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ぼっち「に、虹夏ちゃん!付き合ってください!」
最近、虹夏ちゃんを見ていると胸を締め付けられる感覚に陥る。それが何を意味するのかも私は知っていた。私は虹夏ちゃんが好きだ。優しい虹夏ちゃん、私を守ってくれる虹夏ちゃん。意外と寂しがりやな虹夏ちゃん。虹夏ちゃんの全てを愛せる自信が私にはある。
ついにこの気持ちを告白してしまった。断られれば私はまた居場所を失うことになるだろう。しかしこの気持ちは胸にしまっておくには大きすぎた。虹夏ちゃんは少し考えているのか、少々長い間が生まれた。私は察した。告白は断られる。私には返答を待つこの一瞬が永遠の苦しみに感じられた。そして遂に虹夏ちゃんが"もうしわけなさそう"な目で私を見つめ、こう返す。
虹夏「ご、ごめん…」
私は脳内が真っ白になった。結果は見えていると自分でも心得ていたはずなのに。この気持ちを伝えずにはいられなかった。
気付けば私は何も言わずにスターリーから飛び出していた。
虹夏「ちょっ!ぼっちちゃん待って!」
私は呼び止める虹夏ちゃんを無視して走った。今は一人にしてほしかった。心が壊れてしまわないように、私はまた一人になる。
バイトの後、二人だけで話したいことがあると、ぼっちちゃんに呼ばれた。言われた通り二人だけで残ると、ぼっちちゃんはギターに熱中しているときのような真剣な目で私を見据えてこういった。
ぼっち「に、虹夏ちゃん!付き合ってください!」
嬉しかった。私達は両想いだったのだ。しかしどうしてか私は即答できなかった。考えてしまったのだ。バンド活動が順調な今恋愛なんてしていていいのだろうか、これはバンドの崩壊を招くことになるのではないか。
私が答えかねているうちにぼっちちゃんの表情が曇り始める。私には夢がある。ただぼっちちゃんも好きだ。だから"今"は応えられない。
虹夏「ご、ごめん…」
虹夏「で、でも!…え?」
言い淀んでいると、もう目の前にぼっちちゃんはいなかった。スターリーから飛び出るぼっちちゃんの後ろを追い呼び止める。ぼっちちゃんには私の言葉は届かない、姿を見せることなく走り去ってしまった。
断ったとき、ぼっちちゃんは震えていた。紛れもなく私のせいだ。これからぼっちちゃんはどうなる?私は勇気を出して告白してくれたのを裏切ってしまったんだ。もう私と話すこともしてくれないもしれない。自己嫌悪に陥り頭を抱えて座り込む。その日、私はぼっちちゃんを追わなかった。
翌日、いつも通り接客しているとお姉ちゃんから呼び出しがあった。昨晩は何も言わずにご飯だけおいて寝てしまったから心配されているのだろうか?だとしたらほっといてほしいのだけど。
星歌「ぼっちちゃんからバイトを辞めたいって言われたんだが何かあったのか?」
虹夏「え、嘘…」
今すぐ会って言い直したい。けれど勇気がない、私は動けないままだ。喜多ちゃんやリョウならもっと上手くやっただろう。もう泣きたく思えてきた。ぼっちちゃんが悪いんだ…ぼっちちゃんが私なんかを好きになるから…
星歌「虹夏、行って来い。言って自分の想いをぶつけてこい」
お姉ちゃんは私の想いを見透かしていた。お姉ちゃんの一言は私の中の不安の糸をほどいた。先程まで鉛のように重かった足は今にも走り出しそうなほど軽かった。私はまだ何も伝えてない、ぼっちちゃんに好きだって伝えてない!走れ私!
仕事をお姉ちゃんに任せ私はぼっちちゃんの元へ駆け出した。駅まで走り電車に乗せてもらってからまた走り出す。私は息を切らしながらも立派な一軒家の前に辿り着く。数回しか行ったことは無いけれどよく覚えていた。
ふたり「はーい、誰ですかー?」
チャイムを鳴らすとインターホン越しに元気のいい声が聞こえてきた。ふたりちゃんだ。
虹夏「やっほー私だよ、ぼっちちゃんって今いるかな?」
ふたり「うーんと、お姉ちゃんは今家にいません!」
ふたり「ってお姉ちゃんが言えって!」
ぼっち「ちょっふたり!あーあー虹夏ちゃん、後藤ひとりは今いません」
やっぱり居た。どうにも私とは顔を合わせたくないようだ。だけど私は下がれない。
虹夏「ぼっちちゃん出てきて!昨日のことで話したい事があるの!」
ぼっち「い、嫌です!虹夏ちゃんは私を気持ち悪がってるんですよね!私がこんな気持ちを向けていたことに!」
虹夏「違うよ!私にも続きがあったの!」
ぼっち「続き…?」
ふたり「話は中でしよ!さーさー虹夏ちゃん入ってー」
ふたりちゃんに招かれて私はぼっちちゃんの部屋で二人きりになれた。かなり危なかった、あのまま勢いで言ってしまうのは良くなかった。ふたりちゃんナイス。
しかしまぁ気まずい。昨日の今日でこの状況、話が出来る訳がない。私達はポテチをつまみながら間をもたせた。
早く切り出さなければいけないのに本人を前にすると中々言葉がまとまらない。
ぼっち「虹夏ちゃんは…わたしの憧れです」
虹夏「…え?」
この空気の中、ぼっちちゃんが話してくれたのが意外だった。本来なら私が先でないといけないのにだ。
ぼっち「気持ち悪いかもしれないですけど私は、優しくて強くて頼れる、そんな虹夏ちゃんが恋愛的な意味で好きなんです。ハハ…こんなの拒絶されても仕方ないなって…」
虹夏「気持ち悪くなんかないよ!聞いてぼっちちゃん。ぼっちちゃんは私のヒーローなんだよ。いつも優しくていざというときすごく頼りになる、そんなぼっちちゃんが…」
ぼっちちゃんに分かって欲しい。私達は同じなんだってことを。私がこれほどにぼっちちゃんのことを好いてるんだってことを。ぼっちちゃんのことが…
虹夏「大好きです。付き合ってください」