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(万太郎)おまん 誰じゃ?
彼の名は 槙野万太郎。
移りゆく時代の中を ただ植物を愛し天真らんまんに駆け抜けました。
(ヒサ)これ お母ちゃんが一番好きな花。
(鉄寛)残念やけんど夜明けまで もつかどうか…。
また会おうね…。
お母ちゃん…。
おまんは 何がしたいがぜ?
わしは この花の名前が知りたい!
それから間もなく 徳川の世は終わり時代は「明治」と改まりました。
時は流れ 万太郎は9歳になりました。
皆々様 本日は 初呑み切りにお立ち会いありがとう存じます。
親方によったら今年は桶の出来も上々とのこと。
これからも先祖代々受け継いだ蔵を大切に皆で 励んでまいりましょう。
よろしゅう頼みます。
(タキ)皆の衆万太郎は 今年から名教館に通いだす。
これまでは ご家中の子弟しか通うことは許されちょらざったけんど町人からも2人だけ通うことが許された。
御殿医 堀田様の御子息と万太郎が。
ヒサを亡くして3年。
心配やった万太郎もどうにか ここまで無事に育った。
改めて 皆に言うちょく。
この峰屋の当主は 万太郎じゃ。
幼いからとゆうて 侮るようなマネは断じて許さん。
(豊治)ん~ けんど ばあ様万太郎は まだ商いのイロハも知らん子供じゃろ。
ここは まずわしらの話を よ~く聞いて…。
(伸治)ほうじゃ。 まだ酒も飲めんき。
分家は引っ込んじょり!
(紀平)はあ!?
(市蔵)若旦那様 改めましてよろしゅうお頼申します!
(一同)若旦那様 お頼申します!
お頼申します…。お頼申します…。
若旦那様…。
♪~
♪「言葉足らずの愛を 愛を貴方へ」
♪「私は決して今を」
♪「今を憎んではいない」
♪「命ある日々 静かに誰かを 愛した日々」
♪「空が晴れたら 愛を、愛を伝えて」
♪「涙は明日の為 新しい花の種」
♪「空が晴れたら」
♪「逢いに、逢いに来て欲しい」
♪「涙は枯れないわ 明日へと繋がる輪」
♪「言葉足らずの愛を」
♪「愛の花を 貴方へ」
おはよう!
神さん おはようございます。
天狗 おはよう。
あっ! 今年も咲いちゅう!
どういておまんは ねじれて咲いちゅうが?
ありゃ!
こっち向きのと 逆向きのがある。
何でじゃ?
フフッ ちんまい段々みたいじゃ。
(綾)万太郎!
万太郎!
おばあちゃんが待ちゆうき。うん。
(竹雄)ほら 若!せっかく仕立て上がってまいりましたのに!
ああ もう…。 ああ…。
ねえ 万太郎 今みたいなが やめや。
今みたいなが?
名教館に行ったら 先生もおる。お武家方もおられる。
草と話しよったら恥ずかしいき。
どういて恥ずかしいが?
そういうもんじゃ。草と話すがは 屋敷の中だけ。
どういて?
「どういて?」と言わんとって。
おまんが いじめられんように言いゆうがよ。
若には これからお友達ができるがじゃ。
戦ごっこしたり 相撲取ったり。
お武家の方々と ご一緒したらきっと丈夫になります。
楽しいことも ジャンと増えますき。
ほうか。 ほんなら行かん。
(竹雄 綾)はあ!?
楽しいこと もうあるき。
わし 名教館 行かん。
ちょっと 万太郎…。
若!
♪~
万太郎 シャンとしい!背筋が丸まっちゅう!
100年以上の歴史を持つ名教館。
幕末の志士たちや優秀な人材を多数 輩出した由緒ある学問所です。
ここが おまんの学びやじゃ。
学頭は 池田蘭光先生とおっしゃる。
何事も 初めが肝心じゃき!挨拶は しっかりしいよ!
うわっ!ああっ! 何するがじゃ~!
おお かかったか?か… 「かかったか?」じゃないぞね!
孫の晴れ着が…。あ~ ただの水じゃ。 あ… 拭いちゃる。
あやや! やめや!はあ?
