第25話 アタシ、魅力は平均値でって言ったよね!?

「――そっか。メイちゃんから、全部聞いたんだね」



 歓迎会も無事終わり、週明けの放課後。


 俺は庶務の仕事に専念するべく、古羊と中庭の花壇にパンジーを植えていた。



「おう。まあ、あまり聞いていて愉快な気持ちにはなれなかったけどな」

「う、うん。あまり気持ちのいい話じゃないもんね。でもそっか、だからなのかな、今日のメイちゃんやけにスッキリした顔をしてるのは」



 スコップ片手にざくざくこぶし大の大きさまで土を掘り起こしていく古羊。


 喋りながらでも決して手を休めないのは、さすがです。


 慣れた手つきでパンジーを花壇に植え直し、満足気に頷く。



「ししょーに話して心の整理がついたのかな? 今日のメイちゃんは、いつものメイちゃんだったね」

「あぁっ、代わりに俺がたくさんミスしてたけどな」

「あははっ! ししょーはもう少し生徒会の仕事を覚えないとね」

「が、頑張ります……」



 ほんとに今日の羊飼はいつも通り、いやいつも以上にすごかった。


 今までのミスを帳消しにするかのように、怒涛の勢いで仕事をこなしていく姿は、鬼気迫るものがあった。


 これはこれで心配だが、一応生徒会の仕事はとどこおりなく進んでいるので文句はない。


 むしろ今は俺が足を引っ張っているようなものなので、もっとしっかりしなければ!


 俺は軽く自分の頬をピシャリッと叩き、気合を入れ直した。



「よしっ! ここから名誉挽回してやる……うん?」

「どうしたの、ししょー?」



 土いじりをやめた俺を不思議そうに見つめる古羊。


 俺は辺りをキョロキョロ見渡して、



「いや……なんか緊張しているような、強ばった男の声がしたよう――なぁっ!?」

「し、ししょー……?」

「か、隠れろ古羊!」

「ほへっ? きゃっ!?」



 戸惑う古羊を無理やりその場に押し倒す。


 瞬間、古羊の顔が爆発してしまうんじゃと思うくらい真っ赤に染めあがった。


 胸の前で手を組み、あわあわと口を震わせ、涙の溜まった目で俺を見上げる。




「そ、そのししょーっ!? そ、そういう行為は愛がないとダメというか、お互いキチンと気持ちを確かめ合ってですね!?」


「シッ、静かに」


「で、でででで、でも! し、ししょーがどうしてもって言うなら、ボクもやぶさかじゃないと言うか……。でもでもっ! やっぱりそういうのは結婚してからというか……。と、とにかく、無理やりは嫌ァァァぁぁぁ――ッ!? え~ん、お母さ~ん!?」


「ええい、変な声を出すな!? 異常な性癖に目覚めるだろうが!」




 なんだかイケナイことをしている気分になってきたぞ。


 コイツは俺が現役女子校生の体を触ることで、性的に興奮する変態だとでも思っているのだろうか?


