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《被害者(39)が実名告発》小学校担任教師による継続的わいせつ行為「成長はどうなっているかな」

秋山 千佳 2023/03/15

周囲は「先生のペットみたいなものだ」

 教室の前方中央の教員用机は、相対する児童の席からは足元が見えないようになっている。机で隠れている回転椅子に座る奥田は、石丸さんを呼び寄せると、背後から抱えるように膝に乗せた。

 そして、大腿部から半ズボンの隙間、パンツの下へと手を滑らせ、陰部を触るのだ。

 石丸さんは混乱や恐怖で、無言で体をこわばらせることしかできなかった。

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 対照的に奥田は、他の児童が同じ空間にいるのに平然としていた。石丸さんの陰部を触っている間も、他の児童に「宿題やってきたか?」などと声をかけることがあった。石丸さんは言う。

「下半身が見えていない他の子からしたら、おかしなスキンシップには見えなかったかもしれません。石丸は先生と仲がいいな、くらいに捉えられていただろうと思います。仲がいいというか、まあ、先生のペットみたいなものだと」

 石丸さんが抵抗できないのを見て取った奥田は、次第に声かけさえすることなく、無言で腕を引いて教員用机の向こうへ連れていくことが増えていった。

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 4年生の間に、さらなるわいせつ行為が加わった。奥田は終業までにこう言ってくる日があった。

「今日はお前の家まで送っていくよ。サッカーが終わったら教室に来なさい」

写真はイメージです。本文とは関係ありません ©iStock

 サッカー部の練習は夏なら午後6時、冬は5時頃までだった。練習を終えて教室へ行くと、教員用机の周りだけ電気をつけて奥田が待っていた。他には誰もいない。他の教職員が通りかかることもなかった。

 奥田は「成長はどうなっているかな」と言いながら、石丸さんの服を脱がせた。最初は下着を残して、後には全裸にされたこともあった。

 最初にこうされた時、石丸さんは手を振りほどこうとした。必死の抵抗だった。しかし腕を強く掴まれると、恐怖と諦めからそれ以上力が入らなくなってしまった。

 奥田は服を脱がせると石丸さんを抱きしめ、「素介はいい子だ。素直に言うことを聞くいい子だ」と言いながら陰部をまさぐった。

 石丸さんはこう分析する。

「えこひいきが激しくて、ちょっとでも奥田に反抗の色を見せる子や好きじゃない子には体罰や悪口が待っていました。子どもながらに自分を持っている子に対してきつかった気がしますね。僕は早々に自我を折られた“いい子”だったから、手を上げる必要もなかったのでしょう。何でも聞くロボットみたいになっちゃって、やりたい放題させてしまった」

 表沙汰になりにくいが、男児の性被害は決して少なくない。それは多くの被害者が記憶に一時的にフタをするのに加え、保護者をはじめ周囲の大人が「まさか男子が」と被害のサインを見過ごすからだという。

 石丸さんも吐き気などの身体症状に悩まされながらも、中学3年生の頃には勉強にもある程度打ち込めるようになり、難関高校に合格している。

 だが、一時軽くなった吐き気や食欲不振の症状がぶり返し、3年生の時に不登校に。結局、高校を中退し、20歳の時、初めて精神科のクリニックを訪ねた。石丸さんが初めて、他者に性被害を打ち明けた瞬間だった。そして、ようやく両親にも打ち明けることができた――。

 被害状況を初めて聞いたときの両親の反応、「私の人生で一番つらかった日」という母親のインタビュー、勇気あるクラスメートが裁判の証言台に立ってくれるまでの戦いの日々など、秋山千佳氏による新連載「ルポ男児の性被害」第1回全文は「文藝春秋 電子版」に掲載されている。

男児の性被害について情報をお寄せください。
秋山千佳サイトhttp://akiyamachika.com/contact/

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source : 文藝春秋 電子版オリジナル

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