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あはははは
あはははは

お姉ちゃん、私もバンド組んだよ

お姉ちゃん、私もバンド組んだよ - あははははの小説 - pixiv
お姉ちゃん、私もバンド組んだよ - あははははの小説 - pixiv
17,439文字
お姉ちゃん、私とバンド組んで
お姉ちゃん、私もバンド組んだよ
ふたりがひとりと喜多ちゃんとバンドを組む未来妄想話完結篇
後藤姉妹の会話が書きたかっただけなのに長編になってしまいました
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2023年3月16日 03:51

「お姉ちゃん、曲名決めたよ」
「えっもう?それで、なんていうの?」
「『無名』」
「え?」
「だから、『無名』だよ」
「あ、無名か。無題かと思った。あまり違わないけど」

路上ライブが終わって帰ってきた後、ふたりに私とリョウ先輩が作った曲を聞かせた。自分のために曲を作ったことにかなり驚いていたけど、私もリョウ先輩もふたりのためなら労力を惜しまなかった。先輩がそうしてくれたのは意外だったけど、どうやらふたりを気にいってるかららしい。それはありがたいけど、ベーシストにはさせませんからね
そして今ふたりがつけた新曲の題名は『無名』というらしい。実質無題のままだけど、どういう意図かな

「どう言う意味でそれにしたの?」
「えーとね、私って当然まだ無名のギタリストじゃん」
「まあ、そうだね」

この前路上ライブはしたけど、話題が広まらないようにしてもらったし自分も人から聞かれても話さないようにしたからあの話は特に広がることはなかった。ふたりが変に知名度上がるのは避けたかったからね。その分無名のままだけど…

「それで、この曲もできたばかりの名もない曲でしょ?だから私に似てるなと思ってその名前にしたんだ。これから私もこの曲も有名にしようって意味も込めて」
「なるほどね、お姉ちゃんそういうの好きだよ」

そういう理由だったのか。そういった思いを込めて名前をつけるの、私は好きだな。ふたりも作詞できるんじゃないかな

「ありがとう。早速練習したいな、楽譜ある?」
「あるよ、ちょっと待ってね」
「うん…お姉ちゃん泣いてる?」
「えっ!?な、泣いてなんかないよ!」
「そう?気のせいか」

泣いてなどいない。ただ、泣きそうではある。ふたり、成長したね…。やる気も才能も十分にある。後は練習して本番を迎えるだけだよ、頑張ってね


——————————————————
〜♪

3曲目の演奏が始まった。この曲に限ってはボーカルはふたりだけ。喜多ちゃんも私と同じでギターでふたりを支えることになる

〜♫

また、この曲にはギターソロパートも用意してある。まあ今日はギターしかいないけど、そこはふたりがソロでやることになっている。リョウ先輩が用意してくれたんだけど、私としては流石に負担が大きいからソロは無理しなくていいってふたりには言った。しかし、本人がやりたいと希望したのでやらせることにした。失敗しても死ぬわけじゃないし、やる気があるならやらせてあげたいからね

〜♩

ソロパートまではふたりのパートにはあまり難しいところはないはず。そこまでは私と喜多ちゃんに任せて欲しい。そう思って弾いてるけど、喜多ちゃん上手いな。いきなり結束バンドのものでもない曲を練習してって言いづらかったけど、しっかり仕上げてくれたようだ。本当に頭が上がらない
ふたりのボーカルも安定しているな。実はボーカルレッスンは大体私が見てないところで行われていたので、ふたりが歌っているところはあまり見たことがない。この曲に至っては初めて聞く。いやかなり上手くね?妹が歌上手すぎてギターも弾けるから姉がピンチな件。私のことはどうでもいいから頑張れ!

〜♬

そろそろソロパートが来る。ボーカルに集中していたところで急にギターに力を入れるのは大変だと思うけど頑張って欲しい
そう思った次の瞬間、横からのギターの音が少しおかしくなった。これは喜多ちゃんじゃない、ふたりだ。これは弦が切れたな…いつぞやの私みたいだ。張り替える時間もないし、こうなったらソロは私が…は?

心配してふたりの方を見た私は、ふたりがしていた行動に呆気に取られてしまった。手は止めなかったけど


何で弦切ってんの?


ふたりが自分から弦を切っていた。何してんの?緊張で頭がおかしくなったのかな。止めるか?喜多ちゃんもソロパートできるって言ってたから任せるのもありだ。そう思ってふたりの方に寄ろうとしたその瞬間、私はあることを思い出した

『ふたりが隠し玉持ってるけど、それをやりだしても止めないでね』

家を出る前にお父さんにそう言われたんだった。もしかして、今からその隠し玉を披露しようってこと?だったら止めちゃいけないか…うん、分かった。お父さんを信じるよ

私は歩みを止めて元の位置に戻った。同時にふたりがしゃがんで何かを手に持った。そして曲はソロパートに入る

〜🎵

「あの子何してるの?」
「分からないけど凄い!」

「ふたりちゃんマジか…わざと弦切ってまでやりたかったのか?」
「凄い…。ぼっちちゃんも焦ってる感じだったね、言ってなかったのかな?」
「流石ふたりだ。ぼっちと同じ血が流れているだけある」
「いやー練習通りばっちりだね〜、やっぱりぼっちちゃんの血筋やばいわ」
「お前ら知ってたのか?」
「知ってるもなにも、私が教えましたー」
「「は?」」


