農地に太陽光パネルを設置し、農業生産と発電を同時に行う営農型太陽光発電。パネル下での不適切な営農事例の発覚が相次ぐ中、農水省は制度運用を厳格化する方向だ。地域で農業振興と再生可能エネルギー(再エネ)普及の両立について話し合う契機としたい。
農水省農村振興局の調べでは、営農型発電の一時転用の許可実績は、2013年度は全国で17・6ヘクタールに過ぎなかったが、20年度には累計で872・7ヘクタールにまで拡大した。最大の要因は、電力会社が再エネ電気を一定価格で一定期間買い取る「固定価格買取(FIT)制度」の導入だ。太陽光発電の買取単価は現在、1キロワット時当たり10円程度にまで下落しているが、当初はその4倍の同40円程度に設定された。加えて農水省が農地転用許可制度の取り扱いを明確化。担い手が営農する場合や荒廃農地を活用する場合には一時転用期間を3年以内から10年以内に延長するなど後押ししてきた。
しかし、近年は不適切な営農事例が目に付くようになってきた。20年度末では全体の18%で、国が定める収量基準(地域平均の8割)を満たしていなかったという。こうした状況では、農地転用許可制度の運用の厳格化は避けられないといえるだろう。だが、脱炭素化に向けた再エネ普及のためには、太陽光発電のさらなる拡大は欠かせない。社会の環境意識の高まりを受けて、現行のFIT価格を大幅に上回る購入契約も各地で成立してきている。
制度運用の厳格化が不適切な営農事例の抑止につながる一方で、適切な営農型発電を続ける関係者らには追い風になるような配慮を求めたい。その上で、農業振興と再エネ普及の両立について農業関係者はもちろん、それぞれの分野で専門家の知見も交じえながら、地域で話し合い、営農型発電も有力な選択肢として位置付けていく機運を高めてほしい。
環境政策に詳しい東京工業大学環境・社会理工学院の錦澤滋雄准教授らが昨年度に行った住民アンケートでは、営農型発電施設の導入に当たり、地域住民から出資を募ったり、災害時に電源を開放したり、対話を重ねた施設では、地域の誇りとして認知され、歓迎される傾向が浮き彫りになったという。
JA全農が今年度から、情報通信技術(ICT)を活用した新しい地域づくり支援サービスとして、鳴り物入りで進めるスマートアグリコミュニティ構想でも、太陽光発電は蓄電池の設置と合わせて、重要な位置付けとなる。再エネ資源の一つとして、せっかく芽吹いた営農型発電の可能性を消してはならない。