「ケプラー」発見の天体で最も近い地球型惑星
【2023年4月4日 アストロバイオロジーセンター】
これまでに5000個以上の太陽系外惑星が見つかっている。その大半は、質量や表面温度が太陽と似た恒星の周りを回っているものだ。一方で、天の川銀河に存在する恒星で一番多いのは、質量が太陽の半分程度以下の「赤色矮星」であり、その周りにも惑星が存在するはずである。しかし赤色矮星は暗いため、その周りを回る惑星を見つけたり性質を調べたりするのは難しい。とくに、質量が太陽の0.2倍以下の星の周りでは、トランジットする(惑星が中心星の手前を通過する)系外惑星はほとんど見つかっていなかった。
アストロバイオロジーセンターの平野照幸さんたちの研究チームは、NASAの系外惑星探査衛星「ケプラー」が2017年から2018年にかけて取得したデータを、独自の手法を用いて詳細に解析した。その結果、かに座の方向、地球から71光年の距離に位置する赤色矮星「K2-415」の周りを4.02日周期で公転するトランジット惑星の候補「K2-415 b」を発見している。さらに、2018年から2021年にかけてすばる望遠鏡などによる追観測を実施し、K2-415 bが本物の惑星であることを確認した。
「ケプラー」がK2-415 bのトランジットの観測で検出した中心星の減光。実際は約30分毎の測光観測であったため、各トランジット中に平均2点ほどしかデータ点がないが、この図では複数回の観測結果が重ねて表示されている(提供:アストロバイオロジーセンター、以下同)
赤色矮星であるK2-415は表面が摂氏3000度以下と低温であり、可視光線では暗い。その代わり近赤外線では明るく輝いているため、すばる望遠鏡による観測では近赤外線分光器IRDが用いられた。その結果、K2-415 bの半径は地球の1.02倍、表面温度は摂氏約100~140度と判明している。
ケプラーの後継機であるNASAの系外惑星探査衛星「TESS」も2021年の終わりに約80日間にわたって観測を実施し、K2-415 bのトランジットを検出している。研究チームはTESSが得たデータも組み合わせて解析し、惑星の半径や公転周期などを精密に決定した。
地球(左)とほぼ同じ大きさのK2-415 b(右)の想像図
K2-415のような低温な恒星でトランジットする地球型惑星を持つものは、有名なTRAPPIST-1を含めてこれまで4つしか見つかっていなかった。その5つ目となったK2-415系は、今後重要な観測対象となる。というのも、ケプラーが発見した数千個の惑星やその候補の中で、K2-415 bは最も地球から近いからだ。また、ケプラー以外が見つけた系外惑星を含めても、約71光年という距離はトランジット惑星を持つ恒星としては近く、観測に有利である。
今後の観測でK2-415 bの大気や軌道に関する情報が得られれば、地球と異なる世界である、低温度星を巡る地球型惑星の姿が明らかになると期待される。
〈参照〉
- アストロバイオロジーセンター:ケプラー衛星による惑星候補の中で最も近い地球型惑星を発見
- The Astronomical Journal:An Earth-sized Planet around an M5 Dwarf Star at 22 pc 論文
〈関連リンク〉
関連記事
- 2023/01/17 光合成の蛍光から系外惑星の生命を探す
- 2022/12/22 低密度の系外惑星、「煮えたぎる海洋惑星」か
- 2022/12/20 地球型惑星の大気は強い紫外線に負けない
- 2022/10/06 海を持つ惑星は赤色矮星の周りに意外と多く存在する可能性
- 2022/09/13 低温星のハビタブルゾーンで地球型惑星を発見
- 2022/09/13 惑星系に名前をつけよう!太陽系外惑星命名キャンペーン2022
- 2022/09/08 JWSTが系外惑星を初めて直接撮影
- 2022/09/01 系外惑星の大気から二酸化炭素を検出
- 2022/08/15 形成中の惑星を取り巻く円盤からガスを初検出
- 2022/08/12 トモエゴゼンが赤色矮星の短時間フレアを多数検出
- 2022/08/02 すばる望遠鏡による低温の恒星を巡る惑星探し、最初の発見
- 2022/04/27 恒星に隠された系外惑星の光から大気の特性を解明
- 2022/04/08 太陽系と異なるプロセスで形成中の惑星
- 2022/03/29 系外惑星が地球のような月を持てる条件
- 2022/01/06 星のゆりかごを撮影した画像から多数の浮遊惑星を発見
- 2021/12/10 液体の水が見つかる可能性のある系外惑星、太陽系の近くに発見
- 2021/11/25 塵粒から巨大ガス惑星まで、成長の道筋を解明
- 2021/11/18 移動する惑星が原始惑星系円盤にリングを作る可能性
- 2021/11/01 「銀河系外惑星」候補を初めて発見
- 2021/10/28 すばる望遠鏡、生まれたての系外惑星の姿をとらえる