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「ただいまー」
「おかえりなさい。喜多ちゃん来てるわよー」
「うん、すぐ行く!」
「喜多ちゃんいるー?」
「ふたりちゃん!いるわよ、お邪魔してます」
「おかえり。ほんとに今日用事なかったの?」
「うん。誘われたけど喜多ちゃん来るから断ってきた」
「えっいいの?」
「もちろん。今はこっちの方が大事だからね」
お昼ご飯を食べた後喜多ちゃんと一緒に帰宅した私たちは、私の部屋でギター練習や雑談やらをしてふたりが帰るのを待っていた。そして今帰ってきたわけだけど、テンション高いな。よっぽど喜多ちゃんに会いたかったんだろうな。この前も会ったのにね
「喜多ちゃん、早速ボーカルレッスンお願いしていいですか?」
「いいわよ、そのために来たんだし。それにしても随分嬉しそうね?」
「だって喜多ちゃんに会えますから。有名人にはできる限り会いたくないですか?」
「分かるわー!でも私が有名人だなんて…まだまだよ」
「そうですね、結束バンドはまだまだこれからだよ。もっと大きくなる予定だから」
「うん。だからふたりちゃんもちゃんと見ててね?私達のこと」
「もちろんです!私は幸せ者だなぁ、これからもっと有名になるバンドのメンバー2人に教わってるんだから」
「そうよ、ふたりちゃんはかなり幸せ者なの。その分しっかりやってもらうからね。さあ始めるわよ、まずは前回の復習から!」
「はい!」
喜多ちゃんって人に教えるの上手そうだよね。私はどうなんだろう?今や中々のギタリストになった喜多ちゃんを教えたのは私だけど…じゃあそこそこ上手いんじゃないかな?うへへへ…っといけない、またふたりに呆れられちゃう。頬を緩めるな私!ほら、今まさに私を見たふたりが呆れた顔を…
「さあもう一回よ。やってみて?」
「はい!…あーーー」
「うんうんそんな感じよ。でもまだ安定感がないわね。私がやるから見ててね」
「分かりました!」
あ、あれ?2人とも凄く集中してて私のことなんか1ミリも気にしてないや…。いいことだよね!うん!喜多ちゃんがいればふたりもきっと素敵な歌声が出せるようになるだろう。楽しみだなぁ。でもちょっと寂しい…。2人のことは邪魔できないし…ギター弾いてようかな。騒音になるからボーカルレッスンの邪魔になるか…。あ、そうだ。愛しの虹夏ちゃんにロインしてみようっと。虹夏ちゃん何してるかな?
私は邪魔をしないために押し入れに入ってロインのトーク画面を開き、文章を打ち込む
『お疲れさまです。今何していますか?』
これでいいかな?彼女なんだからもっと距離を詰めた文章にしてもいいような…あっでも昔SIDEROSの長谷川さんに送ったロインの文面がドン引きされてたらしいから普通でいいか。黒歴史っていくらでも湧いてくるなぁ。胃が痛い…虹夏ちゃん助けて…とりあえず送信…
「じゃあ次は…」
「分かりました!いきますよ…」
押し入れの外から2人の会話が聞こえてくる。頑張ってね、ふたり
虹夏ちゃん返信まだかな…結局リョウ先輩と焼肉行ったのかな?会計凄いことになってそう。ご愁傷様です…。そうだ、付き合ってるんだし財布も一緒にしていいんじゃ?私の広告収入を虹夏ちゃんに役立てられないかな。今度話してみようっと…あ
スマホが鳴った。返信が来た!早速内容を見てみると…
『やっほーぼっちちゃん。今はリョウとあたしの部屋にいるよ』
え、虹夏ちゃんそれ浮気…いやいやリョウ先輩だからノーカンだ。リョウ先輩だけは許せる。虹夏ちゃんの部屋私物沢山置いてあるし。今度から私も何か置かせてもらおうかな。何がいいかな。あ、返信しなきゃ
『そうなんですね。お昼は何食べたんですか?』
『リョウと焼肉行ったよ。お金隠し持ってたから全部払わされた』
返事早いな。結局虹夏ちゃんが払ったのか…ん?この文なんか変だな。虹夏ちゃんがお金隠し持ってたって違和感が…
『そうだったんですね。あまりリョウ先輩を調子に乗らせちゃダメですよ』
『はーい。リョウのことはなんだかんだ好きだから大丈夫だよー』
に、虹夏ちゃん!やっぱり浮気です!うわーん…いや待てよ、やっぱり変だな。この人虹夏ちゃんっぽくない。もしかして…
『あの、あなたもしかしてリョウ先輩ですか?』
『…バレちゃあしょうがない。あたしリョウだよー☆』
『虹夏が席外してていないから代わりに返信しといた』
やっぱり…。ってことはリョウ先輩がお昼ご飯代を払ったってことか。お金隠し持ってたんですね…
『あの、虹夏ちゃんまだ戻ってこないんですか』
『そろそろ来ると思う。なりすましてごめんね、会話相手が愛しの彼女じゃなくとはめね』
え、急に変な文が…リョウ先輩大丈夫ですか
『ぼっちちゃんごめんね!リョウの馬鹿が勝手に返信しちゃってて』
これは本物の虹夏ちゃんっぽいな。さっきの変な文はリョウ先輩が虹夏ちゃんに殴られながら打ったってことかな
『大丈夫ですよ。本物の虹夏ちゃんですよね?』
『そうだよー。あなたの彼女の虹夏ちゃんですよー』
『虹夏ちゃん…!』
あっやばい。嬉しくて変なスタンプまで押しちゃった。調子に乗るな私!嫌われちゃう…!
