Softbank光のIPv6高速ハイブリットをヤマハ製ルーターRTX1200と組み合わせて、RTXの高度なファイアーウォールやルーティング機能を生かしつつ、IPv4 over IPv6の高速な下り速度を活用するセットアップです。IPv6高速ハイブリッドでは任意のIPv4ポートの転送設定ができるため、全てのIPv4通信をIPv6トンネル経由で行うことが可能です。
概要
IPv4 over IPv6とは
IPv4パケットをIPv6で転送する方式です。主なメリットとしては、IPv4アドレス枯渇問題の解決の他に、混雑時の通信速度の大幅な改善にあります。これは技術そのものによる利点ではありませんが、現状、NTTのフレッツ構内にあるPPPoE設備が、通信速度の大きなボトルネックとなっているため、IPv6のIPoE接続を用いてプロバイダに直接接続することで、速度の改善が見込めます。
IPv6高速ハイブリットについて
ソフトバンク光がBBIX社と協力して提供している、IPv4 over IPv6接続サービスです。トンネリング方式としては、MAP-EでもDS-Liteでもない独自形式のため、利用には専用の光BBユニット(E-WMTA2.2もしくはE-WMTA2.3、両者の違いは5GHz帯サポートの有無のみ)の使用が前提となります。他社製サービスと異なり、(2018年2月現在において)任意のIPv4ポートの解放が可能です。理論値上の最大速度は下りが1Gbps、上りが100Mbpsとなります。
ネットワーク構成
とりあえずはこんな感じになりました。
RTX1200のLAN1をクライアント側ネットワーク、LAN2を光BBユニットと接続し、LAN3をPPPoE接続に利用しています。2ポートのRTXルーター(RTX810とかFWX120)を使用している方は、図のLAN1とLAN2をタグVLAN対応スイッチで束ねることで、同様のセットアップが可能かと思います。
設定手順
ONUの設定
IPv6パススルーを有効化しておきます。
光BBユニットの設定
- 機能ボタンとリセットボタンを同時に長押しして、本体設定をリセットする。
- 光BBユニットのWANポートを、ONUのLANポートに接続する。
- ノートPC等から、BBユニットのアクセスポイントに接続。デフォルトSSIDとパスワードは本体の側面にあります。
- ブラウザで管理コンソール(172.16.255.254)にアクセスする。ユーザー名、パスワードともにデフォルトでuser。上流(ONU)から正しくIPv6が降ってきていることを確認し、『詳細設定モード』をクリック。
- 『IPアドレス/DHCPサーバー』選択し、本体のIPアドレスを192.168.200.1、サブネットマスクを255.255.255.252に変更。
- DHCP開始アドレスを192.168.200.1、終了アドレスを192.168.200.2に、『OK』をクリックして保存。
- 【重要】画面に従いここで一度本体を再起動します。
- 『DMZ』タブから、アドレス設定を『192.168.200.2』(RTX1200のLAN3)に変更。
RTX1200の設定
基本的な設定(PPPoE接続がLAN3に、DHCPがLAN1に適用されている)は完了している前提で進めます。
- LAN2にIPアドレスを割り当てる。
1
administrator ip lan2 address 192.168.200.2/30
- LAN2にNATディスクリプタを設定する。NAPTをかます必要があるのは、BBユニットが静的ルーティングに対応していないため。
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nat descriptor type 10 masquerade
nat descriptor address outer 10 primary
nat descriptor address inner 10 auto
ip lan2 nat descriptor 10
- RTXのLAN2ポートと、BBユニットのLANポートを接続します。
- この段階で、設定がうまくいっていれば、RTXからBBユニット(192.168.200.1)にpingが通るはず。
1
ping -sa 192.160.200.2 192.168.200.1
- LAN3にフィルタを設定。原則としてはPP用のものが流用可。BBユニット管理画面にアクセスするための穴は開けておく必要がある。 設定例の一部:
12345
ip filter 1001 reject 10.0.0.0/8 * * * *
ip filter 1002 reject 172.16.0.0/12 * * * *
ip filter 1003 reject 192.168.0.0/16 * * *
ip filter 5000 pass * 192.168.200.1 * * * *
ip lan2 secure filter in 5000 1001 1002 1003 ...
