物を捨てれば家の中は片づくとはわかっていても、捨てられないものだってあります(写真:HIME&HINA/PIXTA)

著書累計65万部超の、幸せ住空間セラピストの古堅純子さん。5000軒以上のお宅を訪問してはさまざまな家を片づけ、「古堅式」メソッドを確立した同氏によると、「片付け=物を捨てる」ことでないといいます。本稿では、同氏の著書『物に囲まれてすっきり暮らす』より、物を捨てなくても家を片付けられる、「新しい片付け方」をご紹介します。

片づけられない人が悪いのではない

物を捨てれば、家の中は片づく。そんなことは誰でもわかります。でも、捨てられない。手放せない。家族が物をため込んでしまう。事情はいろいろありますが、生きていれば生きている年月分だけ、物はたまってしまいます。だから、みんな悩んでいる。だったら捨てなくていい。これが私の結論です。

私はこれまで、20年以上にわたって5000軒以上のお宅を訪問してきました。その多くが、物を捨てられずに困っているお宅でした。なかには、何年にもわたって物を整理し、仕分けし、時には身を切るような思いをして物を処分し、収納してきても、まだ家が片づかない方もいました。頑張って片づけてきた彼女たち、彼らたちの努力に頭が下がる思いです。だから、私は声を大にして言わせていただきたいのです。

片づけられないあなたが悪いのではない。片づけ方を変えればいい。物を捨てなくても片づきます。捨てられなくても、片づいた空間で暮らせます。今までの片づけの常識や思い込みを捨て、これまでやっていた片づけではない、新しい片づけを目指していただきたいのです。そこでここでは部屋を片付けるための5つのステップをご紹介します。

① 部屋のコンセプトを決める

まず「部屋のコンセプト」を決めましょう。「どんな暮らしをしたいのか」「この部屋で何をしたいのか」ビジョンをはっきりさせるということです。

「片づけたいんです」「部屋をきれいにしたいんです」というのはビジョンではありません。片づけたあと、どんな暮らしがしたいのか。きれいになった部屋でどんなことがしたいのか、そこが明確でないと、実はリバウンドしやすいのです。

② 物を寄せて更地にする

とはいっても、長らく物に埋もれて生活してきた人は、その状況に慣れてしまって、もはやどんな暮らしをしたいのか、思い浮かばない人もいます。「あなたはどうしたいの?」と聞いても、なかなかはっきりした答えがない。そういう人でも大丈夫です。ビジョンが思い浮かばない場合でも、とりあえず物をどこかに寄せてください。

そして、部屋を「更地」にするのです。「更地」というのも聞き慣れない言葉ですが、要するに物のない状態にするということです。「更地」にすれば部屋の「景色」が変わります。

景色が変わると不思議なことが起こる

③ 景色を変える

実はこの「景色」がとても重要です。「景色」が変わると、不思議なことが起こります。人の心が動くのです。物だらけの部屋から物がなくなってすっきりし、「更地」の「景色」が現れると、とたんに夢が広がり始めます。

みなさんは引っ越しや新しい家を選ぶときの内覧で、何もない部屋を見たことがあるでしょう。そのとき、ワクワクした気持ちになりませんでしたか。「この部屋をこうしよう」「本当はこんな部屋にしたかったんだ」。今まで忘れていたり、あきらめていた理想の部屋や暮らしへの思いが湧き上がってくるのです。

私の経験からしても、100人いたら100人が例外なく「更地」の「景色」に感動し、喜び、前向きになります。心が動くと、行動が変わります。行動が変われば暮らしも変わります。暮らしが変われば、人生も変わるのです。

④ 仕組みを考えて収納する

「更地」をつくり、「景色」が変わったら、そこにどんな新しい「景色」をつくり出すのかを考えてみましょう。ゼロから発想するのです。

ここで最初の「部屋のコンセプト」が必要になります。「こんな部屋にしたい」「こんな用途に使いたい」というビジョンにもとづき、部屋に置く物やレイアウトを考えます。最初にコンセプトがなくても、「景色」が変わった段階で、「この部屋はこうしたい」と決めてもけっこうです。そのコンセプトにもとづいて、必要な物を配置していきます。

⑤ 寄せた物を埋める

「寄せた物」はどうするのか。疑問に思っている方もいるでしょう。「寄せた物」は視界から消す、つまり「埋める」のです。「その場所がないから片づかないんじゃないか」「埋める場所があるくらいなら、最初から散らかっていないだろ」とツッコミを入れる方もたくさんいるでしょう。

まさにそのとおり。物を寄せたら、寄せた物を置く場所が必要です。場所を確保するにはいくつか方法があります。

・物置部屋をひとつつくる
割り切って、ひと部屋、物置部屋にするのが一番簡単な方法です。

・収納の中に入れる
物だらけの家も、収納の中は意外にスカスカだったり、余裕があることがあります。その場合は収納の中に埋めます。

・収納がパンパンだったら掘る
収納がパンパンで入らないときは、少し面倒ですが、収納の中の物を出して、整理します。これを私は「掘る」と言っています。たいていは少し掘ればスペースがあきます。そこに埋めていきます。

・その他
それでも入らないときは家具の後ろにすき間をつくって埋めたり、白い箱に詰めて積み上げることもあります。

とにかく「更地」までこぎつける


まずは、難しく考えず、物を寄せて更地をつくるまで頑張ってみてください。寄せた物の行く末はあとで考えるとして、とにかく更地までこぎつける。そうすれば何かが動き出します。ひと部屋を更地にするのが無理なら、局地的でもかまいません。

せめてテーブルの上だけは更地にするとか、ソファーの上だけは物を置かないとか。更地がひとつできると、見えてくる景色が変わります。景色が変われば、心が動きます。そこからすべてがスタートします。新しい生活が始まるきっかけがつかめるのです。

(古堅 純子 : 幸せ住空間セラピスト)