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【無限列車編】我が財力の前に平伏するといいわ!とでも言っておく。② - たなかな@完結したので倉庫の小説 - pixiv
【無限列車編】我が財力の前に平伏するといいわ!とでも言っておく。② - たなかな@完結したので倉庫の小説 - pixiv
10,606文字
金の力EX
【無限列車編】我が財力の前に平伏するといいわ!とでも言っておく。②
転生、成金我儘令嬢が推しを生かすために頑張る話、続編です。
1話(novel/11783050
3話(novel/11840836
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2019年10月14日 17:41


――おかしな匂いのする人。

 竈門炭治郎にとって、有栖川とはそんな人だった。
初めてあったのは柱合会議。雰囲気からして剣士ではないことは分かっていたが、その華奢な体格に反して、随分と大きな態度だったことは覚えていた。そのあと聞いた噂は「我儘令嬢」「意味不明・理解不能・私利私欲」「傲慢で無知」な有栖川。とても鬼殺隊にいる人だと思えずにいたが、もう随分と前から鬼殺隊にいるそうで。

「俺も詳しくはないんだけど、炭治郎だって有栖川甘味くらい知ってるだろ? あそこの会社の娘さんだかなんかで、すごい莫大なお金を鬼殺隊に寄付してくれてるんだって。その変わり鬼殺隊を護衛に使ったりとか、まぁちょっと我儘は許されてる、みたいな感じらしいよ」
「そ、そんなことが許されるのか!」
「でもその額が本当にすっごいらしくて、柱があんなにデカイ屋敷もらえる理由もそうだとか、育手とか、鬼殺隊にかかわる全部にそりゃもう考えられない額の寄付してるらしくてさ。まぁお館様が許してるし、自分も世話になった~てじいちゃんも言ってたけど」

 俗世に疎い炭治郎でも「有栖川甘味」はさすがに知っている名前だ。安価な値段で非常に美味しい菓子を提供しており、町に行ったお土産で持って帰れば弟たちに喜ばれたものだった。善逸に見せてもらった菓子を見れば、そこには「有栖川」と書かれたマークがあり、そのマークは町中の至る所で見ることができる。

「確かに衝撃的な人ではあったけど……」

 柱全員が揃ったあの場で自分の意見を堂々と述べ、そのつもりはなくても禰豆子を助けてくれた人物。匂いを思い出してみても、なんの匂いともいえない、不思議な匂いで、噂と善逸のいう事が正しければもっと欲の匂いがしてもいいハズなのに、と頭を抱える。

「どうだった? やっぱり噂通りの人だったのか?」
「う~ん。我儘とか、お金とか、そういう欲の匂いっていうよりも…」
「というよりも」

 どこかで嗅いだことのあるのような、むしろ懐かしいくらいの匂い。

「……母さんみたいな匂い?」
「は?」

 それが、動いて生きる推しを前にした、オタクの慈愛の匂いだと炭治郎が気付く日は来ない。

「うまい!うまい!」
「煉獄さん食べすぎです!」

 あー推しが生きてるって最高。生でこのやりとりが見れるとか、神ですか?
 そんな現実逃避をしながら、私は窓の外をみた。これが世界の車窓から、のような穏やかな風景だったらどれだけ最高か。

「なぜこうなってしまったの」

 思わずつぶやく。まさに白目。
 バクバクとお弁当を食べる煉獄さんは非常に美味しそうで、私のほっぺまで緩みそうだ。いつだったかコマーシャルでこんな曲も流行ったもんね。いっぱい食べるきみが好き、みたいなやつ。好きだよ、大好き。推しのことはいつだって好きだよ。でも、これはなかなかマズイ状況だ。本当にどうしてこうなってしまったのか。
 こうなったのは数時間前に遡る
 
 推しを財力をもって救うマンの私は、当面の目標を「煉獄杏寿郎救済」としていた。原作の流れからいえば柱合会議が終わった後だから、もうすぐ無限列車。この前胡蝶屋敷にいって炭治郎くんたちの様子を見に行ったけど、まだまだ機能回復訓練序盤って感じで、その様子を見て帰宅した。戯れるかまぼこ隊、最高の極みである。その途中で刀鍛冶の里から「護身用に刀を打たせてくれ」と連絡が来ていたけど丁重にお断りしておいた。刀鍛冶の里にも毎月めちゃくちゃ払っているので私に死なれたら困るのだろう。私が死んでも鬼殺隊への金の供給は止まらないシステムを作ってあるので、それは心配ないんだけど。