『なにそれー』
あ、虹夏ちゃんも謎スタンプで返してくれた。これは上手くコミュニケーションできたってことかな?ならよかった
『ぼっちちゃんは今暇なの?喜多ちゃんと一緒にふたりちゃんに教えてるんじゃ?』
『今は喜多ちゃんがボーカルレッスンしてるので私は暇なんです。だから虹夏ちゃんにロインしました』
『そっか。それなのにリョウが送っててごめんね』
『いえいえ、リョウ先輩もお元気そうで何よりです』
『勝手に殺すなってリョウが言ってるよ』
「ふへっ…ごめんリョウ先輩」
『ぼっちちゃん、今度1日暇な日にデートしない?』
「えっ」
で、デート!?そんな恋人同士がやるようなことを虹夏ちゃんと私が…って私達恋人同士だった。じゃあしてもいいのかな、いいよね?
『あっ私でよければ』
『ぼっちが嫌なら私きたさわはあらお』
「?」
『ごめん!またリョウにスマホ取られた』
リョウ先輩元気だな。わちゃわちゃしてるであろう2人を想像したら面白い。ちょっとだけリョウ先輩に嫉妬しちゃうけど
『私でよければ、じゃなくてぼっちちゃんだからデートしたいんだよ。私達付き合ってるんだから』
「虹夏ちゃん…」
『分かりました。行きましょう!』
『オッケー。じゃあ覚えておいてねー』
『はい』
に、虹夏ちゃんとデートの約束しちゃった…まだ日付も何も決まってないけど。楽しみだなぁ。へへへ…
「あ、お姉ちゃんやっぱりここにいた。なにしてるの?」
「えっ?」
唐突に襖が開いて光が差し込んできた。どうやらふたりに見つかったようだ。見つかるも何もここにいるのはすぐ分かるだろうけど
「虹夏ちゃんとロインしてた」
「ふーん、彼女とイチャイチャできてよかったね。それより私のレッスンの成果見てよ。ほら押し入れから出てきて!」
「あっうん」
ふたりに引っ張られるようにして押し入れから出る。もうレッスン終わったのかな?
「あっ喜多ちゃん、もうレッスン終わりなんですか?」
「まだやるけど休憩中よ。ふたりちゃんの途中経過を見てあげてね」
「あっはい。じゃあふたり、どうぞ」
「うん。いくよー」
「あっはい!」
「喜多ちゃんじゃないです」
「ごめん、つい反射で…」
そういえば喜多ちゃんのことを下の名前で呼ぶのは未だにリョウ先輩だけだな。私も呼んでみたいけどダメかな?喜多ちゃんは私のことずっと前から名前で呼んでくれてるし…
「じゃあお姉ちゃん聞いててね」
「えっ?…うん、お願いね」
「いくよー、…♪」
喜多ちゃんがまた少し反応してる。ちょっとかわいい。そしてふたりの方だけど、結構声出てる気がする。いいじゃん。流石は喜多ちゃんだ、教えるのが上手いんだろうな。そしてその喜多ちゃんを育てたのがこの私です。ふへへへ…あれ、歌に関してはなんもしてないや…でもギターは私の功績…へへ…
「お姉ちゃんどうだった…って何その顔。また妄想してる、ちゃんと聞いてた?」
「へへ…え?あっごめん。ちゃんと聞いてたよ。だいぶいいと思う。私は詳しいこと分からないけど」
「適当に言ってないよね?まあいいや。喜多ちゃんはどう思いましたか?」
「ふたりちゃんって思ったよりいい声出すわね。このまま頑張ろうね。けどちょっと甘いところはあるから、休憩終わったらもう一度復習からね」
「はい、よろしくお願いします」
喜多ちゃんかなりしっかりやってくれてるな。私も多少はスパルタで教えた方がいいかな?
