再処理事業 ともる黄信号 「設工認」止まらぬ原燃のミス 規制委は「審査打ち切り」におわす | 河北新報オンライン /
https://kahoku.news/articles/20230330khn000080.html
日本原燃に足元みられている「規制委」

使用済み核燃料再処理工場(青森県六ケ所村)を巡り、日本原燃が目指す2024年度上期の「できるだけ早期」とする完工時期にとどまらず、事業自体にも黄信号がともり始めた。原子力規制委員会は、安全対策工事の詳細設計の認可(設工認)に関する審査でミスや不備を繰り返すばかりの原燃に業を煮やし、ついに「審査打ち切り」というカードをちらつかせた。
https://kahoku.news/articles/20230330khn000080.html
日本原燃に足元みられている「規制委」
使用済み核燃料再処理工場(青森県六ケ所村)を巡り、日本原燃が目指す2024年度上期の「できるだけ早期」とする完工時期にとどまらず、事業自体にも黄信号がともり始めた。原子力規制委員会は、安全対策工事の詳細設計の認可(設工認)に関する審査でミスや不備を繰り返すばかりの原燃に業を煮やし、ついに「審査打ち切り」というカードをちらつかせた。
安全対策工事の審査で申請書の不備が確認された使用済み核燃料再処理工場=青森県六ケ所村
30日にあった原燃の定例記者会見。増田尚宏社長はロシアのことわざ「トラスト・バット・ベリファイ(信頼せよ、されど確認せよ)」を何度も口にし、「事務局や幹部から上がってくるものを見ながら『これでオーケー』としていた。私にまずさがあった」と陳謝した。
28日にあった第2回分の設工認を審査する会合で、原燃は申請書約6万ページのうち、誤記や記載漏れなどを約3100ページで確認したと規制委に報告した。ミスの要因は、書類の中身を充実させるより、目標ありきで「無理に推し進めた」(原燃幹部)結果だ。
この日、審査会合の多くは申請書の不備に関する議論に費やされた。第2回の設工認の審査が始まってから約3カ月が経過したが、ある委員は「技術的な論点ができず、一歩も前に進んでいない」と指摘。「ラストチャンスだと思ってほしい」と最後通告を突き付けた。
危機的な状況に増田社長は「書類作成を担当している第一線まで自分が行き、話を聞くことも重要だ。設工認に割く時間を増やす必要がある」と述べ、トップ自らが積極的に関与する姿勢を示す。
規制委はさらに原燃をけん制する。山中伸介委員長は29日の定例記者会見で、日本原子力発電(原電)敦賀原発2号機(福井県)の再稼働に向けた審査に関し「打ち切りも含め、最後の決断をしないといけない」と述べた。
その上で、再処理工場に関しても「敦賀原発と同じように、根本的なところに原因があるなら、何らかの方策を考えなければいけない」とくぎを刺した。
増田社長は「中身は違うかもしれないが、繰り返して(ミスを)起こしたというのは同じ」と認める。原電は審査資料を無断で80カ所書き換えた後、根拠を示さずに修正するなど不適切な対応が目立つ。
審査の打ち切りという山中委員長の発言を受け、増田社長は「自分たちがやっていることがまずいという認識はある。(敦賀原発に関しても)他山の石として受け止めなければいけない」と話した。
[使用済み核燃料再処理工場]全国の原発で出た使用済み核燃料を処理し、再び燃料として使う核燃料サイクル事業の中核施設。取り出したプルトニウムをウランとの混合酸化物(MOX)燃料に加工し、国内の原発で利用する。原燃が1993年に着工。当初は97年に完成予定だったがトラブルなどで延期を重ねた。2020年7月、国の新規制基準への適合性審査に合格。22年12月に26回目の延期を表明した。総事業費は14兆4300億円に膨らんでいる。