優作ファン無料奉仕、ロケに1300人/1980年8月2日付
- 1980年8月2日付 14面
松田優作映画のエキストラならタダでもいいと、ファン1300人が参集して、製作元の角川映画や配給元の東映関係者を大喜びさせた。これは1日、東京・日比谷公会堂で行われた「野獣死すべし」(大藪春彦原作、村川透監督)=10月4日公開=のコンサート会場ロケのことで、松田人気の上昇ぶりを裏付けるとともに、省ロケ費用につながったバカ受け物語である。
しろうとエキストラのギャラは現在1日5000円なりが相場だが、東映が「松田作品に無料で協力してください」と新聞・雑誌で公募したところ、5000通もの申し出があったからびっくり仰天だ。17歳から25歳ぐらいまでの男女1300人を、クラシック・コンサート会場の聴衆役に選出したが、謝礼は原作の文庫本1冊と試写会の切符2枚ずつというもの。
平常ならエキストラ・ギャラ5000円×1300人=650万円となるが、ファンとはありがたいもので、文庫本210円(定価300円だが割引で)+ハガキ2枚分40円=250円、この1300人分で32万5000円。正午から午後6時すぎまで拘束したが、弁当を出すこともなかったから概算でも20分の1の経費で済んだ計算になる。
交通費自弁で、遠くは小田原から駆けつけた人もいるが、その中の1人、高清水洋子さん(高2)も「優作が見られるだけで最高。本も試写状もくれなくてもきたもん」と文句一つなし。むし暑いさなか、クラシック・コンサートの聴衆らしく全員“正装”風という条件にも従って黙々と撮影に協力するのだから、関係者はしてやったりだ。
松田作品は客を呼べると評が定番。今回も1億3000万円の製作をぶち込んだ作品だが、製作過程のロケから“客が呼べる”とは―――。それにしても、ファンとはホントに本当にありがたいものだ。
[1980年8月2日付]