今回は番外編として、2023年4月に新発売となったサントリー生ビールを飲んでみます。

日本初の濾過方式の生ビールを発売

サントリーは1930年代に一度「オラガビール」という名前でビール事業に進出したものの数年で撤退しましたが、1963年にビール事業に再参入しました。当初は他社同様に熱処理を行ったビールでした。

そして1967年に、熱処理をしないビールとして「純生」を発売しました。
これは、当時のアメリカ連邦航空局(NASA)で開発されたミクロフィルターを使うことで、ビール内の酵母を除去することで、熱処理なしに発酵が進まないようにしたビールでした。

しかし既存の3メーカー(キリン、アサヒ、サッポロ)は、濾過を行ったビールは生ビールではないと物議を醸すこととなりました。
その後、1977年にサッポロビールが濾過方式の生ビールとして「びん生(現在の黒ラベル)」を出すと、キリン、アサヒも続くこととなりました。

生ビールで先鞭をつけたサントリーでしたが、シェア拡大には至りませんでした。

ブランド消滅、そして復活

その後純生は1982年に「サントリー生ビール」と改称されましたが、1985年に麦芽100%のレギュラービールとして「モルツ」が登場、ドライ戦争を経てサントリーの主力になっていきました。

1993年には「純生」ブランドが一時復活しましたが、それも長続きせず、サントリー生ビールはフェードアウトしていきました。

そして2023年4月に、サントリー生ビールが復活することになりました。
サントリーのレギュラービールとしては久しぶりに副原料が使われるビールになります。

特徴としては、プレミアムモルツ マスターズドリームにも使われる「ダイアモンド麦芽」と、三回にわたって仕込み釜上で麦芽と水を混ぜたものを煮出して麦芽糖やうまみを引き出す工程を行う「トリプルデコクション」を行っていることです。

これに加え、トウモロコシの胚乳部分を挽き割りにしたコーングリッツを加え、甘みや香りを加えています。

サントリーはプレミアムビールにあたる「プレミアムモルツ」のシリーズが主流でしたが、ビールの酒税が引き下げられるタイミングを謀って、今回のサントリー生ビールを出したといえます。

テイスティング

_DSC6952_01今回は、糖質ゼロのビールである「パーフェクトサントリービール(以後、PSB)」と飲み比べてみます。
なおPSBは熱処理されたビールになります。

サントリー生ビールは、苦みはそこそこ強めで、後から軽い甘みのあとにしっかりと酸味が広がっていきます。
香りには麦だけでなくトウモロコシの香りが加わっていて、副原料が入っていることがよくわかります。
PSBに比べるとコクがあって多少の重みを感じます。

PSBは苦みが薄めで甘み、酸味は抑えられている印象です。
香りも麦の香り以外には特に感じることがないです。
糖質0のビールですが、代替する甘味料のようなものを使っていない印象で、不自然さがなく、辛口でキレのあるビールになっています。

おつまみを食べつつビール主体でいただく印象

比較をしてみると、PSBは食事と一緒に飲む食中酒として向いていて、苦みや味わいが抑えられて麦の香りのみを感じる印象です。

いっぽうで新しいサントリー生ビールは、トウモロコシの香り、甘みが加わり、さらにホップの苦みがしっかりしていて酸味も強めになっているので、食中酒として飲むには邪魔をしてしまう印象です。
どちらかと言えばビールを味わうのが主体で、アテをいただく方が向いているように思えます。

近年のクラフトビールブームと共に、苦みやコクがしっかりしたビールが人気になっていく状況を考えれば、必要最小限より少し多めににコクを加える仕上がりにしたのは、トレンドを捉えた末のできなのかもしれません。

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