死刑に立ち会った刑務官が明かす「執行ボタンを押す瞬間」

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死刑当日告知は違法なのか――。拘置所に収容されている死刑囚2人が、死刑執行の本人への告知が当日、直前に行われる現在の運用は違法だと主張し、国に対して事前に告知することなどを求める裁判が1月13日より大阪地方裁判所で始まった。

昨年12月に確定死刑囚3人の刑が執行されたことは記憶に新しい。死刑執行は2019年12月以来とおよそ2年ぶりで、岸田政権の発足後は初めて。今回の執行を受け、確定死刑囚は108人となった。

死刑とは犯した罪を自らの死によって償う刑罰で、刑法11条で死刑は刑事施設内において絞首にて執行すると定められている。だが、世界では約7割の国が死刑を廃止か停止している。国際的な潮流に逆行する日本には厳しい目も向けられているからこそ、我々は「国が人の命を奪う」死刑に向き合わなければならない。

日本では死刑判決はどう行われ、死刑囚はどんな生活をして、死刑はどう執行されるのか。本記事では、漫画家・一之瀬はちさんが実際に死刑に立ち会った刑務官に取材したマンガ『刑務官が明かす死刑の話』を取り上げる。

「刑務官が明かす死刑の話」(竹書房)
 

執行担当に選ばれる条件

一之瀬さんはなぜ死刑について取材するに至ったのか、こう語る。

「もともと警察ものや犯罪ものの作品に興味があり、その手のドラマを見たり小説を読んだりしていました。そのような中、刑務官の方と知り合いお話をしていく中で、刑務官の仕事は塀の中の業務ということもあり、それまで深く知る機会がありませんでしたが、刑務所の中の治安を守ることはもちろんのこと、罪を犯した受刑者の矯正、そして死刑の立ち会いと、重い責任を背負って日々業務をこなしているのだということを知り、刑務官という職業のリアルな姿を伝えられればと思ったことがきっかけです」

一之瀬さんが取材したのは、実際に死刑に立ち会った経験のあるM刑務官。大学卒業後、刑務官試験に合格。地方刑務所、拘置支所勤務を経て、現在は某拘置所に勤務している。

「刑務官が明かす死刑の話」より

■そもそも死刑執行に携わる刑務官はどれくらいいるのか

全国にいる刑務官はおよそ1万8000人で、その中で執行ボタンを押す刑務官は1回の死刑につき3~5人とされている。ここ数年の1年あたりの執行数平均は6~8件で、つまり実際に執行ボタンを押す刑務官は全体の0.1%ほどとなる。退職までに死刑に関わらず終わる刑務官がほとんどだそうだ。

では、執行担当に選ばれる条件とは何なのか。

1.死刑設備のある拘置所に勤務していること
2.階級が看守部長以上(ノンキャリアで10年以上の経験が必要)
3.精神的に安定している
4.本人が妊婦もしくは配偶者等に妊婦がいない
5.特定の思想や宗教を持たないこと
6.勤務態度が良いこと

この他にも様々な条件があるという。

これらの条件でふるいにかけられ選ばれるのが死刑執行の刑務官なのである。

「こうやって条件を絞っていくと参加できる刑務官は大体決まってくる」(Mさん)

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