————————————————————
「リョウさん、頼みがあります」
「言ってみよ」

先月の半ばだったかな、またふたりにベースを教えてた時にそんなことを言われた。内容によってはかなえてやろう。こいつは未来の天才ベーシストだからな

「廣井さんって人に会いたいんです」
「予想外すぎる!」

廣井さんか。ふたりからその人の名前が出てくるとは思わなかった。ふたりは会ったことあるっけ?1回くらいあるか。でも何の用が…はっ!まさか本格的にベーシストに転向する気が…なるほどな。ふたり、お前は最高だ。ぼっちと郁代のことは任せろ。慰めておくから。でも一応会いたい理由を聞いておこう

「何で会いたいの?」
「それは…」



「お、君がふたりちゃんか。いやーぼっちちゃんにそっくりだねえ」
「こんにちは。後藤ふたりです。今日はお忙しい中時間を作っていただき「あーそういうのいいって」
「え?」
「そんなに堅苦しくならないでいいよ。山田ちゃんもおっすー」
「どうも。無理言ってすみません」
「大丈夫ー、結束バンドの頼みならしゃーないじゃん?」

相変わらずだなこの人。今日はあまり酒入ってないっぽいな?ふたりが廣井さんに会いたい理由は、ベーシストになりたいからではなかった。無念。まあじっくり育てていこう

「それで、ふたりちゃんは私に何の用かな?」
「はい、私にボトルネック奏法を教えてくれませんか?」
「え?」
「喜多ちゃんから聞いたんですけど、姉は高1の文化祭で弦が切れた時にボトルネック奏法をやって何とかしたんですよね?」
「そんなこともあったっけ、ぼっちちゃん凄えよなー」

そんなこともあったな。あの時はみんなで繋いでぼっちが立ち上がるのを待ったっけ。ぼっちなら何とかなるって確信があったんだよな。実際何とかしたから驚いたけど

「私も今度文化祭に出るんですけど、それをやりたいんです」
「おーいいじゃん。でも何で私に教わりたいの?それこそぼっちちゃんに教わればいいじゃん」
「姉には内緒にしたいので。姉があの時できたのは、廣井さんがお酒のボトルを持ち込んだからって聞きました。だからなんとなくあなたに教わりたくて…お姉ちゃんの師匠的な人なんですよね?」
「師匠なんて言える程のことはしてないよ。でもそういえばあの時のぼっちちゃん救ったの私だっけ、いやーやるな私ー!お酒最高!」

結果論はそうだったけど、高校の文化祭に酒持ち込むのはどうなんだろうか。流石の私でもしないぞ

「廣井さんは天才ベーシストなんですよね?だからボトルネック奏法もできると思うんですけど、私に教えてください!お願いします!」
「えー君見る目あるねー、確かに私は天才だけど…できないって言ったらどうするの?」
「できなくても教えられると思ってます。どうかよろしくお願いします!」
「お、おう…君度胸あるね…」

少なくとも酔いが浅いのだろう、廣井さんが押されている。ふたり凄いな。いざという時の行動力は姉譲りか

「…まあいいけど。面倒見るくらいならできると思うよ。山田ちゃんも凄い子連れてきたね?」
「それほどでも」
「そんな褒めてないよ…。その前にひとついいかな?」
「あっはい」
「君はお姉ちゃんの真似事がしたいの?」
「……」
「確かに君のお姉ちゃんは凄いギタリストだ。憧れて真似をしたくなるのも分かるよ。でも、学校の文化祭でボトルネック奏法をする、ここまでお姉ちゃんと同じ状況で同じことをすることに意味ってある?」

廣井さんは恐らく厳しい人だ。多分、私とか虹夏にはあまり興味ないんじゃないかな。ぼっちには早くから目をつけてかわいがってたけど、それはぼっちがあの時点で人並み外れた実力者だったから。そんな人からしたら今のふたりのことは嫌がりそうだよな。でも確かに私も気になる。いくら妹とはいえ、そこまでぼっちの後を辿る意味はあるのか?自分の個性や強みを追求すればよくないか?ふたりはボーカル練習してるんだから、そっちを頑張るのもいいと思うけど

「…確かに、私のやりたいことは姉の真似事です。それに意味なんてないかもしれません。けど、ちゃんと考えてますから」
「ほんと?じゃあ聞かせて?」
「はい。まず、私が文化祭ライブでやるのは姉の真似事だけじゃありません。私はボーカルもやります」
「え、ふたりちゃん歌うんだー、実は私もボーカルなんだよ。気が合うねぇ」

手のひらくるっくるか?いや適当に言ってるだけか

「その上で私はギターの方でも何かやってみたいんです。色々姉が出来ることを聞いたんですけど、その中でもボトルネック奏法が1番やりたかったのでそれを選びました。歯ギターってなんですかね?」
「それはぼっちだけできればいい。歯は大事にしよう」

いつかぼっちが調子に乗って歯ギターしてたけど、会場がドン引きしただけだったな。妹に継承するのはやめて欲しい

「ふーん。なにも考えてないわけじゃなかったんだ。で、理由はそれだけ?」
「いえ、1番の理由は…姉を驚かせたいからです」
「…ほう」
「私って自分で言うのも何ですけど、姉の上位互換みたいなところが多いんです。でも、ギターだけは天地がひっくり返っても勝てる要素がありません。それは当然なんですけど、1回くらい一泡吹かせたいなぁって思ってまして…」

なるほどな。妹には妹の苦労があるのだろう。焦ることはないって言ってあげたいけど、焦るよな。あれだけやばい奴が姉だったら

「…いいじゃん、嫌いじゃないよその考え。私もぼっちちゃんがライブ中に慌てるところ見てみたいかも!あの子ライブ中だけは無敵だからねー。山田ちゃんも見たくない?」
「はい。めちゃくちゃ見たいです。でもその代わり、ふたりがちゃんと観客の目を引かないとライブは台無しになっちゃうよ。分かるよね?」
「それはもう任せてください。いざとなったら喜多ちゃんを巻き込みます」

