ツイッター上で名誉を傷付けられたとして、沖縄タイムス編集委員の阿部岳記者がジャーナリストの石井孝明氏を相手に損害賠償と投稿の削除を求めた訴訟は23日までに、那覇地裁(藤井秀樹裁判長)で和解が成立した。20日付。石井氏は23日、ツイッターに「事実に反する内容であった」と認める謝罪文を掲載した。謝罪文の掲載は3日間。
石井氏は昨年の「慰霊の日」、阿部氏が自衛官に行った取材活動の配信動画を「政治活動をするのはやめなさい。(略)人倫に反します」とツイート。7月にかけ「デマ、言葉尻攻撃、攻撃的な怒鳴る取材(反論しない自衛官を映像で)で有名」などと投稿した。
和解成立を受けた阿部氏は「誹謗(ひぼう)中傷や差別は許されない。ネット上で激化する状況を何とか変えられないかという問題意識で提訴した。こういう名誉棄損(きそん)は謝罪に値すると社会に示されて良かった」と述べた。
石井氏は23日付でコメントを発表。「事件は相互のののしり合いの結果。言論に携わる阿部氏が、いきなり相手を裁判で訴えるのは異様な行動だ。先方が和解を申し入れ、その要請を受け入れた」としている。
■ネットの中傷 容認してはならない
ノンフィクションライターの安田浩一さんの話 石井孝明氏は阿部岳氏に対し不当な人格攻撃を繰り返しただけでなく、沖縄のメディアに対する偏見もネット上に書き込んだ。取材の形跡は見受けられず、真実性も全くない。根拠なき中傷をネットで発信したことは断罪されてしかるべきだ。
石井氏は過去にも在日コリアンの辛淑玉氏を「北朝鮮のパシリ」などとネット上に書き込んで訴訟となり、損害賠償が確定した。一連の発信から透けて見えるのは沖縄やマイノリティーに対する差別だ。
11万人余のフォロワーを持ち、記者経験のある石井氏の影響力は決して小さくない。個人の名誉棄損だけでなく、不特定多数のネットユーザーを憎悪と差別の回路に引きずり込む。
昨今、ネットの誤情報やデマを信じ込む者によるヘイトクライムが相次いでいる。差別扇動は社会を壊すだけでなく、最終的に人の命を奪う。だからこそ無差別の暴力と容易に結びつく恐れのあるネット上の誹謗中傷、差別と偏見を容認してはならない。