■胸のモヤモヤが晴れました

さて、お待たせを致しました。昨日の記事(違和感の正体〜その1)の続きを書きます。
 
肝心なところを書く前に昨日は前置きが長くなりすぎたのですが、 私にはこの本を読んでいてハッとした箇所がありました。

魂の退社
稲垣 えみ子
東洋経済新報社
2016-06-09



それはこちら↓


商売とは、ただ売って儲ければよいというものではない。ものの値段とは需要と供給によってのみ成り立つものではない。その「モノ」が何であるかによって、許される値段と許されない値段があるその分を守ることが、長い目で見ればその商売を守ることになるのである。もちろん損をしては元も子もないが、儲すぎてもいけない。

このくだりは、著者の赴任先である香川県では、讃岐うどんブームが起こった時に全国から押し寄せるお客さんたちに対応すべくお店を大きくしたり駐車場を確保したり、それなりの投資を迫られたお店が少なくなかったにもかかわらず、ほとんどの店がブームになったからといって値上げをしなかったことについて書かれたものです。

そして稲垣さんはこう続けます。


 まあそんなことは私が言わなくても商売をしている人なら百も承知のことだと思いますが、言うは易し、行うは難し。特に、物事はおしなべて好調の時に間違いの種が育っていくものだ。そう考えると、ブームの中にあって、ただお客さんに喜んでもらうこと、周囲に迷惑をかけないこと、そして調子に乗って儲けすぎようとはしないこと、これを守り通した「うどん県」の基軸通貨を生み出す人たちの真っ当な心意気に、改めて経済とは何か、お金とは何かについて、深く考えさせられたのである。


私には、このブログに繰り返し書いていますが、近頃違和感を覚える商売がいくつもあります。


・無料でネットに載ってることしか教えないのに高額な料金を取る起業セミナー


・茶飲み話のような話しかしないのにコンサルだと称して世間知らずの主婦から何万円もカモる自称ビジネスコンサル


・お金が循環するとかトラウマから開放するとか言って、お金どころか愛とセックスにも飢えて人生に不安を抱える女性たちから何十万円もふんだくる子宮教のセッション


・これさえ読めばお金が儲かる、成功者の思考法がわかると煽る情報商材


・ド素人が書いた内容のうす〜いぺらっぺらの文章の癖にお金を取る有料noteや電子書籍


・クリエイターとしてのデザイン性の高さや職人としての技量がないのに、「手作りの温もりがあるから」「手間がかかっているから」「一点ものだから」「ヴィンテージだから」と、価値に見合わない高額な値段をつけるハンドメイドの服やアクセサリー


・ジュエリーとしての価値は無く本来なら値段がつかない輝きのないクズダイヤなのに、「オーガニック」「エシカル」「キンバリープロセス」と能書きをつけて本物のジュエリーが買えるほどの値段で販売するハンドメイドいんちきジュエリー



何を売ろうと構わないけれど、ものには売っていいもの、そして売っていい値段があると思う。



なのに、近頃は言葉のトリックを駆使して、価格に見合わないものやサービスを売りつけようとする人がやたらと目につく。
そして彼らは、一時の人気に乗じて価格をつり上げることを、さも真っ当な商売(ビジネス)であるかのように、まるで自分に正当性があるかのように、自慢げに吹聴(ふいちょう)して回るのだ。

私はそうした価値と価格のズレがあまりに激しいものを見かけるにつけ内心でモヤモヤしていたのだけれど、その違和感をきちんと言葉にすることができなかった。

けれど、稲垣さんがこの本の中で、実に分かりやすく簡潔な文章で表してくれていた。誰にでも分かる言葉で無駄無く説明ができるのは、さすがは元新聞記者だと思ったのだった。