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「お姉ちゃん起きてー、今日は早いんでしょ」
「うーん…今日は人と話しすぎて疲れたので帰る…」
「まだ誰とも話してないでしょ。ほらさっさと起きる!」
「はっ!…あ、おはようふたり」
「おはようお姉ちゃん。早くしないと遅刻するよ」
そうだった。今日は結束バンドのみんなで集まる日だ。ギターヒーローとしてソロの活動もそこそこしている私は、今までよりもみんなと集まれる日は多くない。その分会える日は楽しみにしているので遅刻するわけにはいかない。ふたり、起こしてくれてありがとう。いい加減妹離れしないとなぁ
「ほら、顔洗って朝ご飯食べるよ。全くいつまでもダメなお姉ちゃんなんだから…」
うう…完全に上下関係が逆転している…。けどふたりはふたりで過保護すぎるのも悪い。まるで虹夏ちゃんみたいだ。虹夏ちゃんも妹なのにしっかりしてるよなぁ…妹って凄い。…虹夏ちゃん、か。今日会うんだよね。なるべく平静を装うようにしないと。べ、別に告白の返事を催促しようなんて思っていなんだからね!いくらでも待つんだからねっ!
「…お姉ちゃん、急にツンデレになってないで早く下行くよ」
「えっ」
また考えてること読まれてる!?そういえばふたりもエスパーなんだよね。私の周りの人大体エスパーだな…
「行ってきまーす」
「いってらっしゃい。あっそうだ、今日は帰ってくる?」
「今日は打ち合わせだけだから、夜までには帰るつもりだよ」
「分かったわ。気をつけてね」
「はーい」
お母さんに見送られて家を出る。ふたりにギター教えないとだし、ちゃんと今日も帰る予定だ。中学の文化祭まで日数はあるけど私が暇な時間はそう多くないかもだし
「おはようございます」
「おはよう、ぼっち」
「おはようひとりちゃん!」
「おっおはようーぼっちちゃん」
STARRYに着くともうみんな集まっていた。今日の打ち合わせはここで行う。打ち合わせといっても、次のライブはSTARRYでやるから普段通りってやつだ。ところで虹夏ちゃんの様子だけちょっと変な気がする。なんかそわそわしているような…ってそれもそうか。私に告白されたんだから。ごめんなさい!でもお返事待ってます!
「よ、よーし!ライブの打ち合わせ始めようか」
「待って虹夏。その前に言うことがあるでしょ」
「え?」
「そっそうなんですか?」
「え、いや、特にないけど…」
「伊地知先輩、多分打ち合わせの後に言うつもりなんでしょうけど、来た時からずっとそわそわしててこっちが落ち着けません。先に言っちゃいましょう」
「う、喜多ちゃんまで…」
みんな虹夏ちゃんの異変に気づいてたみたいだ。まあ分かりやすいもんね。でも何の話をするんだろう。まさか告白の返事…ないか、みんなのいる前ではしないよね
「あっあの虹夏ちゃん、言いたいことがあるならどうぞ」
「ぼっちちゃん…分かった、思い切って言っちゃおう!」
「ついに我々の苦労が報われるのか…」
「長かったですねー」
え、ほんとに何の話?リョウ先輩と喜多ちゃんの苦労って?
「ぼっちちゃん。後で言おうと思ってたんだけど今言うね。聞いてくれる?」
「えっ私?あっはい、聞きますよ」
「ありがとう。じゃあ、するね」
えっ何これ。虹夏ちゃんの話って私宛てなの?それってもうあれしかなくない?いやクビとか切り出される可能性もあるけど…。よし、覚悟を決めよう。ふたり、信じてるからね。あと喜多ちゃんも…喜多ちゃんの方をちらっと見ると、生暖かい目線を返された。…信じてるからね?
