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Oratio



苦行の鞭

カクレキリシタン信仰の聖具に「苦行の鞭(くぎょうのむち)」というものがある。
私の住む島では、この苦行の鞭のことを「オテンペンシャ」と呼んで
今でも大事に祀っている。

苦行の鞭とは、犯した罪の償いのために
自らの体を鞭打つための道具なのだが
現在はお祓いのための道具と化している。
もともとは「ペニテンシア」というラテン語だったのが
尊敬語の「お」を付けて「御ペニテンシア」となり
更に訛って「オテンペンシャ」と呼ばれるようになったのだという。


先日、ある新聞社からの取材を受けた。
前もって取材の申し込みがあったため、日程を調整し
休みの日に自宅で取材を受けることとなった。
取材の目的は、カクレキリシタン信仰ではなく
カクレキリシタン信仰を受け継ぐ「人」らしい。

私自身は、オラショを唱えられるわけでもなく
津元と呼ばれる中心的な家の子供でもないのだが
普段の生活の中に信仰が溶け込んでいた小さい頃から現在までの話や
そんな私の今の思いなどを取材したかったようだ。


取材の中で、我が家に伝わる聖具をお見せした。
お水瓶・オマブリ・オテンペンシャ…
オテンペンシャは、同じカクレキリシタンの家であっても
どの家にも必ず存在する物では無く
オジ役と呼ばれる洗礼を授ける役職に就いていた者の
家にしかないのだと母から聞いた。
(ということは、我が家のご先祖様はオジ役を務めていたということになる。)

最近は見る機会が増えたオテンペンシャ。
うちのオテンペンシャには、何故だか寛永通宝が結び付けてある。
この古銭が何を意味するのかは分からない。
昨年末に数えたときは10個だと思っていた寛永通宝。
しかし、改めてじっくりと眺めると12個結び付けてあった。
そして、この12個のうち1個が割れている。


先日、インターネットでオテンペンシャについて調べていたら
オテンペンシャを詠んだ俳句にヒットした。
「汗臭き オテンペンシャの よまほつれ」
今はお祓いの道具として使われているオテンペンシャも
以前は、本来の使い方がなされていたのだろう。

例えば、キリシタンであるか否かを調べるための踏み絵。
ご先祖様たちは、命を、家族を守るために絵を踏み
絵を踏んだ自分を、この鞭で戒めたのだろうと推測する。


熱心なキリシタンからすれば、踏み絵を踏むなど言語道断の行為であり
裏切り者と受け取られたであろうと思う。
この踏み絵を踏まずに殉教した人々が、福者として崇められているのを見れば
絵を踏み生き残ってきたカクレキリシタンは
裏切り者・半端者だと思われても仕方ない。

しかし、全員が殉教していたなら
現在の日本に、キリスト教は根付かなかったかも知れないとも思う。
まぁ、過ぎた歴史について、どうこう言っても意味はないけど…。


今回の取材の際、オテンペンシャを見て
一つ気づいたことがある。
それは、結び付けられている寛永通宝がみな同じではないこと。
字の形や色などが同じではないのだ。
今度は、寛永通宝にはまってしまいそうな予感…^^;
苦行の鞭_c0254062_2195626.jpg

お水瓶・イズッポ(瓶に刺さっている木の棒)・古い木箱
苦行の鞭_c0254062_21104557.jpg

飲ませ忘れた?オマブリ 
私の住んでいる地区では、この小さい十字の紙のお守りを
口から飲み込んでました(現在は行ってません)。
オマブリは、人間だけでなく家畜にも飲ませてました。
この古いオマブリは、牛に飲ませ損ねたものだと思います^^;
苦行の鞭_c0254062_2184139.jpg

オテンペンシャ
苦行の鞭_c0254062_2117377.jpg

これで体を鞭打ったら痛いだろうなぁ。。。
けれど、それだけ信仰に対して、真摯に向き合っていたのだろう。
苦行の鞭_c0254062_21183936.jpg
苦行の鞭_c0254062_21192555.jpg

苦行の鞭_c0254062_21202631.jpg

苦行の鞭_c0254062_2121951.jpg
苦行の鞭_c0254062_21214039.jpg

様々な寛永通宝。
もう少し詳しく観察しないとね^^


あっ、そういえば
小さい頃に見たTV番組で、なぜか今でも忘れることが出来ない時代劇があった。
それは、ある侍が、日本人なのに外国に追放されてしまうという話で
まだ小学校低学年だった私でも、悲しくて悲しくて涙が止まらない内容だった。
あまりに衝撃的過ぎたのか、外国の街を疲れた表情で侍が歩く場面を
今でも鮮明に覚えている。

現在、カクレキリシタンを勉強する中で
あの侍が「高山右近」という名前のキリシタン大名だったことを知った。
高山右近はキリシタンを信仰していたために、海外に追放されたのだ。
この事実や歴史を知り、なぜあんなに悲しかったのか納得出来た気がした。
厳しい弾圧の中、細々とキリスト教を信仰してきたご先祖様たちと同じ血が
私の中にも流れているのだと、改めて思った。
(我が家は4代に渡って養子を迎え、その養子に嫁を迎えながら
繋いできた家だから、もともとの我が家の血を引くご先祖様と私に
血縁関係が存在するのかは定かではないが、親戚中がカクレキリシタンだったし
確実に血の繋がっている二人の祖父はカクレキリシタンの血を受け継いでいるから
私にも確実に、この信仰を守ってきたご先祖様と同じ血が流れていると確信出来る)






ご先祖様の謎を解き、私のルーツ辿る旅
まだまだ がんばるぞーーー^^¥



青空に太陽を、心に祈りを。。。
by tunagu--kokoro | 2013-02-01 21:49 | 私のルーツ
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青空に太陽を、心に祈りを
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