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あの時もう少し私がしっかりしていれば今はだいぶ変わっていたのだろう。私が頼られる人間であったなら…。そんな後悔も何を生むということはない。変えられない自分と過去に嫌気を感じながら今日もステージに立つ。
モブ「今日もすごかったです!ソロライブ最高でした!」
ぼっち「あ…えと…ありがとうございます」
ソロで活動をするようになってから私の知名度は飛躍的に上がった。それなりにファンもついたし、テレビで取材を受けるようにもなった。憧れていたままの理想の姿なのに…私の心が満たされることはない。
2号「ひとりちゃん、おつかれ!こないだよりも良くなってたよ!」
私の最古ファンの一人、2号さん。私を支えてくれる大事な人です。
ぼっち「えへへ、そんな、へへへ」
2号「ひとりちゃんは変わらないね!」
ぼっち「グサァ!」
チクチク言葉良くない…
まだ周りに人がいるのに危うく流体化してしまうところだった。いや、私だって?今みたいなことがあっても流体化しないほどには成長したし?これは変わっていると言ってもいいのではないか。大体私みたいな陰キャが・・
ぼっち「ブツブツブツブツ」
2号「ほら戻ってきて!今日は取材の日でしょ?」
ぼっち「あっ!」
糸の切れた人形のように私は地面に倒れ伏せた。もうだめだ、おしまいだぁ~。
2号「それに密着取材とかなんでしょ?私絶対見るからね!」
ぼっち「あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛!!」
モブ「何だ何だ!?「誰かー!救急車よんでー!人が溶けてる!」」
アナウンサー「今回は大人気ギタリストである後藤ひとりさんにお越しいただきましたー!」
ぼっち「へ、へへイェ~ィ!」
パチパチパチ
昔はこんな取材に出て堂々と話してやるのが夢だったのによくよく考えてみたらそんなの出きっこないってのが実際に出てみて分かった。
アナウンサー「早速ですが後藤さんはいつ頃からギターを始められたんですか?」
ぼっち「中学生位です…かね」
アナウンサー「すごいですね〜行事とかも出たんですか?」
ぼっち「いや、あの頃は陰キャで…」
アナウンサー「あ、あはは…」
あわわ、逃げたい、今絶対いらないこと言ったよね私!?
アナウンサー「で、では!本題に移らせてもらいます!巷では有名な話ですが、昔結束バンドなるバンドに所属されていたと?」
ぼっち「え、えと…」
これだけは無理だ、どう考えてもモラルがなさすぎる。謝って…帰ろう。そう考えて目線を落としていた目線を上げると・・
蘇るのは昔の記憶、きっとスタジオの光がスターリーとにていたのだろう。私は結束バンドを皆に知っていてほしい、覚えていてほしい。
ぼっち「結束バンドは…」
どうせ私の長話なんか全カットされてしまうのだろうけど、私はすべてを話した。私が虹夏ちゃんに誘われてバンドに入ったこと、あの日二人で夢を分かち合ったこと、夢半ばに亡くなった彼女に託された事。
アナウンサー「あ、ええと…」
さっきまで陽気だったアナウンサーは目頭に涙を浮かべている。
スタッフ「〇〇さん、そろそろ時間のほうが…」
アナウンサー「あっそうですね、では!お時間も迫ってきたので最後に一曲弾いてもらいましょう!おねがいします」
ぼっち「わかりました」
あの日突然病院に運ばれた彼女。たまたま近くにいただけの私がたまたま彼女の最後の言葉を聞いた。『安心して、私は近くにいる』私は事切れた彼女を前に空を仰いで問いた。なぜ自分ではないのか、何故彼女の言葉の意味を聞かせてはくれないのか。私の声は届いていたのか…
私は終わった夢を追いかけ続ける。でもそれは悪いことではないと思う。だって…
ぼっち「いきます!曲名はギターと孤独と蒼い惑星!」
ギターを弾いてるときは何だかとっても心強いんだ。