「…ぼっちちゃん、この前の返事をします」
「あっはい!聞きます!」
やっぱりそうだった!虹夏ちゃんは答えを出してくれたんだ。いくら信じてるとはいえ怖いよ…!もし悪い返事だったら私は…いや、悪い方に考えちゃダメだ。きっと大丈夫、うん
「打ち合わせの時間削ったらよくないし簡潔に言うね。私、ぼっちちゃんの告白を受け入れます。だから、これからお付き合いよろしくお願いします!」
「…!」
「…遅い」
「全くです」
「…これがあたしの返事だよ。待たせてごめんね…ぼっちちゃん?」
「まあ、こうなるよね」
「いくら大丈夫と分かってても、ひとりちゃんですもんね」
「えっ冷静すぎない?ぼっちちゃん生き返って〜!」
「あの、大変申し訳ございませんでした…」
「気にしないで。もう慣れすぎて何とも思わないから」
「今回も好タイムでしたね!でも先輩知ってますか、ふたりちゃんはもっと早く直せるんですよ」
「ぼっち妹、流石だ…」
虹夏ちゃんに告白の返事をされた。その中身は…OKだった。私は虹夏ちゃんと付き合えることになった。やった!!!!!嬉しい!嬉しいんだけど…嬉しすぎてさっき虹夏ちゃんの返事を聞いた直後に爆死してしまった。すかさずリョウ先輩と喜多ちゃんが直してくれて、今ちょうど生き返らせてもらったところだ。いつもすみません…
「ぼっちちゃん大丈夫?」
「あっ虹夏ちゃん…はい、大丈夫です。嬉しすぎて死んじゃいました…ふへへ…」
「もう…じゃあ、これからは恋人としてもよろしくね。ぼっちちゃん」
「あっはい。よろしくお願いします」
「早速だけど一つ約束しようか」
「約束ですか?」
「うん。ぼっちちゃんと付き合えて私も今死ぬほど嬉しいんだけど、恋愛にうつつを抜かしすぎるのは禁止ね。あくまで最優先事項はバンド活動。夢をかなえるまではそうしようと思うんだ。ダメかな?」
「あっはい、賛成です。じゃないと私、今すぐにでも虹夏ちゃんに抱きついちゃいそうなので…」
「う…それくらいいいんじゃないかな?ね、リョウ?」
「何で私に聞いた。敢えてダメだと言おう」
「そんな!」
「付き合った途端我慢やめたわね、ひとりちゃん」
「だってもう恋人同士だから…」
今までは虹夏ちゃんとベタベタするのは我慢してたけど(※喜多談:「できてない」)もう遠慮しなくていいよね?けど、そればかりになりそうだからバンド最優先という約束はむしろありがたい話だ。理性を保つのにバンドほど有効な理由はない。私最低だな?バンドが1番大事なのはずっとそうだよ!その1番に虹夏ちゃんが加わったってだけ。どっちも大事にします!
「虹夏ちゃん、少なくとも虹夏ちゃんの夢をかなえるまでは今のままでいきましょう。じゃないと私虹夏ちゃんに何するか分かりませんし…」
「ケダモノぼっち爆誕。虹夏、強く生きろ…」
「うう…分かったよ。私だって抑える理由がないとぼっちちゃんに何するか分からないし、そうしようか」
「リョウ先輩、惚気しか聞けなそうなので帰りませんか?」
「よし、帰るか。お昼ご飯奢って」
「仕方ないですね。またツケ帳簿にメモしないと…」
喜多ちゃんそんなもの作ってたんだ…私も作ろうかな
「待ってよ!もうこの話は終わりにするから。ライブの打ち合わせしようよ!」
「じゃあお昼はぼっちと虹夏の奢りということで」
「ですね!」
「えっ」
「釈然としないけど…分かったよ。じゃあ打ち合わせ開始!拍手!」
ということでいい加減ライブの打ち合わせを私たちだった。私も浮かれずにしっかり話に参加した。さっき約束したばかりだからね
そして話し合いも終わり、時間はお昼を過ぎていた
「そういやまだ言ってなかったね、おめでとう虹夏。ずっと日和って自分から告れなかったへたれのせいでこっちは何年も心的疲労が凄かった。お詫びになんか奢って」
「ひとりちゃん、私も同じだから後で何か買って」
「えっそれ祝ってんの?けなしてんの?」
「両方です。昨日ふたりちゃんには言ったけど、私6年前からずっとくっつけって思ってたんですよ」
そういえば昨日喜多ちゃんと電話したふたりがそう言ってたな。私が虹夏ちゃんのこと好きだって気づいたのは5年前なんだけどなぁ、おかしいなぁ
「甘いね郁代。私は6年半前からそう思ってたよ」
「えっ…先輩流石です!」
