2023年04月05日

【給特法】「働かせ放題であってはならない」 永岡文科相

 永岡桂子文科相は2月20日、衆議院予算委員会第4分科会で、給特法の見直しに向けた思いを聞かれ、「働かせ放題であってはならない。今後、勤務実態調査の結果等を踏まえ、教育の質の向上に向けて、働き方改革、処遇の改善、学校の指導・運営体制の充実を一体的に進めていきたい」と答弁した。これまで文科省は春ごろに公表する教員勤務実態調査の結果(速報値)を踏まえ、検討していく考えを繰り返し説明してきており、今回の答弁は給特法の見直しに向けて一歩踏み込んだ言い回しとなっている。

 衆議院予算員会は、20、21の両日にわたって8つの分科会を開き、このうち第4分科会では文部科学行政について集中的な審議が行われた。

 給特法(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)の見直しについては、緒方林太郎議員(有志の会)が「『働かせ放題』になっている」として取り組みをただした。これに対し、文科省の藤原章夫初等中等教育局長は「現在、勤務実態調査を行っている。今後、教師の勤務実態や働き方改革の進捗状況をきめ細かく把握し、その結果を踏まえ、教師の処遇を定めた給特法などの法制的な枠組みを含めて検討していきたい」と述べ、これまでの立場を改めて説明した。

 これを受け、緒方議員は「事前に通告していなかったが、大臣に思いを聞かせてほしい」と要求。

答弁する永岡文科相(衆議院インターネット審議中継から)

 永岡文科相は「(教職調整額として)4%、一般公務員よりは高い給料をもらい、そして残業代がないというところは、本当に教員の苦労がしのばれる。特に土日の部活動の顧問の仕事は、本当にちょっと働かせ放題、もうボランティアし放題と、そういうふうに思っている。春になると勤務実態調査(の結果の速報値)が出るので、それ以降、しっかり対応していきたい」と答弁。給特法の見直しに関連し、土日の部活動指導に絡めながら「働かせ放題」「ボランティアし放題」に言及した。

 ここで緒方議員は、質問の矛先を東京五輪パラリンピックの誘致に伴う汚職の疑いとフランスでの予審手続きに変えた。そのやりとりの途中、永岡文科相は先ほどの答弁を補足。「私、働かせ放題と申し上げたけれども、これは働かせ放題であってはならないということ。今後、勤務実態調査の結果を踏まえ、教育の質の向上に向けて、働き方改革、処遇の改善、学校の指導・運営体制の充実を一体的に進めていきたい」と説明し直した。

 給特法の見直しを視野に入れた教職員の処遇改善については、岸田文雄首相が2月10日、今年6月ごろに閣議決定する「経済財政運営と改革の基本方針2024」(骨太の方針)で、方向性を示す考えを表明し、「働き方改革を加速化し、処遇の見直し等を通じた教育の質の向上に努めていきたい」と述べている。自民党では「令和の教育人材確保に関する特命委員会」(委員長・萩生田光一政調会長)が有識者などへのヒアリングを続けており、今年5月ごろまでに議論を取りまとめ、「骨太の方針」に反映するよう目指している。文科省では、昨年12月に有識者や教育委員会、学校関係者で構成する調査研究会を立ち上げ、今年春の教員勤務実態調査の速報値公表に先立ち、教員の処遇や勤務制度を巡る情報収集や論点整理に取り組んでいる。

 一方、永岡文科相は国会での答弁を後から補足説明するケースが目立っている。2月2日午前の衆院予算委では、今春の卒業式での児童生徒のマスク着用について「家庭で決めた場合はマスクを外しての参加になる」と答弁。この内容が卒業式にはマスクを外して参加することも可能となると一部で報じられたことから、同日夕方になって記者団に「現時点で卒業式のマスクの取り扱いについて決めたという事実はない。文科省としては政府全体での検討を踏まえて対応を検討したい」と説明し、答弁内容に補足を加えた。卒業式でのマスク着用については、政府の新型コロナウイルス感染症対策本部が2月10日、「マスクを着用せずに出席することを基本」と決定。これを受け、文科省は対処方針を都道府県・政令市の教育委員会に通知した。