 まぁそんな事を間に挟みつつ、私は早速無限列車の買収にとりかかった。無限列車が私鉄でよかったー! 有り余る金で二秒で買収してやる! と意気込んだものの、これがまぁうまく行かなった。というのも無限列車の運営会社代表がまさしく頑固爺で、自分の夢で開設した電車を、ただの金持ち娘には渡せねぇ! とかほざいたのだ。ふざけんなよこちとら推しの命がかかってんだぞ、と思ったものの、人から夢を取り上げるのは非常によくない。夢があるのはいいことだ。
 その爺と再三の話し合いをしたのだが中々理解してもらえず、最初はクールだったものの、推しの命がかかってるもので、ある日ついにブチ切れてしまったのである。
「だったら貴方のその夢の列車に乗って、素晴らしさを見てきてあげようじゃない! そのうえで私がより良いビジネスプランを提案して、四季島より豪華な列車にしてあげるわ! なんだったら貴方が責任者のままでだって私はかまわなくってよ!」
 くってよ、なんて初めて言ったよ。四季島って何? そう思った人は今すぐググって。そのすばらしさを体感できるから、見るだけでもぜひ。
 
 とまぁそんな経緯で、私はあの時頭に血が上っていて、そんな風に啖呵きってしまったのである。本当は完全に私が買収し終わって安全も確保できてから行動に移すか、夜間走行をなんとか廃止にしようかと思ってたのに。でも、言ってしまったものは仕方がない。
かまぼこ隊はまだ訓練中だし、列車に鬼が出るのはもっと後だろう。もし出るとしても、しこたま藤のお守りをもって乗ってやるから大丈夫。なんやこいつ臭すぎ! 今回は近寄らんとこ、ってなるだろう。そうして意気揚々と出向いた無限列車で、私は煉獄さんと出会ったのである。

「お館様より君を護衛するように頼まれた! 君が無事に旅を終えられるようこの炎柱、煉獄杏寿郎がお守りしよう」
「なにそれイケメン」

 つい口から出ちゃったけど、あなたが乗ったら意味がないのに!
 そう叫びそうだった声は「弁当を十人前!」という声でかき消された。そして冒頭に戻るのである。

「それで有栖川さんの護衛で、煉獄さんがこちらにいらしたんですね」
「私は頼んでいないのだけど」
「お館様が心配だとおっしゃるったのでな」

 そういってお話しする二人を見つつ、私は心和ませるとともに焦る自分を落ち着かせるのに忙しかった。仲良くお隣同士に座る二人をみるのは大変和む。なんて可愛いんだ、このまま炭治郎くんはこてん、と頭を煉獄さんに預けて寝てしまうんでしょう? えーなにその兄弟みたいなの、エモーショナル。別に腐ってはないけれど、推し同士が並ぶって最高でしょ? 可愛いと可愛いはより可愛い。これ世界のことわり。神様、ありがとう。
 でもこの列車はまずい。非常にまずい。私という自分の身すら守れない一般人がいるのもまずいし、役者もそろってしまっている。え、このまま本当に無限列車編いっちゃうの? 
 変わらずわちゃわちゃ 「日の呼吸」について話しているのを眺めつつ、私は窓辺に座り込んで鴉へと手紙を結んだ。ちゃんと届けておくれよ~って願いをこめつつ、窓から羽ばたかせる。善逸くんと伊之助くんもわちゃわちゃと騒ぎだして、あぁ~推しが生きて動いている、夢みたい、ありがとう神様。って本日二回目の祈りをささげた所で、一つのことを思い出す。

 そういえば煉獄さんが無限列車に乗ってきたのは、何人も一般人、そして送り込んだ隊士が行方不明になったからではなかっただろうか。なら、その騒動が起きてない今、まだ鬼は出ないんじゃないのか。そう思ったところで、車内に車掌さんが入ってきた。

「切符…拝見…いたします」

 見るからに様子のおかしい車掌さん。なんで皆気づかないんだろうって思うけど、現代だったら「この人も社畜なのかな、可哀そう……」って思って終わってただろう。煉獄さんとかまぼこ隊もごそごそ切符を探し始めて、でも私は立ち上がった。いやいやお主ら切符買ってないでしょ。

「おかしいわ」

 誰もいない車内に私のブーツの音が響く。今日の私は大正モダンで華やかな袴。ちまたではショートカットが流行っているけど、やっぱり大和撫子は黒髪ロング! 私は外国の血が入っているので金髪っぽいんだけど。

「私は今日、この列車全てを貸し切りにしているわ。先に支払いは済ませているしから切符はないし、目的地につくまで誰も乗ってこないようにいってあるのよ」

 あなた、何者なの。
 腕を組み車掌の前に立って言ってやる。他四人も異変に気付いたようで雰囲気を張り詰めてさせた。鬼の手下人間たち、そいつらが万が一にでもいないよう、私は列車を貸し切りにしていたのである。
 こいつ、あの無限列車の車掌か? と思った所でグルルと音がして、どこからともなく異形が現れる。

「鬼だ!」

 誰とも分からない声がそう叫ぶ。あれ、これってやばいじゃん。そう思った時には、もう既に目の前には鮮やかな炎が駆け抜けていた。あれはそう、炎の呼吸壱ノ型「不知火」だ。あ~~推しの呼吸が見れるとか最高の極み。そうして今日三回目の神への祈りを捧げようとしたところで、突然目の前が真っ暗になった。
ポケモンかよ。



【無限列車編】我が財力の前に平伏するといいわ!とでも言っておく。②
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