ファイアウォールの設定例はヤマハさんのサイトに詳しい。
- RTX1200のデフォルトゲートウェイの設定を更新する。 次の設定の場合、IPv6ハイブリッド経由の接続が優先される(weight値が大きい方が優先される)。
1
ip route default gateway 192.168.200.1 weight 1 hide gateway pp 1 weight 100 hide
- 無事インターネットに接続されたら、BBユニットの管理コンソールから無線LANを停止させ完了です。
スピード計測結果
結論から言うと、下り速度は50倍以上速くなりました。測定サイトはspeedtest.netで、比較的混雑していると思われる平日の午後11時半ごろに行いました。テストは全て同一サーバー『OPEN Project (via 20G SINET)』を選択し、IPv4 PPPoE経由とIPv6光ハイブリッド経由のそれぞれを複数回測定、最も下り速度が速かったスコアを載せています。
IPv6高速ハイブリット on RTX1200 with 光BBユニット
まとめ
今回は、Softbank光のIPv6高速ハイブリットをRTX1200と併用するためのセットアップを行いました。結果として、下り速度には大幅な改善(10Mbps→500Mbps)が見られ、非常に満足しています。加えて、今まで通りにRTX上でファイアウォール設定、ポート転送が可能なのも便利です。唯一の不満は、この方式だと、RTX1200がグローバルIPを取得できない点ですね。ヤマハの無料DDNSが使えなくなります。当面はPPPoE接続と同時運用する予定ですが、今のところ意味を見いだせないので(回線の二重化以外に)、しばらく使ってみてIPv6高速ハイブリットオンリーにしたいと思ってます。
参考URL
http://techlog.iij.ad.jp/archives/1879
http://ybb.softbank.jp/support/connect/hikari/setupguide.html
http://www.rtpro.yamaha.co.jp/RT/manual/rt-common/ip/ip_filter.html
http://www.rtpro.yamaha.co.jp/RT/docs/nat-descriptor/command.html
8 responses to “RTX1200でSoftbank光のIPv6高速ハイブリッドを利用”
はじめまして
記事、拝見いたしました。
私はSoftbank光を利用しており光BBユニットを利用しつつ個人のルータの機能も利用したいと考えていましたので
大変詳しく勉強になりました。
1点お伺いしたいのですが、記事中の設定では多段NATの状態になっているという認識で間違いないでしょうか?
光BBユニットが静的ルーティングに対応していないのでアドレス変換が必須であると認識しています。
お手数ですがご教授いただければと思います。
よろしくお願いいたします
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> くーたさん
コメントありがとうございます。
> 1点お伺いしたいのですが、記事中の設定では多段NATの状態になっているという認識で間違いないでしょうか?
その認識で正しいと思います。BBユニット上でIPv4 over IPv6トンネル経由で割り振られるグローバルIPv4アドレスと、LAN2のアドレス間のアドレス・ポート変換が行われ、RTX上で再度LAN2のアドレスとRTX配下のネットワーク間のNAPTが発生します。ただし、BBユニットはDMZ設定によってNAPTテーブルにない着信パケットを全てRTX側に投げるため、ポート開放・ファイアーウォールの設定がRTX側のみで済むというのが本設定の利点となります。
以上、お役に立てれば幸いです。
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はじめまして!記事、大変参考になりました。
1点確認させてください。
ネットワーク構成の箇所に
> 2ポートのRTXルーター(RTX810とかFWX120)を使用している方は、図のLAN1とLAN2をタグVLAN対応スイッチで束ねることで、同様のセットアップが可能かと思います。
という記述がありますが、これはともにWANポートであるLAN2とLAN3の間違いではないでしょうか?
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>マッキーさん
コメントありがとうございます。
>これはともにWANポートであるLAN2とLAN3の間違いではないでしょうか?
