町長から「辞めるしかない」 少子化対策“奇跡の町”岡山県奈義町で職員大量退職
文春オンライン / 2023年4月9日 11時0分
奈義町の「なぎチャイルドホーム」を視察し、子どもと握手を交わす岸田文雄首相(中央) ©時事通信社
2019年に合計特殊出生率が2.95となり、少子化対策の「奇跡の町」として注目されている岡山県奈義町で、2022年度の1年間に町役場の職員89人のうち10人が中途退職していたことが「 週刊文春 」の取材でわかった。複数の職員の証言によれば、奥正親町長(64)の“パワハラ”が理由の一つだという。
奈義町は人口約5700人の町だが、2014年に出生率が「2.81」と非常に高くなり、全国的に注目されるように。米国や韓国、オランダなどの海外を含む自治体の訪問は年間50件を超え、今年2月19日には「異次元の少子化対策」を掲げる岸田文雄首相が同町を視察。地元の親子連れの話にメモを取りながら、「地域ぐるみで子育てに取り組む町づくりをしており参考になった」などと報道陣に語っている。
だが、町役場職員の一人が語る。
「昨年度、町役場の全職員89人のうち、定年退職者3人のほかに、20代、30代の若手職員を中心に10人が中途退職しました。割合でいえば11.2%にもなる。また、奥町長体制の4年間で中途退職した職員数は合計24人で、全職員数の6.6%。津山市や美作市、久米南町など近隣自治体のこの3~5年の中途退職率は、奈義町議らが調査した結果によると1~2%台なので、奈義町の数字はかなり高いといえます」
アンケートに職員の“告発”「机にバインダーを叩き付け…」
小誌は2022年1月発行の「町民有志のニュース」と題された文書を入手。内容は、退職者を含む役場職員に対して行われた「奥町長からパワハラを受けたことがあるかどうか」についてのアンケートの結果だ。それを見ると、〈パワハラを受けたことがある〉と回答したのが8人、〈同僚がパワハラを受けるのを見た〉と回答したのが12人。パワハラの具体的な内容については次のように記載されている。
〈会議が終わった後、床を蹴り「段取りが悪い」と職員がいる前で叱られた〉
〈たいした用事ではなかったが、分からないので尋ねたらすごい剣幕で怒られた。以来、恐怖を感じながらの仕事です〉
〈仕事で「難しい」と言ったら、できないなら「辞めるしかない」と言われた〉
〈担当業務のことで激高し、机にバインダーを叩き付けられた〉
前出の役場職員が語る。
「町長は怒りをコントロールできない人なんです。職員は何か喋れば町長に叱責される。一部の“町長派”の職員からの告げ口も怖いので、業務中も何も言えません。まるで北朝鮮のような職場の雰囲気です」
奥町長は何と答えるか?「そういう認識はまったくないですね」
4月4日、奥町長に対面で話を聞いた。
――退職者が多い。
「中途退職10人は確かに多いと思います。その中には副町長になった者と町議になった者も含まれますが。寂しいですよね。一緒に町づくりをしていた職員ですから」
――パワハラで追い詰めた職員も辞めているのでは?
「いや、そういう認識はまったくないですね。ハラスメントについては防止規定を作っていて、相談を受ける職員を10名、外部委員会ということで弁護士も置いている。私は怒鳴りつけたりとか、そういう認識はありませんけど、現場で悪いところを『直そうぜ』と言ったりはする。それがまあ、職員の立場と町長の立場では受け取り様も違うと思うんで、そこのところは改めさせていただきます」
――役場に嫌気がさし、職員が離れている。
「若い人の考え方が、我々が入った時とは若干、違いますから、我々だったら『もうちょっと我慢しよう』ということもあります。より働きやすい職場にしようということは常に考えてますんで」
あくまで「パワハラの認識はない」と主張する奥町長。町議会でもこれまで奥町長のパワハラ問題が取り上げられてきたが、「静観する」という結論を出してきたという。だが今回、複数の職員から、奥町長の具体的な〝パワハラ行為〟の証言が得られた。
奥町長が今後、労働環境の改善にどう取り組むのか注目される。
現在配信中の「 週刊文春 電子版 」では、奈義町が少子化対策の“奇跡の町”となった背景や、奥氏が町長に上り詰める経緯、「年俸10%の辞令」を表彰状のように渡した後、職員に言い放った奥町長の一言など、奈義町で何が起きているかを、詳しく報じている。
(「週刊文春」編集部/週刊文春)
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