いや郁代もテンパる側だと思うけど。本番強さはぼっち譲りかもしれんが

「いいね。けど、ただあれをやるだけだと弱いかなー…そうだ!ふたりちゃん、こういうのはどう?」
「え?」


————————————————————
(廣井さんが提案したのは、『いっそのこと自分から弦切っちゃおう!』というものだった。自分から退路を断ってボトルネック奏法をやらざるを得ない状況に持っていく。ロックだね。私とぼっちがふたりのために作った曲にはギターソロのパートがある。そこでやったらどう、とは私が提案した。これだとほんとにあの時のぼっちの真似事だけど、自分でその状況を作り出した上で挑むからぼっちとは違うよね。ということで今ステージでふたりの独壇場が行われたところなんだけど…マジでやりきるとは恐れいった。ふたり、悔しいけどお前はギタリストままでいてくれ。姉と同じくらい、いやそれ以上の所に行けるかもしれないぞ)

「ふたりちゃんのソロ終わり?急に弦切り出した時は焦ったけど凄かったねー」
「あいつ既に高1のぼっちちゃんを越えてないか?有望すぎるぞ…」
「いやー教えた甲斐あったわー。流石私!ぼっちちゃんちょっとしか狼狽えてなかったけどね」
「少しはその姿が見られたからお釣りは来ますよ」
「おい、まさかぼっちちゃんを困らせようとしてたんじゃないよね?」
「さてどうかな、元凶はふたりだから私達は知らないよ」
「む…後で問いただそう」

(まさか中学生をいじめないよな、虹夏?それにしてもふたりはよくやったよ。弦切っちゃったから、ギターについては後はぼっちと郁代に任せればいい。その分しっかり歌えよ)


————————————————————
ふたりのソロパートが終わった。まさか隠し球があれだとは…高1の時の私と同じじゃないか。違うのは、ふたりは自分で弦を切ってからあれをやったこと。そんなことしなくてもできるのにわざわざやったのは私への当て付けか?はいはい、お姉ちゃんびっくりしましたよ。負けました。だからこれからはもうちょいギターを大事に扱ってよね

「…ん?」

ふたりからの視線を感じた。曲は残りわずか。だけど弦を切ったふたりはもうギターを弾くのが厳しい。分かった、後は任せて。その代わりしっかり最後まで歌うんだよ
私は一緒ふたりの方を見て頷いた。ふたりも頷き返してくれた

(ごめんなさい、お姉ちゃん。後はお願い!)

ふたりがそう言ったように感じられた



「…ありがとうございました!以上で私達のライブを終わります!今日わざわざ来てくれた喜多ちゃんとお姉ちゃんに拍手をお願いします!」

わーーーばちぱちぱちぱち

ふたりの挨拶で私達はステージを後にした。ダイブなんてなかった。これが普通だよね、うん

「…っはー!!緊張したぁ…!」
「ふたりちゃんお疲れ様。あんなことするなんて聞いてないわよ!何で出来るの!?」
「あはは…内緒で練習しました」
「そうなんだ。待って、この中でボトルネック奏法できないの私だけ!?ふたりちゃんに先を越されるなんて…!ひとりちゃん!明日から私にも教えて!!」
「あっはい、分かりました…。ふたりは誰に教わったの?」
「んーとね、廣井さん!」
「「…は?」」

廣井さんかぁ。何で?意外すぎる人の名前出てきたな

「えっどうして…」
「まあまあそれは後にして…聞こえる?観客の声」
「え?…あ」
「これは…アンコールがかかってるわね。行く?」
「お願いします。私は弦切ったからできないので、2人で暴れちゃってください」
「あっそうだ。ふたり、使える弦をわざと切るなんてよくないよ。今回は多めに見るけどもうしないでね」
「ごめんなさい。どうしてもお姉ちゃんに一泡吹かせたくて…」
「ふふっ、そういうことだったのね。十分できたんじゃないかしら、ねっひとりちゃん?」
「あっはい。今回ばかりはやられました。私の負けだよ、ふたり」
「ほんと?やったー!じゃあアンコール行ってらっしゃい!」
「調子いいんだから…まあいいや。喜多ちゃん、行こう」
「うん!」

ふたりにそんなこと思われてたなんて…本当に参ったよ。うちの妹実力ありすぎ…喜多ちゃんと私を足したような性能してるなぁ。これは凄いギタリストになるかも…私もうかうかしてられないや
とりあえずありがたいことにアンコールがかかっているので、もう一度ステージに行くとしよう。喜多ちゃんと暴れてやるから見てろよ観客共!あとふたり!



