コンサルに未経験で転職すると、先輩コンサルタントやマネージャー、パートナーから数々の指摘を受けることになる。最初はコンサルタントとして持っていて当たり前のマインドだったり基礎スキルに関することが必然的に多くなり、特に辺鄙なことも言われないので素直に聞いていれば良いのだが、あるレベルを超えてくると、ただ素直に聞いているだけでは改善することが難しい指摘も出てくる。

その典型例が「思考が浅い」だ。資料をマネージャーに持っていった時に「全然考えられてない。思考が浅い」と言われた経験がある若手コンサルタントもいるのではないだろうか。

しかし、明らかな正解がある指摘ではないため、最初は何を言われているのかわからない。何をどう改善すべきかもわからないのだ。本当はその指摘をしてきたマネージャーに聞くのが一番早いし正確なのだが、昨今のリモート環境でサクッとそれをすることが難しくなっていることは理解できる。

そこで今回は私が思う「『思考が浅い』とは何を言われているのか」を説明してみる。

まず結論から言うと、「思考が浅い」とは結局のところ「考えることをサボるな」と言われているのだ。どういうことか。

「思考が浅い」は大きく次のふたつに分類される。
①そもそもの問いを疑えていない
②解に付随する問いに答えられていない

順に説明しよう。

①そもそもの問いを疑えていないというのは、例えばクライアントから「A事業の事例を調べて欲しい」と言われたとする。あなたは言われた通り、A事業の市場規模、成長性、主要プレイヤーなどについて調べる。そしてマネージャーに報告する。「クライアントからA事業の事例を調べて欲しいと言われており、調査しました。A事業は・・・」するとマネージャーはこう言うのだ。「待って。そもそもの目的は?」

文章にして客観的に見れば当たり前と思うかもしれないが、これが多くの未経験転職者に起こっている「思考が浅い」の実態だ。
クライアントはA事業への進出を睨んで質問しているのかもしれないし、A事業を既に手がけている子会社の撤退を目論んでいるのかもしれないし、はたまた単なる興味本位かもしれない。これがわからずしてクライアントに貢献することは難しい。目的によって、調査の深さも調査すべき項目も変わってくるからだ。

というわけで、そもそもその問いは何のためにあるのか?何をどう解決すればクライアントは満足するのか?という根っこを考えられていないと、「考えることをサボるな」=「思考が浅い」になる。

もうひとつは②解に付随する問いに答えられていない、だ。例えば先程の例で言うと、そもそもの目的がA事業の買収可能性を探っているのだとして、A事業の市場規模や収益性を調査したあと、マネージャーに報告する前に、一旦立ち止まって考えてみる。「これをクライアントに渡したら何と言われるだろう」あるいは「自分がクライアントの立場なら、これが資料として出てきたら何と言うだろう」。

クライアントは買収の可能性を探っている。当然、競合が同じような事業を手がけているかどうか気になるだろう。競合に限らず、直近の買収事例で目立つものがあればあった方がいいだろう。買収のスキームは?いや、それは現段階の論点ではないだろう。

このように一手間加えてしっかり立ち止まって、本当に知りたいことにタッチできているかを考えることができていないと、「考えることをサボるな」=「思考が浅い」になるのだ。

コンサルタントの本質的な仕事は「考える」ことだ。実行部隊で手を動かすことが求められる状況にあってもそれは同じ。ITプロジェクトでとにかくバグを潰していくことが必要な局面でも、1日のうちのどこかで、「そもそもなぜこのような状況になってしまっているのか?」「これからどのようにしてこの状況を回避するか?」「誰に何をしてもらえばこの状況は好転するか?」ということを考える時間を作らなければならない。それができないとどこかで行き詰まる。
コンサルってみんな仕事ができるの?

ということで、考えることをサボると、マネージャーには見抜かれるし、クライアントに本当の意味で長期に渡ってコンサルティングサービスの価値を感じてもらうことが難しくなるよというお話でした。