 ……いや、確かにそれは非常な変態ではあるけどさ……。



「いいから落ち着け。とりあえず、アレを見ろ」

「むぐっ?」



 手袋を外し、むぎゅっ、と古羊の口元を右手で覆う。


 俺は、えぐえぐっ、と泣いている古羊にも分かるように、視線を中庭の備え付けられたベンチの方へと向けた。


 釣られて古羊も視線を動かす。


 俺たちの視線の先、そこには緊張ではにかんだ笑みを浮かべる男子学生が居た。



「悪いな、急に何度も呼び出して。ただ、どうしてもすぐには諦めきれなかったんだ。だから、その……」



 気恥ずかしそうに頬を染めながら、必死に口をひらく男子学生。


 間違いない、これは。



「プハッ! こ、告白でしゅかっ!?」

「落ち着け、声がでかいぞ」



 あっ、ごめん……。と、ようやく状況を理解したらしい古羊が小さく謝る。


 だが、目だけは食い入るように告白現場に釘づけだ。


 やっぱり、女の子なだけあって、こういう惚れた腫れたみたいな話が好きなのだろう。


 古羊は目を爛々と輝かせ、男子学生を見守っていた。



「しかし、まさか偶然他人の告白シーンに遭遇するとは……」



 まだ新学期が始まって1カ月しか経っていないというのに、中々にチャレンジャーな男も居たものだ。


 だが、やっぱり告白できる奴はバシッやるんだな。


 同じ男として尊敬してしまうぜ。


 覗き見るのは失礼だとは思ったが、つい好奇心に負けて古羊と同じく見続けてしまった。


 そこには3年生を表す青いネクタイをした男と、俺と同じく2年を表す赤色のリボンに艶やかな黒髪を風に靡かせた美少女が立っていた。――ってぇ!?



(羊飼、おまえかよっ!?)

「へっ? め、メイちゃんっ!?」



 2人してとっさに物陰に身を隠す。


 目の前で突如は始まるラブロマンス。


 ちょっとロマンスの神様? もう少し空気を読んでください。


 なんでよりにもよって羊飼なんだよ?


 気まずくて仕方がないわ!



「「き、気まず過ぎてここから動けねぇ(ないよ)……っ!」」



 ここでバレても、良いことなど何1つない。


 仕方なく、俺たちは気配を殺して、2人の青春の1ページを見学することにした。




「ごめんな、何回も呼び出して? でも。もう1度だけ言わせてくれ。羊飼、おれ……おまえのことが本気で好きなんだっ!」


「…………」




『好き』と言われて、羊飼が申し訳なさそうな顔を浮かべる。


 男の方は羊飼のその微妙な変化に気づくことなく、自分の思いを口にしていく。




「最初は単なる好奇心だった。なんか1個下にキレイな奴がいるなと思って……。それで興味半分で声をかけたのがキッカケだった。でも、何度も声をかけているうちに、いつの間にか、おれの中でおまえの存在が大きくなって……。気がついたら、目で追いかけようになってた」


(す、すげぇっ! 歯が浮くような台詞が、マシンガンのように出てくるんですけど!?)




 聞いてるこっちが痒くなる。


 見たところ、羊飼よりもはるかに背の高い茶髪の男子生徒。


 俺はコイツのことを知っている。


 というか部活動紹介のときに見たことがあった。


 確か今年サッカー部主将に選ばれた『徳永』とかいう名前の先輩だったはず。




「他の連中から聞いたんだけどさ。今、付き合っている奴は居ないんだろ?」

「……えっと、はい。居ませんけど……。でも、やっぱりわたし、先輩とは付き合えません」

「……何か付き合えない理由でもあるのか?」

「そ、それは、そのぅ……」


「今朝フラれたおれが言うのもなんだけどさ、そうじゃないとすれば、おれは、どうしたらおまえの彼氏になれる?」


「ご、ごめんなさい……。どうって言われましても……」




 丁寧に頭を下げる羊飼。


 それでもやはり納得がいかないのか、徳永はなおも食い下がろうとする。


 その姿をハラハラした様子で見守る古羊。


 何故か告白を受けている本人よりも緊張していた。




「な、何か不満があるなら言ってくれ! おれだって、このままフラれたんじゃ、納得ができねぇよ。なぁ? どうして、おれじゃダメなんだ? もしかして他に好きな奴でも……?」


「いえ、好きな人はいません。でも……ごめんなさい。わたし、徳永先輩のこと、何も知らないし……。それで『好き』と言われましても、どうすればいいのか、分からないんです」




 そう言って1歩後ろへ下がる羊飼。


 その下がった分だけ、先輩がグイグイ距離を詰めていく。


 少し怖がっているのか、羊飼の声は若干震えていた。




「だ、だったらさ! 試しに1度付き合ってみないか、おれ達? おれは本気だけど、そっちは『お試し期間』ってことでさ。その間に、おれのことを知っていってくれたらいいよ! そっちだって、気が変わるかもしれないだろうしさっ! なっ? いいだろ?」