「おーおーぼっちちゃんも喜多ちゃんも凄いなあ。やっぱ売れてるバンド様は流石だな」
「それ本心で言ってる?」
「けど、2人ともさっきよりも生き生きしてるね。やっぱりふたりのために多少はセーブしてたみたい」
「気を遣ってもらうようじゃふたりちゃんもまだまだだねー。でも中学生だから未来は明るいよー、若いっていいな〜。ね、先輩?」
「黙れ」
「あ、ぼっちもボトルネックやってる」
「妹への対抗心だねー。そういやあのボトルって誰が用意したの?」
「私だよー。本番前にこっそり前行って渡してきたの!」
「だから始まる前にふたりちゃんがしゃがんでたのか…」
「何で事前に渡さなかったんですか?」
「私もふたりちゃんも忘れてたから…」
「雑だな…」



「お姉ちゃん」
「うん」
「本当にありがとう!」
「どういたしまして。楽しかった?」
「うん、凄く楽しかった!またやりたい!」
「それならよかったよ。結局私達かなり目立っちゃったけど…」

文化祭は無事終わった。今は打ち上げということでみんなで店に来ている。メンバーは私とふたりと喜多ちゃん…に加えて虹夏ちゃんとリョウ先輩と店長と廣井さん。3人だけでもよかったけどまあいいや。みんなにもお世話になったもんね

「まあ仕方ないよ。結果的にかなり盛り上がったし。それに私も結構褒めてもらえたから!私も自分の力で目立てたってことじゃない?」
「そりゃあんなことすれば目立つよー。ふたりちゃん凄かったね、廣井さんに教わったって本当?」
「はい。廣井さんって凄い人ですね!お酒さえ飲みすぎなければ…」
「でしょー?お酒は飲まないと幸せになれないから許して〜!」
「ふたり、あまりこの人を調子に乗らせちゃダメだよ」
(ひとりちゃんも廣井さんに厳しくなったわね…)
「はーい。でも本当にありがとうございました。おかげでお姉ちゃんに一泡吹かせられたので満足です」
「うおーふたりちゃんやったじゃん!うえーい!あ、飲む?お姉さん奢っちゃうよ〜!
「未成年です。尊敬するのやめますよ」
「冗談だよ〜!まだ尊敬しててよ〜!」
「ふたりちゃん、こいつとは早く縁を切ることをおすすめするぞ。あと今日はライブした3人の分は私が奢るから、好きなもの頼んでいいぞ」
「店長ありがとうございます!じゃあ私は…」
「あっありがとうございます。私までいいんですか?」
「ああ。ぼっちちゃんも頑張ってたからな。ほら、ふたりちゃんも何か頼みなよ」
「ありがとうございます!お姉ちゃん、唐揚げ食べるでしょ?」
「うん」

店長ありがとうございます。お酒飲もうかな…でもふたりいるしなぁ…
それにしても、廣井さんとふたりの組み合わせには本当に驚いたな。色んな人が今回のために協力してくれたんだよね。ふたりは本当に人に恵まれてるよ。私と同じで

「ぼっちちゃん達だけずるい!私の分も奢ってよー、お姉ちゃーん」
「お前は何もしてないだろ!大人なんだから自分で出せ!」
「そんなことないよー!後藤姉妹のお世話してたんだから。ね?」
「あっはい」
「虹夏ちゃんにもお世話になりました」
「ね?」
「言わせてるようにしか見えんが…」
「私は作曲という大仕事をしたから奢って」
「それはよくやったけど…お前は単に金持ってないだけだろ?」
「リョウ先輩、もうこの前の競馬で当てたお金使っちゃったんですか?」
「この前っていってももう3ヶ月くらい経つでしょ。仕方ない」
「仕方なくないです!全く…店長、リョウ先輩の分は私が払います。ツケるので」
「いつの間にかリョウの管理係が喜多ちゃんになってる…」

リョウ先輩またお金使っちゃったのか…。私も浪費癖あるけど、ある時虹夏ちゃんと喜多ちゃんに凄く怒られて以来反省したからもうそんなに使ってはいない。今は将来虹夏ちゃんを養うためにも貯金が必要だしね
というか喜多ちゃん、リョウ先輩の面倒見るのが板についてきたなぁ…。虹夏ちゃんがやらなくなってきたからね…。私のせいだよね、ごめんなさい

「リョウ先輩、今日は払いますから代わりに今度デートしてくださいね」
「分かった。郁代すき」
「喜多ちゃん始めからそれが狙いか?」

あれ、喜多ちゃんまだリョウ先輩のこと狙ってるのかな?いや単に遊びたいだけかも。私や虹夏ちゃんとは結構遊ぶけど、リョウ先輩とはあんまり2人きりになれないって嘆いてたこともあったし

「あっ虹夏ちゃん」
「ん、ぼっちちゃんどうしたの?あっそうだ、改めてお疲れ様」
「ありがとうございます。虹夏ちゃんも見にきてくれてありがとうございました」
「後藤姉妹の晴れ舞台だからね、見に行くに決まってたじゃん!2人ともとってもよかったよー」
「「そんな、照れますよ…えへへ…」」
「ここまで似ることってある?」
「思ったより似てて面白いな、この姉妹」
「伊地知先輩、私も頑張ったんですよ!」
「喜多ちゃんもお疲れ様。ふたりちゃんとのボーカルよかったよー」
「「えへへ…」」
「喜多ちゃんもか」
「後藤さんにんは郁代だったのかもしれない」
「え、誰?」

後藤さんにんはほんとに誰なの…。というか2人ともそっくりだな。かわいい
あっそうだ、虹夏ちゃんに言いたいことがあるんだった

「あっ虹夏ちゃん、文化祭終わったのでちょっと時間に余裕ができるからまたデートしませんか?」
「いいねー!私も最近ぼっちちゃんがふたりちゃんにかかりきりで寂しかったんだー。早速だけど明日は暇だったよね?」
「えっ明日ですか?休みですけど…じゃあ明日にしましょう。うへへ…」
「リア充帰れ」
「酒がまずくなる」
「うう…幸せそうだなぁ…ちくしょ〜!店員さん、これと同じのもう一杯ください!」
「みなさん荒れてますね…ふたりちゃんがいるんだから少しは抑えてください」
「あはは…」
「くっ、結束バンドはいつからこうなってしまったんだ…。こうなったら…郁代」
「あっはい!」
「私達も明日デートしよう。あいつらのピンクオーラに対抗するために、私達も百合営業をするしかない!」
「えっ!?えっと、まあ、私はいいですけど…」
「お前らもイチャイチャするな!中学生がいるっつってんだろ!」
「まあまあいいじゃないですか〜。あっ先輩、私達もデートしますー?」
「消え失せろ」
「酷ーい!こうなったらやけ酒だ〜!」
(みんないつもこんな感じなのかな…。ダメな大人しかいないじゃん…。でも、楽しいかも)