「─じゃあ今日のボーカルレッスンはおしまいよ。お疲れさま!」
「ありがとうございました!」
「ちゃんと自分でも練習しておくこと。いい?」
「はい。自主練しかしてない人を見てきたのでそこはバッチリです!」
「ふふ、そうね。素晴らしいお手本が家族にいるもんね」
「あっ私のことか」
自主練しかしてなかったのは中学までだからね?っていうかふたりは私がバンドのみんなと練習してるところを殆ど見たことがないんだから、そりゃ自主練してる私しか知らないでしょ…
「じゃあ次はギター練習ね。ひとりちゃんお願いします」
「あっはい…って喜多ちゃんもやるんですか?」
ふたりだけでなく喜多ちゃんもギターを用意している。それもそうか、みんなギターだもんね
「当然よ。私も久しぶりにひとりちゃんに教わりたいし」
「喜多ちゃんに教えることはもう特にないと思いますけど…」
「いいえ、まだ沢山あるわ!ボトルネック奏法とかまだ知らないし」
「あっあれはまた特殊なので…」
「でもひとりちゃんは7年前からできてたじゃない!私もできるようになりたいわ!」
「うっ…じゃあ今度教えますよ。時間かかるかもしれないのであれですけど」
「ありがとう!頑張るね」
「あのー、結束バンドさん?」
「「あっはい」」
「また2人だけで盛り上がって…結束バンドってみんな自分たちだけの世界に入りがちですよね。お姉ちゃんのがうつったんじゃないですか?」
「えへへ、そうかも」
またふたりを放置して2人で盛り上がっちゃった…反省してます。そのくらい結束バンドは仲がいいってことでここは一つお許しを…
「まあいいよ。私もお姉ちゃんと仲いいもんね」
「ふたり、ごめんって。機嫌直してよ」
「別に怒ってないよ?でもお姉ちゃんってモテモテだよねー、かわいい喜多ちゃんと凄く仲いいし、かわいい虹夏ちゃんっていう彼女はいるし、こんなにかわいくて素敵な妹もいるし」
「えっ最後のは自己評価…なんでもないです」
「そうね、ひとりちゃんは魅力的だもの。でも1番魅力が出るのはギターを弾いている時よ。ということでギターレッスンお願いします、ひとりちゃん」
「あっはい。じゃあ始めましょう」
少し拗ねてるふたりの対処に困ったけど、喜多ちゃんが上手く練習を始める方向に持っていってくれた。もしかして姉の座譲った方がいい?とりあえず練習するか…
「あっじゃあみんなで何か弾いてみよっか。ふたり、やりたい曲ある?」
「私が弾ける曲ってまだ結束バンドのしかないよ…それも下手だし恥ずかしいよ」
「そんなことないわ。真っ先に結束バンドの曲を練習してくれてたってことよね?とっても嬉しい!」
「そうだよ。それに下手でも大丈夫、ふたりはこれから上手くなるんだから」
「…そっか」
始めから上手くできたら苦労しないからね。というかふたりは既にそこそこできるし恥ずかしがらなくてもいいのに
「そういえばひとりちゃん、結束バンドの曲って弾くの難しいらしいわよ。私ってもしかして上手い?」
「あっまあ…そもそも喜多ちゃんって上達が早すぎましたし、今だから言いますけど天才ですよ」
「そんな、照れるわよ〜ひとりちゃんの方が数段上手いんだから〜へへ…」
「喜多ちゃん…お姉ちゃんにだいぶ似てきましたね…」
だらしない顔で照れる喜多ちゃん。私っていつもこうらしいんだよね。喜多ちゃんがこんな顔してるの嫌だからやめよう…
「でもそうなんですよ、結束バンドの曲って難しすぎます!喜多ちゃんのパートでさえ私には死ぬほどきついです。初心者の頃の喜多ちゃんってどうしてたんですか?さては喜多ちゃん天才ですね?」
「そんな〜ふたりちゃんまで〜えへへ…」
「喜多ちゃん、株下がるからその辺で…」
「あはは…ねえ、作曲ってリョウさんだよね?あの人ドSなの?」
「基本はリョウ先輩だね。まあ期待してくれてるってことだよ。喜多ちゃんパートに関しては初期の曲についてはドSかも…」
喜多ちゃん以外は経験者だったけど喜多ちゃんは初心者だったからなぁ…喜多ちゃん凄いよね。もちろんミスってないはずはなかったけど。改めて考えると、ふたりっていきなりそんな難しい曲練習してたんだね。結束バンドの曲に触れてくれるのは嬉しいけど、もっと易しい曲からやった方がいいと思う…
「ね、ねえふたり、もっと簡単な曲覚えてみようよ。いきなり結束バンドはきついってお姉ちゃんも気づくべきだった」
「うーん、それも覚えたいけど、結束バンドの曲も弾けるようになりたい!っていうか1曲だけならまあまあ自信あるんだよ。それみんなでやらない?」
「えっほんと?」
「うん。私が1番好きな曲。どう?」
「それなら断る理由はないよ、やろうか。…喜多ちゃん戻ってきてください、いつまで浸ってるんですか!」
「えへへ…あれ、ひとりちゃん?」
「いつもと立場が逆だ…」
「あっ喜多ちゃん、ふたりが弾ける曲をみんなで弾いてみませんか?」
「いいわよ、どの曲かしら?」
「あっそれはですね─」
結束バンドさんの曲はドラムも相当難しいです