 お試し、という言葉が出た途端、羊飼があからさまに嫌そうな顔になった。


 もしかしたら佐久間との1件を思い出したのかもしれない。




「それでおれ、改めておまえにまた気持ちを聞くから……。そのときは、正式におれの彼女になってくれ!」


「……1つだけ」

「えっ?」

「1つだけ、質問してもいいですか?」




 羊飼が顔を上げ、まっすぐ相手を見つめる。


 そのどこまでも透き通る紅い目を前に、先輩は一瞬だけたじろいだ。


 ドクン、ドクン、と耳を澄ませば2人の鼓動が聞こえてきそうだ。




「徳永先輩から見て、わたし『羊飼芽衣』は、どんな人間に見えますか?」


「どんなって……。そりゃあ女神のように優しくて、可愛くて……それで笑顔がキレイだ。ハハッ! おれさ、おまえの笑った顔が好きなんだよ。何ていうか、いつも自信に満ち溢れているって言えばいいのかな? そんな自分に自信のある、強いおまえが好きなんだ」




 先輩が語り終えたと同時に、羊飼の瞳が悲しげにユラリと揺れた……気がした。



「……わたしは、先輩が言うほど、強い人間じゃありません。自分に自信だなんて、それこそ持って無いです……」



 ピシリッと固まる徳永先輩を前に、さらに続ける羊飼。




「それに『試しに付き合う』なんて言われても、わたしは了承できません。だって先輩は本気なのに、わたしはお試し期間だなんて……。やっぱりそんなの、徳永先輩に失礼だと思うから」