「…ふふっ」
「ふたりちゃん?」
「あっすみません。みなさん面白くて、楽しいなあって思っちゃって。ライブの打ち上げは毎回こうなんですか?」
「毎回ここまでは騒がないかな?今日はいつも以上に賑やかかも。でも、結束バンド全員が成人してからはお酒も飲むようになったから、割といつもこうかもね」
「郁代は酔うと面白いよ。今日は飲んでないから見られなくて残念だけど」
「もう、リョウ先輩!ふたりちゃんがいる前で飲みませんよ。先輩だって飲んでないじゃないですか」
「ふたりの前ではかっこいいベーシストでいたいからね」
「見栄っ張りですね…もう私の前ではしてくれないのに」
「何、して欲しいの?」
「別に。素の先輩も好きですから」
「じゃあしない。ふたり、もう飲んでいい?」
「私の前でも見栄張らなくていいですからどうぞ」
「ありがとう。すみません、カシスオレンジお願いします」
「別にお酒強くないからかわいいの飲むのよねー」
「へー」


————————————————————
「ねーねーふたりー、まだ何か食べるー?」
「もうお腹いっぱいだからいいかな…お水もらうね」
「はーい…きたちゃんー、お水ジョッキでー」
「ひとりちゃん飲みすぎよ。ふたりちゃん、お水はグラスでいいよね?」
「あっはい。そんなに沢山飲めません」

打ち上げが始まってから暫く経ち、お酒を飲んでいる人達は結構酔ってるようだ。お姉ちゃんも普段あまり飲んでいるところを見ないのに今日は珍しく飲んでおり、しっかり酔っぱらってしまった。お姉ちゃんって酔うとうざ絡みするタイプだったっけ?

「ぼっちちゃーん、リョウー、えへへー」
「どうしたの、にじか」
「何ですかーにじかちゃん?」
「何でもないーすきー」
「伊地知先輩酔うと子どもみたいになるのよね…」
「かわいいですね」
「そうだけど、介抱する側になると大変よ?」

虹夏ちゃんもリョウさんも酔っているみたいだ。あなたたち今日は観客でしたよね?お世話になったから文句は言わないけど

「うーん…虹夏…まだ嫁には行かないでくれ…」
「先輩寝ちゃった。私はもうちょっと飲むか。すいませーん、注文お願いしまーす!」
「廣井さんそのくらいにしておきましょう?肝臓やばいですよ。店長、寝ないでください!そろそろお開きにしますよ」

喜多ちゃんはお酒を飲んでいないので1人介抱役に回っている。私はどうしたらいいか分からないので戦力外だ。ごめんなさい…
でも少しは手伝わないと。とりあえずお姉ちゃんをなんとか…って、虹夏ちゃんとキスしてる。お熱いなぁ。こいつらは放っておこう。じゃあリョウさんは…お姉ちゃんと虹夏ちゃんの写真撮ってる…。この人もしかして素面?じゃあいいか。もう私にすることないや。あの2人はよく分からないから触れないでおこう

「あー!ひとりちゃんと伊地知先輩何してるんですか!こんなところでイチャイチャしないでください!ふたりちゃんがいるって何度も言ってるでしょ!リョウ先輩も面白がって写真撮りまくらないの!後で1枚ください!もう知らない!私1人じゃ手に負えないわー!」

喜多ちゃんが絶叫している。お疲れ様です…。でも写真は欲しいんだ…。私もいざという時のためにもらっておこうかな

「ふたりちゃん、このダメな大人達は放っておいて少し外で涼まない?なんか暑くなっちゃって」
「動き回って叫んだら暑くなりますよね、お疲れさまです。外行きましょうか」
「ありがとう!」

喜多ちゃんに誘われて店の外に出る。もうすぐ10月ということもあり、夜の外はだいぶ涼しい

「ふう、涼しくて助かるわ。ふたりちゃん、改めて今日はお疲れさま」
「ありがとうございます。喜多ちゃんもお疲れさまでした。何ヶ月も付き合っていただきありがとうございました」
「ふふ、どういたしまして。もう終わったから言うけど、結構忙しくて大変だったわ。でもふたりちゃんに怒ってるわけじゃないからね。出来ると思ったから引き受けたの。実際できたし問題はないわよね?」
「そうですね。喜多ちゃんは今年で大学卒業ですよね?」
「卒論が書ければね。まあそっちも一応ちゃんとやってるから大丈夫だと思うけど」
「大学行ってバンドやって私のレッスンしてみんなのお世話して…喜多ちゃんよく過労死しませんでしたね」

いま自分で言って驚いたけど、喜多ちゃんオーバーワークすぎませんか?本当にありがとうございました。暫くは大学の方に専念してください

「それ、リョウ先輩にも同じこと言われたわ。さっきも言ったけど、出来ると思ったからやっただけよ。それに、私結構体力あるから大丈夫。あなたのお姉さんの百倍…いや千倍はあるから!」
「本当にそのくらいありそうですね」

お姉ちゃんがよく言っていた。喜多ちゃんの体力にはついていけないって。元々対極の存在みたいな2人が親友までいったのは中々興味深い。根は似ているのかも
親友…そういえば、気になっている事があったんだよね