衆議院予算委員会第4分科会における給特法についてのやりとり

 緒方林太郎議員(有志の会) 教員の給特法についておうかがいしたい。前回改正(2019年12月成立)によって在校等時間の管理において月45時間で収めるという方向になっているが、現場の声として、結果として持ち帰りが増えたという指摘もある。(教職調整額として)4%の給与を払えば、あとは『働かせ放題』になっている給特法の問題は、真剣に取り組まなくてはならない。教員勤務実態調査の結果等も踏まえつつ、今後どうしていくのか。連合からは労働基準法37条における時間外休日および深夜の割増賃金に踏み込む可能性についても言及があるが、どう考えるか。

 藤原章夫・文科省初等中等教育局長 教師の給与の仕組みについては、その自発性や創造性に基づく勤務に期待する面が大きいことなどにより、どこまでが職務であるのか切り分け難いという考え方に基づいて現行の教職調整額のシステムが設けられている。一方、給特法の制定から半世紀が経過し、教師に求められている仕事の内容も変化をし、また法制定当時の想定を大きく超える長時間勤務の実態が明らかになっている。こういった状況の中で現在、勤務実態調査を行っている。今後、教師の勤務実態や働き方改革の進捗(しんちょく)状況をきめ細かく把握し、その結果等を踏まえ、教師の処遇を定めた給特法等の法制的な枠組みを含めて検討していきたいと考えている。

 緒方議員 事前に通告していなかったが、大臣に思いを聞かせてほしい。4%払えば残業し放題というのは民間企業でやるとブラック企業である。そういう状態に学校がなっていることについて、大臣の思いを聞かせてほしい。

 永岡桂子文科相 この給特法が制定され、(教職調整額として)4%、一般公務員よりは高い給料をもらい、そして残業代がないというところは、本当に今の教員の苦労がしのばれる。特に土日の部活動の顧問の仕事は、本当にちょっと働かせ放題、もうボランティアし放題と、そういうふうに思っている。春になると勤務実態調査(の結果の速報値)が出るので、それ以降、しっかりその対応をしていきたいと思っている。

 ※編集部注 続いて質疑は、東京五輪パラリンピックの誘致に伴う汚職の疑いで、フランスで予審手続きが継続していることに移り、そのやりとりの途中で、永岡文科相が給特法に関する答弁を補足した。

 永岡文科相 (先の答弁で)私、働かせ放題と申し上げたけれども、これは働かせ放題であってはならないということ。今後、勤務実態調査の結果等を踏まえ、教育の質の向上に向けて、働き方改革、処遇の改善、学校の指導・運営体制の充実を一体的に進めていきたいと思っている。

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給特法では月8時間の時間外労働の賃金が上乗せされているが、それを月45時間に収めるようにと指導しているが月8時間の間違いか? 45時間分の賃金出てないけど。
埼玉県で田中先生が裁判で争っているが教員の職務とそうでないものが示されていたが、おかしなものがたくさんあった。それぐらい教員の仕事と自主的なものとの境目が分かりづらいってことなのか。
朝の始まりが子どもが登校した時から(8時前)中学は部活終わり(夏場は18時頃)で勤務時間は8:10~16:40。
朝の勤務時間前と放課後の勤務時間後は教員が自主的に行っていることなのか?
まずは教員の仕事と認められなかったことは人を雇ってやってもらうなどの仕分けが必要ではないか?

給特法で支給対象とされた限定4項目ですら、特勤手当が払われない、払わないようにされています。私の勤める県では、「4週の箱」 と呼ばれる県独自の制度で、4週間前までに時間外勤務申請しないと、勤務割り振れない仕組みになっています。管理職が、教員一人一人に勤務表を作って管理しています。この勤務表4週間ごと作るので、「4週の箱」と呼ばれます。
さて、「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」いわゆる「給特法」に基づく時間外手当は、私が勤める県では2時間以上600円の支給と決められています。
つまり、4週間前までに計画されていない時間外勤務は、2時間以内であれば、割り振りもされなければ、時間外手当ももらえません。つまり、意図的に「タダ働き」させられるように仕組まれています。そして、もらえる金額も2時間超過勤務で600円。とても、教員になろうという若者に言えないほどの少額です。教員不足になるわけだと妙に納得してしまいます。

どうでもよい仕事を削減すること。
特定の教員に負担がかかるようなもの、特に「総合的な探究の時間」について、
あり方を修正するべき。学年全体で同時に同じ事をやるような事はやめ、担当教員が考えてやる形するべき。そうしないと、「担当者」がどうしようもない場合は周りが大変になり、その逆は、担当者待ちになる。LHRとは違う!

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