ご指摘の通りLAN2とLAN3を束ねることも可能ですし、LAN1~3を一つのポートにアサインすることも可能です。実際複数のポートを備えていても内部的にはそのように配線されている機器も多いです。
記事内でLAN1とLAN2の組み合わせにしたのは、執筆当時RTXシリーズでPPPoEポートをVLANインターフェース上に設定できるかどうか未知数だったからです。少なくともRTX1200は非対応で、ヤマハによると公式サポートがあるのは
RTX5000、RTX3500、RTX3000(Rev.9.00.37以降)、RTX1210
となります。いずれも当該のポートにアサインされた最初の8番目までのVLANポートのみPPPoE対応と制約があるようです。以下ご確認ください。
http://www.rtpro.yamaha.co.jp/RT/docs/vlan/
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初めまして。
Softbank回線で光BBユニット契約し持っていますが使用せず、 安定性を求めRTX810 でこれまで来ましたがIPV4速度低下が激しく、対策の検索で本記事を見つけました。
RTX1200を購入し、このアイデアを使わせていただきたいと思いますが、あまり詳しくなく1点教えていただければ幸いです。
記事中、RTX1200設定説明で前提となる 「RTX1200の設定「”基本的な設定(PPPoE接続がLAN3に、DHCPがLAN1に適用されている)は完了している前提” とは具体的にどうすればいいのでしょうか?LAN1 DHCPは理解できますが、LAN3を PPPoP にがわかりません。RTX1200設定で LAN3をPPPoPにしておけばいいだけなのでしょうか? ONU側でのせって変更か?RTX1200側でPPPoP設定時それ以外何かの設定が必要でしょうか?
突然で申し訳ございませんが、ご教授いただければ幸いです。
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>Cheeseさん
コメントありがとうございます。
>「RTX1200の設定「”基本的な設定(PPPoE接続がLAN3に、DHCPがLAN1に適用されている)は完了している前提” とは具体的にどうすればいいのでしょうか?
LAN3をWANポートとしてPPPoE接続に使用し、LAN1をLAN側インターフェースとして設定している前提という意味でして、具体的な設定例は以下のヤマハのサイトが参考になるかと思います。RTX810をお持ちとのことで、おそらく同様の設定を既にされているかと思います(インターフェース名のみ適時読み替えてください)。
https://network.yamaha.com/setting/router_firewall/internet/internet_connect/opticalfiber_command
>RTX1200を購入し、…
おそらくですがRTX810でもPPPoE接続をあきらめればBBユニットを介したIPv6高速ハイブリット経由の接続が可能だと思います。もしくはマネージドなL2スイッチをLAN側に挟み、本記事の図にあるLAN1とLAN2をVLANで束ねれば全く同様の設定も可能なはずですが、パフォーマンスはあまりよくないかもしれません。
長くなりましたが、現状でPPPoE経由のv4接続があまりに遅いのであれば同時接続しておく意味もないと思うので、RTX810のWANポートをBBユニットのLAN端子側に接続し、本記事の設定を試してみてもいいかもしれません。その場合はRTX810のWANポートが本記事のLAN2に対応します。
以上、お役に立てれば幸いです。
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記事を拝見しました。
今まで、ソフトバンク光でGE-PON→RTX810→APで接続しており、RTX810にPPPoE設定をしていました。電話はNTTのアナログでした。この度、ホワイト光電話に変更したため、光BBユニットが必須となったのですが、これを機にIPv6接続もしてみようと思いました。それでいろいろ情報を探したところ、このページにたどり着きました。
GE-PON→光BBユニット→RTX810→APで接続しルータ部分はRTX810で行いたいのです。この記事と違うのは、ONUがHGWではなく、GE-PONであることなのですが、同じように接続可能でしょうか?RTX810配下の機器からはどうしてもインターネット接続ができず困っています。RTX810側でNATの設定は必要ですか?
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>ラウムさん
すでに解決済みかもしれませんが、GE-PONと光BBユニットの組み合わせでも同様の設定が可能かと思います。NAPTとDMZの設定はRTX810をルーターとして使う場合は必要です。イメージといたしましては、今までPPPoE経由で取得していたWAN側のIPv4アドレスを光BBユニットが払い出すローカルIPに置き換える、となります。IPv6は/64アドレスがそのまま割り振られたと記憶しているので、ファイアウォールとDHCP関連の設定だけで十分なはずです。
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