「喜多ちゃん、質問していいですか?」
「いいわよ、何かしら?」
「喜多ちゃんはお姉ちゃんとは親友なんですよね」
「ええ、そうよ。前から友達は多いけど、結局1番仲がいいのはひとりちゃんね」
「なるほど。虹夏ちゃんとも仲はいいですよね?」
「そうね、今だってよく遊ぶわよ。伊地知先輩はなんていうか、明るい者同士最初から割と仲よかったかも?っていうか初期はリョウ先輩は単独行動ばかりだしひとりちゃんはあれだし、伊地知先輩くらいとしか話せない日もあったのよね…」
「あー…」

うちのお姉ちゃんがすみません…。今もあまり変わってないけどね

「じゃあ、リョウさんはどうですか?早い話、好きですよね?」
「えっ!?」
「元々リョウさん目当てで結束バンド入ったんでしたよね?最初は好きだったんですね?でも1回お姉ちゃんに乗り換えて、結局諦めて、呆れていたリョウさんのことがやっぱり好きだと気づいて今に至るってところですかね?」
「あ、あの…ふたりちゃん?」
「あっごめんなさい。今の殆ど適当です。実際のところどうなんですか?」
「もう!リョウ先輩みたいなことして!」

実は適当じゃなくてしっかりとした予想なんだけどね。他の人から聞いた話やさっきの2人のやり取りを見て組み立てると、さっき言った通りだと思うんだけどな

「リョウ先輩のことは…よく分からないの。昔から恋愛感情を抱いていたかっていうと微妙だし…。今だって好きって思うより呆れることの方が多いから…」
「リョウさんだらしないですもんね…」
「うん。でも最近伊地知先輩がひとりちゃんと付き合いだして、その前からもうイチャイチャしてたんだけど、伊地知先輩がリョウ先輩に構う時間が減ってきたのよね。だから私が代わりにお世話してるんだけど、なんでかな。ふたりちゃんの言う通り、ちょっと好きなのかもしれない」
「へー」
「そっちから聞いておいて反応薄くない?…って、何ニヤニヤしてるの!こら!」
「まあまあ。それで?続きは?」
「最近の中学生はませてるのね…。それ以上もそれ以下もないわよ。あの人はだらしないから、私が伊地知先輩の代わりに面倒を見るつもり。嫌になったら丸投げするけど」
「なるほど。じゃあ今日の代金払うから代わりにデートしろっていう件についてはどうなんですか?もう好きって言ってるようなもんじゃないですか?」
「はあっ!?…ごめんなさい。いや、それは…だって、リョウ先輩とも一緒にいたいんだもん…ひとりちゃんや伊地知先輩よりも遊んだ回数少ないし…」

喜多ちゃんやっぱりかわいいですね。それは恋だと思うけどなぁ。これ以上からかったら怒られそうだからもうやめようっと

「ふむふむ。分かりました、ありがとうございます。私からはもう何も聞きません」
「何なのよ…。正直私は分からないの。リョウ先輩のことをどういう形で好きなのか。焦っても仕方ないから、これから探していくわね。ということでこの話はおしまい!次はふたりちゃんの話を聞くわよ!」
「私ですか?」
「そう!今日のライブのパフォーマンスとっても凄かったじゃない?どう、あの後お友達から何か言われた?」
「あっはい。結構評判良かったみたいで、私も喜多ちゃんも沢山褒めてもらえましたよ。お姉ちゃんも」
「それは嬉しいわね。成功してよかったー」
「はい。ここだけの話、喜多ちゃんの方が人気は高いですよ。演奏技術はお姉ちゃんの方が上ですけど」
「それは複雑ね…まあ、悪い気はしないけど」

お姉ちゃんはライブ中は凄くかっこいいけど、他はあれだからっていうのはもう何回も言った気がする。バランスが取れているといえばそうかもしれないけど

「あっそうだ。ふたりちゃん、今日本番前にお友達に会ってたじゃない?あの子達のこと誘えた?」
「あっはい。文化祭が終わった後その2人ともう1人の友達に話をしてみたんですけど、みんなOKしてくれました」
「え、やったじゃない!ふたりちゃんやるわね!」
「ありがとうございます」

友達にバンド組もうって誘うのは凄く緊張したけど、みんなやろうって言ってくれた。それが凄く嬉しくて、ちょっと泣きそうになってしまった

「それで、誰がどの楽器やるかは決まってるの?」
「それなんですけど、私以外経験者がいなくて…。1人だけ小学校のクラブでパーカッションやってた人がいるので、その子はドラムかなーって感じですけど」
「なるほどね。ド初心者から始めた私から言うと、経験者じゃなくても大丈夫よ。教えてくれる人がいれば」
「喜多ちゃんが言うと説得力凄いですね。でも教える人が…」
「何言ってるの?ふたりちゃんが教えればいいじゃない」
「それはそうなんですけど、私はまだまだ初心者ですし…」

ギターなら教えようと思うけど、私の腕じゃ先生ができるとは思えないし…

「あのねふたりちゃん。私はまだボトルネック奏法できないのよ。たけどあなたはさっきそれをみんなの前で披露したでしょ?それなのにそんなに自信がないんじゃ、私はどうしたらいいのよ」
「いやあれはあの曲でしかできないので…総合的に見れば私は喜多ちゃんの足元にも及んでないですよ」
「それはもちろんだと言っておくわ。自信ないけど!だからふたりちゃんは自信持って新しいバンドの子にギターを教えること!元メンバーとの約束よ」
「あっ分かりました…頑張ります!」
「あとはドラムとベースよね。ふたりちゃんって先輩達から教わってるんだっけ?」
「はい。たまにですけど…あの、流石にその2つは教えられませんからね?」
「流石にそこまで無理強いはしないわよ。でも、先輩達に教わるときに一緒に友達も行けばよくない?先輩達には私からもお願いするから」
「な、なるほど…それならいけるかも。喜多ちゃん、ありがとうございます!」
「どういたしまして。私はもうあなたのバンドのメンバーじゃないけど、ずっと応援してるからね」

