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(万太郎)ハハ… フッ。 ハァ…。
ハハ… ハァ… ふう。
ハァ… ハァ…。 フフッ ハァ…。
ああ… わあ…。
んっ…。
あっ。 フフッ。
ハァ… ふう…。
フフッ。
ハァ…。
あっ!
おまん 誰じゃ?
彼の名は 槙野万太郎。
幕末から昭和へと移り変わる時代の中をただ 植物を愛し天真らんまんに駆け抜けました。
おまん 見たことないき。
ひょっとして 新種じゃないかえ?
ハッ… のう 初めまして!
♪~
♪「言葉足らずの愛を 愛を貴方へ」
♪「私は決して今を」
♪「今を憎んではいない」
♪「命ある日々 静かに誰かを 愛した日々」
♪「空が晴れたら 愛を、愛を伝えて」
♪「涙は明日の為 新しい花の種」
♪「空が晴れたら」
♪「逢いに、逢いに来て欲しい」
♪「涙は枯れないわ 明日へと繋がる輪」
♪「言葉足らずの愛を」
♪「愛の花を 貴方へ」
昨日まで 開いちょらんかったよね?
葉っぱ ちんまいのう。
(くしゃみ)
(タキ)おまさん 今年も無事 甑倒しの日を迎えることができました。
えい酒が出来ますよう 守っとおせ。
(市蔵)失礼します 大奥様。今 行きます。
どうか 今日一日も万太郎をお守りください。
大奥様 おはようございます。(一同)おはようございます。
おはよう!
今年も 甑倒しと相成りました。
半年間 もろみの仕込みご苦労さんでした。
今日は 仕込みの総仕上げ!よろしゅう頼みます!
はい!(市蔵)峰屋一同今日も しっかり 励みましょう!
(一同)励みましょう!
皆 よろしゅう!
(たま)坊ちゃん!?
あっ…。 倒れたがですか? 熱ですか?
ん~! よいしょ。
何ちゃあない。 見よっただけじゃ。
ああ…。
猫でも おりましたろうか?
それよりも坊ちゃん 今日が来るがをあんなに楽しみに待ちよったに。
そうじゃった!
走ったら 熱 出ますき! 坊ちゃ~ん!
お母ちゃん! お母ちゃん!
・お母ちゃん! お母ちゃん!
お母ちゃん 今日 ごちそうじゃ!(ヒサ)万太郎 挨拶。
おはようございます。はい おはよう。
ねえ お母ちゃん 菓子もあるろうか?
堀田の寛ちゃんにやるゆうて 言うてしもうたき!
こら シワになるき。 ちゃんとしいや。
うん 立派やき。 よう似合うちゅう。
フッ 万太郎 今日は 家じゅう忙しいき。いたずらしたら いかんぞね。
うん!
お姉ちゃん おはよう!(綾)万太郎!
走ったら おばあちゃんに叱られるぞね!
お母ちゃん おはようございます。おはよう。
お薬 持ってきたよ。ありがとう。
(桶洗い唄)
今日は 倒しの日。
米を蒸すためのを片づけ仕込みが終わったことを祝う造り酒屋にとって 大切な一日です。
この日 蔵元は盛大な祝宴を開き半年間働いてくれた蔵人たちをねぎらいます。
(キヨ)うわ 山椒餅おいしそうやね。(ミツ)そうやね。
食べたいき。
菓子や!
早う 置いてきて。はい。
(吹きこぼれる音)ああ ああ ああ…。
ああ 鍋が吹きこぼれゆう!ああ すみません!
大丈夫やったかえ?はい。
(竹雄)うん? 坊?
あっ 竹雄! 終わったらまきも足しちょいて。はい。
持ってくき。
(綾)なあ お母ちゃん万太郎 何で ああながやろ?
「ああ」って?すぐ熱出すくせに じっとしておれん。
弱~いくせに やりたがり。
どればあ心配かけちゅうがか分かってないがよ。
フッ…。
お母ちゃんも おかゆもうちっと頑張らんと。
は~い。
・ (蔵人たちの歌声)
はあ…。この歌も もうすぐ聴けんようになるね。
あんちゃんらあいつもより そわそわしちょったよ。
もうじき 自分の村に帰れるがやき。
千代紙でやっこを折ったが。 お土産に。
ここにおる間 いっぱい遊んでもろうたき。うん。
・ (歌声)
おかゆ もう一口 食べようかな。はい。
お母ちゃん 寒うない?ありがとう。
お母ちゃんは 綾が しっかりしゆうき安心やよ。
あとは もうちっと綾も笑うてくれたらね。
おかしゅうないと笑えんもん。
いや~ お母ちゃん! 嫌やき!
フフフフ…。
おう 坊ちゃん! 今朝 お届けしましたき。ありがとう!
あっ 峰屋の坊ちゃんじゃ!
(豊治)ホンマに いつもありがとうございます。
(伸治)ありがとうございます。 また来とおせ。
豊治おじちゃん! おはようございます。
万太郎 こんなとこで 何しゆう?
倒しじゃろう?
ばあ様は 知っちゅうがか?
すぐ戻るき!
ああ… 走りなよ!
あっ 峰屋の。 おはようございます。どちらへ?
おはよう。 ちょっと…。
(せきこみ)
寛ちゃん 来たで!
峰屋の坊ちゃん!? 旦那様! 旦那様!
(寛太)万ちゃん!(鉄寛)おお 万太郎!
大丈夫かい?万ちゃん…。 万ちゃん! 万ちゃん!
走ったき心の臓が びっくりしたがでしょう。
今は 肺の腑も落ち着いてますき。
はあ…。(ふじ)あ…。
おまんは どういて走ったが!
そうやち… みんなあ 走りゆうよ。
おまんは みんなあと違う。えいき 寝よりなさい。
ごちそうは?
先生 こちらでございます。ああ はい。
取っておきますき今は 休んでください。
どういて わしは みんなあと違うが?
はあ…。
槙野家は 代々佐川の領主 深尾家の御用掛を務め名字帯刀を許された豪商でした。
土佐で酒造りを許されている蔵元の中で槙野家は 最も由緒ある家の一つでした。
峰屋の末永い弥栄を祈りまして!
♪~
(紀平)おい 万太郎が見えんが…。
フフフフ… あいつ また倒れよったぞ。またか!?
あ~ もう難儀じゃのう。
あ~ 本家のご当主が顔も見せんと。のう 伸治。
いや お前が万太郎の年にはもう 店の手伝い しよった。
ほうじゃ。
ただでさえ 酒蔵仕切っちゅうががばあ様じゃゆうに…。 フフフ…。
この先 あの弱ミソが…。(笑い声)
豊治! 何て言うた?え?
分家の分際で 何て言うた?もういっぺん 言うてみ!
ばあ様 いや ちと話しよっただけじゃき!いやいやいや…。
わしらも 案じゆうがじゃ。
じい様らあ いっぺんに亡くしてばあ様も 大変じゃったろ? なあ。
もっと わしらを 頼ってくれても…。
いらん世話じゃ!
おまんらが いくら案じてくれよったち所詮 分家じゃ!はっきり言うちょく!
おまんらが いくら束になろうが万太郎一人には かなわん!
・(にぎやかな声)
・(物音)
・(豊治)ばあさん いこじになりおって!
「分家は みんなあ」言うけんど。 え?
峰屋の跡取りやったら うちの伸治の方がよっぽどえい!
万の字は どうせ長うは生きられん。
ばあさん 目をそむけちゅうだけじゃ。
ヘヘ…。 いっそ 万の字は生まれてこん方が よかったな。 ハハ。
♪~
お母ちゃん…。
♪~