祐じゃないです」

 夫の大祐を不慮の事故で亡くした里枝は、法要に訪れた義兄から、遺影の男は弟ではないと断言される。

 作家の平野啓一郎さんの小説を原作とする「ある男」では、戸籍を偽り、他人になりすました夫の謎が描かれている。

 戸籍は、その人がいつどこで生まれ、誰と結婚し、いつ死亡したかといった情報を記した公の記録だ。たとえば結婚した夫婦が夫の氏を選び、長男、長女をもうけた場合、夫を筆頭者とする戸籍に妻と子2人の情報が記される。長女が結婚すると新しい夫婦の戸籍を作るため、長女は元の戸籍から除籍される。

 法務省によると、欧米などにも個人情報を登録する仕組みはあるが、個人単位が一般的だ。家族単位を基本とする日本のような制度は世界でもまれだという。

 戸籍の事務処理は2020年に各自治体の電子化が完了するまで、紙で行われていた。離婚した人を「バツイチ」などと呼ぶのは、離婚で除籍された人の名前に「×」と書いていた紙時代の名残とされる。

最初は飛鳥時代 徴税や徴兵に使用

 戸籍の歴史は古い。

 最初の全国的な戸籍とされるのは、飛鳥時代の670年にできた「 庚午年籍 こうごねんじゃく」。岡山大の今津勝紀教授(日本古代史)によると、この時期には親族など20人程度で一つの戸籍が作成されていたと推定される。女性よりも、男性の方が実態を反映した記載になっていたようで、徴税や徴兵のために用いられていたと考えられているという。

 明治期にできた近代的な戸籍にも同様の目的があったと複数の専門家は指摘する。当時の戸籍は家族を統率する「戸主」を軸に作られていたが、戦後、個人の権利や男女の平等を重んじる新憲法の下で見直され、身元などを証明する機能が残った。

 戸籍には基本的に家族の情報も載るため、結婚などの場面で「悩みの種」になることもあったようだ。<前妻とは離婚したと言っていたのに、戸籍上離婚となっていなかった>。1960年代の本紙の「人生案内」には、こんな相談が寄せられた。

 ただ、これは戸籍が原則公開だったから。2007年の戸籍法改正で取得時の身元確認が厳格化され、第三者による取得は基本的にできなくなった。

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