「失礼だなんてそんな! おれは全然問題ない――」


「それに、1度期待させておいて、後になってもう1度断るなんてことになったら……結局わたしは先輩を2回傷つけることになります」


「…………」


「こんなわたしを『好きだ』って言ってくれた気持ちは、嬉しかったです。でも、ごめんなさい。やっぱりわたしは……あなたとは付き合えません」




 そう言ってキッパリと相手に断る意思を示した羊飼。


 そこには俺の知らない少女の姿があった。


 猫を被っている姿でも、素がバレたときの姿でもない。


 羊飼芽衣という1人の人間が、そこに居た。


 徳永先輩が真剣に告白してきたからこそ、あいつはあいつなりに本気で考え、真摯に向き合い、誠意を持って断った。


 それはまったく関係ない第三者の俺から見ても、ハッキリ見てとれた事実だ。



「ごめんなさい。わたし、生徒会の仕事があるので、今日はこれで失礼します」



 そう言って踵を返そうとする羊飼。


 その姿を見て、ほっと安堵のため息をこぼす古羊。



「はふぅ……緊張したぁ」

「なんでおまえが緊張してんだよ」

「だ、だってぇ~」



 ふにゃっ、と顔を破顔させる古羊。


 徳永先輩には申し訳ないが、正直フラれたときは思わず安堵してしまった。


 自分でも、なんで安心したのかは分からない。


 それにしても偶然とはいえ、知り合いの告白現場なんか見るもんじゃないな。


 変に肩が凝っちゃったよ。


 さて、俺もちゃっちゃと仕事に戻らないと……。



「……ふざけんな。なんだよそれ、なんなんだよそれ!」

「う、うん?」

「えっ? な、なにっ?」



 一転。


 突然、徳永先輩の纏っている雰囲気が変わった。


 優しげだった眼差しは、これでもかと言わんばかりに敵意が込められ、鋭く羊飼を睨んでいる。


 そのあまりの豹変ぶりに、思わず古羊と一緒に間の抜けた声をあげてしまう。


 羊飼も、こんな先輩を見たことがなかったのだろう。


 先輩の豹変に目をパチクリさせ、オロオロし始めた。




「付き合っている相手が居ないんだろ? なら、何で断るんだよ! そんなにおれじゃ、ダメなのかよ!?」


「……えっ? あの、徳永先輩?」




 フラれた腹いせか、それとも単に男のプライドの問題かは知らないが、烈火の如く怒り狂う先輩。


 明らかに場の空気が変わっていた。



「2度フラれるくらいがなんだ! おれが傷つこうがどうなろうが、それこそおまえには関係ねぇだろうが! いいよなぁ、おまえみたいなモテる女はっ! そうやって、おれみたいな男を、何人も振ってきたんだろう?」



 徳永先輩は羊飼を小馬鹿にしたように鼻で笑うと、自嘲気味の笑みを浮かべてこう言った。




「分かってんだよ。特定の男と付き合うより、たくさんの男に囲まれている方が、何かと都合がいいってことくらいよぉ! ほんと最低だな、おまえ!」


「ち、違う……っ! わたし、そんなこと思ってないです!」


「マジ最悪だよ。ちょっと見た目がいいからって、調子に乗るなよ? 普段から男の顔色ばかりうかがって、手ごろなバカの気を引いて、それで毎回、近寄ってきたヤツは例外なく振るんだろ? おまえ、そんなことして楽しいのかよ? ほんと性格クズだなっ!」


「た、楽しいわけないっ! だからわたしは……アタシは……」




 これでもかと悪態を吐かれ、上手く言い返すことが出来ず、しおれたヒマワリのように俯いてしまう羊飼。


 そんな彼女を目にした瞬間。



「――は~いストップ、ストップ。怒らない、怒らない」



 気がつくと、俺は手を叩いて2人の仲に割って入っていた。



「えっ? お、大神くん……?」

「な、なにやってんの、ししょーっ!?」



 突然現れた俺に、目を丸くする羊飼と古羊。


 反対に、手負いのトラのような瞳で俺を射抜く徳永先輩。


 やがて徳永先輩のドスの利いた声が、低く中庭に響いた。



「誰だよ、おまえ?」

「通りすがりのモブマッチョっすよ」



 そう言って、今にも泣き出しそうな羊飼の傍に寄り添う。


 可哀そうに、こいつ本気で身体が震えてるぞ。


 羊飼の「大神くん、なんで……?」という声を無視して、俺は先輩に声をかけた。




「男の顔色をうかがって、手ごろなバカの気を引いて、それで近寄ってきた男を例外なく振るぅ~? ハッ! アホらし。そんな不誠実なこと、コイツに出来る訳ねぇっすよ。そもそも、コイツは先輩の言うような、軽くて薄情な人間じゃない。そんなことも分からねぇなら、とっととこの場から消えてくれないですか?」


「なっ!? テメェ……言わせておけばっ!」




 顔を赤くし、我を失った徳永先輩が、俺の襟首を締めあげてくる。


 拳を固く握りしめ、今にも殴りかかってきそうだ。


 俺はガンジーも裸足で逃げ出すほどの平和主義者だ。


 が、ここで暴力沙汰なんて、誰も得しないので勘弁してほしい。




「少しはコイツの気持ちも、汲んでやってくださいよ。放課後に男の、しかも先輩から呼び出されて、不安にならない女なんて、いないっすよ」


「うるせぇっ! おまえには関係ねぇだろ!」




 くいくいっ、と制服の袖を引っ張られる。


 見ると羊飼が震える指先を必死に動かして、俺の制服をちまっと握っていた。



「も、もういいの大神くん。わたしのことはもういいから、大神くんは――」

「わりぃ、羊飼。でも、少し黙っといてくれ。……俺さ、今、久々ひさびさにカチンときてんだよ」



 羊飼の息を飲む音が聞こえてきた。


 構わず俺は先輩に視線を向ける。


 マジで意味が分かんねえ。


 本気で羊飼のことが好きなら、今までコイツの何を見てきたんだよ?