そういえばそうだ、喜多ちゃんとお姉ちゃんはもう私のバンドメンバーではない。文化祭が終わったらバンドは解散という約束だったから。少し寂しいな。でも、新しいバンドを組むんだ。そこでまたゼロから頑張ろう

「喜多ちゃん」
「なに?」
「私とバンド組んでくれてありがとうございました!これからはお互い自分のバンドで頑張りましょう!」
「私はずっと頑張ってるけどね。でもそうね、これからはライバル同士頑張ろうね!」
「あ、いやライバルというにはまだ早すぎますよ…」
「だったら早く私達の同じステージに来てよね、私、ふたりちゃんにちょっと嫉妬してるんだから。勝負はしてないけど負けた気がしてるの。勝ち逃げはさせないわよ?」
「…分かりました。とりあえず結束バンド超えを目指しますから、待っててくださいね」
「結束バンドはとりあえずで超えられるバンドじゃないわよ?でも、待ってるね」
「はい!」
「さて、そろそろ中に戻りましょうか。絶対悲惨なことになってるだろうなぁ…嫌だな…」
「…私も手伝いますからさっさと帰りましょう」
「お願いね…」

その後私達が戻ると、予想通り大変なことに…なっていなかった。そのかわりみんな寝ていた。酒飲み共め。ただ1人お姉ちゃんだけは起きていたけど

「あ、2人ともおかえりー。みんな寝ちゃったよ」
「ひとりちゃん、酔い覚めた?」
「うん。そんなに飲んでないし」

その割に酔ってたけどなぁ。まあ覚めたならいいけど

「まだあまり2人と話してなかったなぁって思ってた」
「そういえばそうね。ひとりちゃんってばバンドメンバーより彼女を優先しちゃうんだから」
「ごめんってば。だって虹夏ちゃんは大切な人なんだもん…」

お姉ちゃんの様子が少しだけ変だ。喜多ちゃんに対して敬語が抜けきってる。まだ酔ってるみたいだね

「はいはい。伊地知先輩を幸せにしてあげてね」
「そのかわりリョウさんは喜多ちゃんがもらうけどいいよね?お姉ちゃん」
「え、やっぱりリョウ先輩のこと好きなんだー。喜多ちゃんかわいいー」
「後藤s!もうその話は終わりよ!ひとりちゃんまだ酔ってるわね?あとでお説教しないと」
「そんな…喜多ちゃんは私のこと嫌い?」
「そんなわけないでしょ、だから涙目でこっち見るのやめて!顔がよすぎる…!」
「喜多ちゃん、お姉ちゃんに誑かされないで!」

涙目のお姉ちゃんが喜多ちゃんの手を取り迫っている
お姉ちゃんって自己肯定感低いから自分の顔がいいことにも気付いてないけど、無自覚に人を落とすことはしてそうだよね。虹夏ちゃんに刺されるよ?あ、喜多ちゃんもお姉ちゃんのこと好きだったんだっけ。もうやめたげてよ!

「ひとりちゃん、今の写真撮ったからね。伊地知先輩に送っておくから。浮気してますよーって」
「そっそんな!虹夏ちゃん重い女だから即死刑になっちゃう!」
「そこは同情するけど…あーもうこの話も終わり!中学生の前ですることじゃない!」
「私のことはいいですからもっとやっていいですよ。面白いですし」
「ふたりちゃんは大人すぎないかしら…?」
「あっこの子精神年齢+10歳くらいあるので…」

失礼な。ちゃんと年頃のJCだもん。お姉ちゃんが情けないから精神鍛えただけだもん

「あっそうだ。最後に3人だけで乾杯しない?ライブお疲れさまと解散記念で」
「後者がネガティブすぎるけど…私達にとっては門出だもんね、やろうか」
「分かりました。注文お願いしまーす」



「じゃあふたりちゃんが音頭取ってね」
「あっはい。えーと、ライブお疲れさまでした!あと、人気バンドで忙しいのに半年くらい付き合ってくれてありがとうございました!でも今日で終わりです。私達の解散と新しいバンド人生に乾杯!」
「「かんぱーい!!」」

解散に乾杯って何だろうね。まあ悪いことではないからいいか。この2人には、いや他の沢山の人達にもいくら感謝してもしきれない。これからはこの人達に頼らずに頑張らないと。でもきっと出来るよね。お姉ちゃんにもできたんだから。しかも私はお姉ちゃんより3年早くバンド活動始めたから何とかなるよね?ならなくても仕方ないけど、なるって信じた方が楽しいはずだ

「ぷはーっ!結局飲んじゃったー!」
「最後だからいいじゃん。でも、もうお会計しないとだね」
「そうね。みなさん起きてください!もう帰りますよ!」
「うーん…ぼっちちゃん…えへへ…」
「郁代、ありがとう…」
「ZZZ…」
「頭痛ぇ…」

