佐々木淳吾's DIARY
【ぢゅんご式大人の読書感想文】
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15年05月27日
「水族館。汗と涙と」
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TBCラジオの特別番組を作った。5月10日に閉館した、マリンピア松島水族館の物語である。昭和2年創業当時のようすや、仙台急行(株)への経営引き継ぎにまつわる驚きのエピソード。空前のラッコ人気に、マンボウの飼育日数世界記録、東日本大震災からわずか1ヵ月半での復旧等々。88年の歴史に隠された数々のドラマを、社長とベテラン飼育員の証言で振り返った。
去年の秋から取材を始め構成と編集に追われる中、息抜きかつあわよくば何かの参考になればと手に取ったのが、木宮条太郎の「水族館ガール」だ。架空の自治体「千葉湾岸市」の観光事業課に勤めて丸3年となる由香は、ある日突然、市が運営する水族館へ出向を命じられる。事務方ではない、飼育員としてのお仕事。理由は後半で明らかになるが、本人にとってはまず無茶苦茶な異動であった。お話はイルカのトレーナーとして徐々に才能を開花させて行く由香の成長物語であり、ややくすぐったい恋愛小説ともなっている。
当たり前のことだが、水族館は生き物の命を扱う場所だ。そこには生もあれば、死もある。由香もやがて悲しい別れを経験する。それでも飼育員たる者、時に胸の痛みを押し隠して目の前の業務をこなさなくてはならない。思い出を作りに足を運ぶお客さんのため、言い訳などせず笑顔で現場に立たなくてはならない。
「水族館ガール」は多くの人にとって非日常的な空間が舞台ながら、実はどんな仕事にも求められるプロとしての心構えを説いているのだ。
さて、マリンピア松島水族館。閉館の主な理由は施設の老朽化であった。建物や設備を更新したくても資金や代替用地が確保できず、仙台市内への移転も様々な事情から頓挫した。社長は以前、「イルカのショーをやりたかったが最後まで広い水槽が作れなかった」と、僕の向けるマイクに悔しい思いを語ってくれた。
「水族館ガール」を読みながら、マリンピアでイルカのショーができたらどうだったろう、営業を続けられていたかもな……と想像したらちょっとグッと来た。
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