「仮に徳永先輩の言う通り、もしコイツがそんな薄情な奴なら」

「なんだよ?」

「――先輩はそんなコイツの、どこに惚れたんだよ?」



 俺の言葉に先輩が押し黙る。


 これ以上の言葉は無粋かもしれないが、動き出した俺の唇はもう止まらない。




「コイツの笑った顔が好きなんですよね? 先輩さっき、自分でそう言ってたじゃないっすか。あの言葉はウソだったんですか?」


「そ、それは……」


「確かに俺は関係ない人間ですよ。本当はこんなことに首を突っ込んじゃいけないことも、分かってます。でも、同じクラスの仲間が、こうも裏でボロクソ言われてちゃ、こっちは我慢できないんだよっ!」




 言いたいことは言った。


 あとは煮ようが焼こうが殴ろうが、好きにすればいい。


 俺の襟首を掴んでいた徳永先輩の手が、ゆっくりと外れていく。


 本当は先輩だって分かっているんだ。


 ただ、ついカッとなってしまっただけで、心にもないことを言ってしまっただけなんだろう。


 だから。




「だから訂正してください。羊飼はそんな酷い奴じゃないって。徳永先輩だって、本当はちゃんと分かっているんですよね?」


「大神くん……」




 力なく俯く徳永を前に、もう大丈夫だと確信する。


 とりあえず、最悪の事態だけは免れたようだ。


 羊飼の方へ向き直り、肺にたまった空気を緊張と一緒に吐き出す。



「それじゃ羊飼、俺、今日用事があるから先に帰るわ」

「あっ……う、うん。あ、ありがとう……」



 血の気が失せていた羊飼の顔に赤みが増していく。


 あの様子なら大丈夫だろう。


 ここから先は2人の問題だ。


 これ以上俺が首を突っ込んでいい話じゃない。


 色々と偉そうなことを口にしてしまったが、羊飼があれ以上傷つくよりは全然マシだ。


 俺は古羊が待機している場所まで戻り、




「というわけで、気まずいので、今日は先に帰ります。あとはよろしくっ!」


「はぁ……まあ今回はしょうがないかなぁ。わかったよ。それじゃ、後のことはボクがやっておきます」

「ワリィな。今度、埋め合わせするわ」



 苦笑を浮かべる古羊に、同じく何とも言えない笑みで返す。


 そうして俺は、中庭に3人を置いて校舎の中へと消えていく。


 制服に着替えるべく校舎の中を歩きながら、ゆっくりと頭を抱え込んだ。


 ……やべぇ、出過ぎたマネしちまった。


 なんて後悔しながら、男子更衣室で制服に着替え終え、気がつくと校門の前に居た。


 このまま帰っても、自分のやったことを思い出して悶え死にそうだし、元気でも呼び出してカラオケにでも行くか。


 ポケットからスマホを取り出して、我が親友に連絡を取ろうとして、気がつく。



「うん? 誰だ、アイツ?」



 校門の近くで身を隠すように、こちらを覗き見ていた男子学生を発見する。


 どう見ても他校の制服だ。


 ……でもアレ?


 あの制服、どっかで見たような……。



「そうだ、そうだ。確か佐久間っていうヤツが着てた制服だ」

「っ!」

「あっ、おい!」



 声が大きかったのか、男子学生は「佐久間」という言葉に反応して肩をビクッと震わせると、そのまま逃げるように消えてしまった。


 な、なんだったんだ?



「まあ、いいか」



 別に大したことはないだろう、


 そう思って、俺は再び元気に連絡しようとスマホを弄り出す。


 ……このときにして思えば、あのときに何が何でもあの男子学生を捕まえて、無理やりにでも事情を聞き出しておけばよかった。


 それが出来ていればきっと、あんな最悪な事態には、ならなくて済んだハズなのに。










 あの男――佐久間の牙が、我らが会長を狙っているとも知らないで、俺は呑気にスマホを弄り続けた。

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