「「ダメだこいつら…」」
「あはは…」
「しょうがない。ひとりちゃん、半分出してもらえる?後でこの人達に請求しましょう」
「分かった。あっそうだ、喜多ちゃん」
「なに?」
「えっと、こんな時に言うのもあれだけど…」
「どうしたの?落ち着いて、ちゃんと聞くから」
「ありがとう…その、い、郁代ちゃんって呼んでもいいですか?」
「え?」

おー、なんかお姉ちゃんが勇気出してる。そういえば喜多ちゃんのことは殆どの人が名字呼びだよね。名前で呼ぶのはリョウさんくらいかな?名前が嫌いとかなんとか。かわいいと思うけどな

「あっごめんなさい嫌ですよね、土に埋まってきます!」
「待って!…理由を教えてくれる?」
「あっはい。私と喜多ちゃんって親友ですよね」
「ええ。…嫌かしら?」
「とっとんでもないです!凄く嬉しいです!あっそのですね、親友って名前で呼び合った方がいいんじゃないかと思ってまして。喜多ちゃんはずっと前から私のこと名前で呼んでくれてるじゃないですか」
「そうね」
「だから私も喜多ちゃんのこと名前で呼びたいって思ってるんです。その方がもっと仲良くなれる気がして…ダメでしょうか…?」

お姉ちゃん敬語に戻っちゃった。真剣な話をしているし、さっき2人が出していたお金を持っていってお会計済ましちゃおうかな。邪魔しちゃいけないし

私はこっそりとレジに行き会計を済ませた。1枚だけ1000円札が混ざっていてちょっと足りなかったからその分だけ出したけど。今度リョウさんに請求すればいいかな


————————————————————
「ただいまー」
「あれ、ふたりどこ行ってたの」

郁代ちゃんと話していて気づいたらふたりが消えていた。どこ行ってたんだろ

「お姉ちゃん達大事そうな話してたからお会計しといてあげたよ。ちょっと足りなかったから出しといた」
「えっありがとう、そしてごめん。いくら出してくれたの?今渡すから」
「いいよ、リョウさんに請求するから」
「ふたりちゃんも逞しいわね…」

そういうことならリョウ先輩に任せよう。中学生に奢らせた罪はきちんと償ってくださいね。私もじゃね?

「やっぱり私が出すよ。リョウ先輩にも請求していいけど」
「じゃあ私も払うわ。お小遣いってことで」
「そんなに子ども扱いしなくていいですよ?喜多ちゃんからはもらいませんから」
「そうだね、郁代ちゃんはいいですよ」
「そう?じゃあリョウ先輩に請求してね」
「はい。お姉ちゃんいま郁代ちゃんって言った?」
「うん。許可取れたから」
「まあひとりちゃんにならいいかなって。ふたりちゃんはもう少し待ってね」
「あっはい」

さっき郁代ちゃんに勇気を出して話をしたら、郁代ちゃん呼びを許可してくれた。これでもっと仲良くなれた気がする。ありがとう郁代ちゃん

「あの、いい加減出ませんか?会計もしたし…」
「そうだね。郁代ちゃん、みんなを起こしましょう」
「うん。こうなったら実力行使よ!えいっ!」
「痛っ!」
「ていっ!」
「んあっ!?」
「せいっ!」
「ぐへっ」
「リョウ先輩、起きてください」
「…ん、おはよう…」
「リョウ先輩だけ起こし方が優しい!」

郁代ちゃんがみんなを殴って強制的に起こした。リョウ先輩だけ優しく声がけだったけど。露骨すぎない?

「いてて…あれ?今何時?」
「もう帰りますよ。中学生連れてるんですから」
「はーい…喜多ちゃん殴った?」
「愛の鞭と言ってください」
「暴力じゃん!うわーん後輩がいじめるよーお姉ちゃーん」
「んー…はいはい。喜多ちゃん、もっとやっていいぞ」
「あっ店長酷いです…!虹夏ちゃんを大事にしてください」
「ぼっちちゃん…ぼっちちゃんは優しいねー、えへへー」
「よしよし。怖かったですね」
「ひとりちゃん母性あるのねー。はい、ほんとにもう帰りますよ!さっさと表出ろ!また殴りますよ!」
「「「「はーい」」」」
「へーい…飲みすぎた…おえっ」



「あっじゃあみなさんお疲れさまでした。本当にありがとうございました」
「ありがとうございました!」
「じゃあね。ひとりちゃん、ふたりちゃん」
「お疲れ」
「またねー」
「お疲れ、ゆっくり休みなよ」
「おつかれさま〜!先輩もう一軒行きましょー」
「お前も帰って寝ろ!」
「あはは…じゃ、帰ろうか」
「うん」


みんなと別れてふたりと一緒に帰路に着く。珍しく私の家に近い方で集まったから、みんな帰るの大変だよなぁ。まあいいか

「ふたり、今日まで本当にお疲れさま。これからもバンドやるんだよね?」
「ありがとう。バンドは続けるよ。あっそうだ、お姉ちゃんにまだ言ってなかったけど、私バンドメンバー見つけたんだ」
「えっ早い。さっき言ってた子達?」
「うん。みんなOKしてくれたの。本当にありがたいよ」
「それはよかったね」

もうそこまでいってたんだ。この子、やっぱり私より色々早い…。油断してたらギターヒーローの座も危ういかも…。気を引き締めよう!

「これも全部お姉ちゃん達のおかげだよ。だから改めて言うね。ありがとう。それから…」


「お姉ちゃん、私もバンド組んだよ!」



お姉ちゃん、私もバンド組んだよ
ふたりがひとりと喜多ちゃんとバンドを組む未来妄想話完結篇
後藤姉妹の会話が書きたかっただけなのに長編になってしまいました
40631275
2023年3月16日 03:51
あはははは

あはははは

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