(タキ)おまん 何するが!?いや…。
(タキ)触りな!ん?シッ! シッ!
おおお…。
アハハハ…酒じゃないかえ?
もろうちょこう…。あああ 触りな! シッ!
えっ?シッ シッ!ああ…。
さあ 万太郎。すぐ乾く。
んっ!あっ…。
ハハハハハ…。
えい!えい!えい えい えい!
声出して!はい!
(一同)「ミチニ ココロザシテアクイ アクショクヲ ハズルモノハイマダトモニ ハカルニタラズ。シ ノタマワクシ ミチニ ココロザシテアクイ アクショクヲ ハズルモノハ」…。
本日より通わせていただきます峰屋の槙野万太郎にございまする。
来たか。 小さいのう。峰屋の当主と聞いちょったけんど。
アハハ 蘭光先生に ございますか?
いや わしは 幼年組を預かる古沢と申す。はあ。
学頭は ご研究でお忙しい。挨拶は無用。
かしこまりました。
それでは 皆々様よろしゅうお願いいたします。
ほんなら しっかりのう。
竹雄も 頼んだよ。
若 初めが肝心ですき。
峰屋の万太郎と申します。
皆様 どうぞ…。
よろしゅう… 願います。
(古沢)入れ。はい!
(佑一郎)おい!(寛太)万ちゃん わしらは こっち!
下座じゃ!寛ちゃん!
早う 座って!(古沢のせきばらい)
(古沢)続きを読むぞ。「シ ノタマワククンシノ テンカニ オケルヤテキモナク バクモナシ」。
えっ? どこ?ほんじゃき ここじゃき。
何て読むが?
(古沢)下座 うるさい!
(一同)「シ ノタマワク」…。
(三郎)大体のう わしら どういて町人らあと机並べんといかんがじゃろう?
名教館も落ちたもんじゃ。
(庄之介)やつら町人は「ご一新 ご一新」言うて武士を笑い者にしゆうがじゃ。許せるか? 佑一郎。
大体のう わしらどういて座敷にも入れんがじゃ?
招いちょいて はじくとは見下げた了見じゃ。
名教館が聞いてあきれ…。ああ~!食べて。 ふじが張り切って詰めたがじゃ。
ありがとう!(竹雄)箸です。
さすが佐川一の豪商 峰屋じゃ!
こんな見事な弁当 食べたことないき!寛ちゃん!
万ちゃんのおかげで 弁当だけは負けんき。
上座の方々はきっと塩むすびでも食いゆうろう!
おのれ!
蘭光大先生が教えてくれるゆうきわざわざ来たけんどこれやったら 町の寺子屋の方がよっぽどえいが!
そう?そうじゃき!
大先生は おらん。武士は好かん。
名教館なんて…。
うわっ!来い。 剣術の稽古じゃ。
武士が どんな鍛錬しゆうか 教えちゃる。
(せきばらい)
わしは 医者の息子ですき。
剣術は父より かた~く禁じられちょります。
そうなが!?そうながじゃ!
あっ 往診についていくがじゃった。
(小声で)万ちゃんも逃げろ。
寛ちゃん!?
えっと… わしは…酒屋ですき。
酒屋が何じゃ? 理由がないのう。来い。
峰屋は名字帯刀も許されちゅう家じゃろうが。
おまんは その当主。さぞ 強いがじゃろうのう?
ご無礼ながら 峰屋の者にございます。
先ほどまでの軽口まこと申し訳ございません。
けんど 万太郎若様は生まれつき 体が弱うて…。
平に ご容赦願いたく。
ただの稽古じゃ。何を大げさに言いゆう。
わしら おまんの若様と仲ようなろうと しゆうがじゃ。
わしらが歩み寄りゆうに若様は 断るがか?
竹雄 やるよ。
(佑一郎)おう。
お稽古に… ございますね?
(庄之介)そうじゃと言ゆうろうが。
(三郎)構えい!
(庄之介)若様よ こうじゃ!
こうしてな… そうそう。
まあ 頑張りや!
始めい!
やあ!