「ふっふっふ、甘いのはリョウもだよ。私はぼっちちゃんと出会った7年前から運命感じてたもんねー」
「えっ」
「自分で言ってて恥ずかしくないの」
「めっちゃ恥ずかしいです…殺してください…」
虹夏ちゃんの顔が真っ赤だ!けど出会った時から運命感じてたなんて嬉しいな…実際運命的な出会いしたもんね
「あっあの虹夏ちゃん、凄く光栄なので生きてください。私はずっと運命の人と一緒にいたいので」
「ひとりちゃんって恥ずかしいことさらっと言うわよね。これだから天然たらしは…」
「いっそのこと聞くけどさ、郁代ってぼっちのこと好きだった時期あるでしょ」
「ありますよ?2年くらい好きでした。けどひとりちゃんには伊地知先輩しかいないなってずっと分かってたので、自然と諦めちゃいました。失恋とかじゃないです。それにひとりちゃんと1番仲がいいのは私ですから。同学年特権です!ねー」
「あっ確かに喜多ちゃんとは同じ学年同士通じ合えてると思います」
1番好きなのは虹夏ちゃんだけど、友達としての1番は同学年の喜多ちゃんかなあと思う。虹夏ちゃんって先輩だからどうしても気にしてしまうところはあるんだよね
「むっ、いきなり浮気?いいもん、あたしだってリョウがいるから。ねえリョウ、お昼ご飯どこがいい?今日は何でも奢るよ」
「ほんと?じゃあ焼肉行こう。2人だけで」
「あっ虹夏ちゃん酷い…!こうなったら喜多ちゃん、今日は私の家に来ませんか」
「え、いいけど。あれもやりたいしちょうどいいわね!お邪魔するわ」
「ぼっちちゃんそれは完全に浮気だよ!酷い!」
「違うんです先輩!この前言ったあれですよ、ふたりちゃんとバンドやるって話です」
「ああそれか。喜多ちゃんは歌のレッスンするんだっけ?」
「はい。ふたりちゃん見込みあるので時間が許す限り教えてあげたいんです」
「それならいいか。けど喜多ちゃん、ぼっちちゃんに手出したらどうなるか分かるよね…?」
虹夏ちゃんが指をボキボキ鳴らす。いつから虹夏ちゃんは暴力キャラになってしまったんだろう。絶対にリョウ先輩のせいだ
「分かってますよ、いくら好きだった頃があるとはいえそんなことしません。ふたりちゃんもいるんですし。じゃあひとりちゃんよろしくね」
「あっはい。家に電話してきますね」
電話するために席を外した。ふたりは今日の放課後は暇かな?
『もしもし?ひとりちゃんどうしたの?』
「あっもしもしお母さん?今日さ、お昼食べたら帰ろうと思うんだけど喜多ちゃん連れていってもいい?ふたりにレッスンしたいから」
『いいわよー!喜多ちゃんなら大歓迎!夕飯も食べていってもらおうか』
「あっそれは後で聞いとくね。そういえばふたりって今日用事あるとか知ってる?」
『特に聞いてないわね…直接聞いたらどう?』
「それもそうだね。じゃあ喜多ちゃんと帰るからお願いね」
『分かったわー』
通話を切る。次はふたりに連絡を…ってふたりからロイン来てる。えーとなんだって?
『お姉ちゃん、彼女できた?できたよね?』
「えっ」
何で今日返事されたこと知ってるの?まさか盗聴…されてるわけないか。当てずっぽうで適当言ったに違いない。それより私からもメッセージ送らないと。『今日喜多ちゃん来るけど放課後は暇?』…と、送信。うわもう既読ついた。授業ちゃんと受けてるのかな?今はちょうど昼休みかな
『早速浮気?』
「違うってば!」
虹夏ちゃんが言うのはまだ分かるけどふたりまで…もう
『違うよ!』
『ごめんごめん。上のやつ無視されたから仕返し』
『喜多ちゃん来るんだね!すぐ帰るから待ってて!』
どうやら特に予定はなさそうだ。じゃあ練習時間も長めに取れるかな。ところで上のやつって…あ、無視してた。ごめん。ちゃんと言っておこう。ふたりにも感謝してるし
『分かった。あと無視してごめん。お姉ちゃん彼女できたよ。今度虹夏ちゃんも連れていくね』
『楽しみにしてまーす』
最後の返信とともに謎スタンプが送られてきた。やっぱり舐められてるよなぁ。まあいいか。そろそろみんなの所へ戻ろう
「あっお待たせしました。喜多ちゃん来ても大丈夫みたいなので行きましょう」
「分かったわ。ありがとうひとりちゃん」
「じゃあお昼行こう。虹夏とぼっちの奢りで」
「しょうがないなぁ。ぼっちちゃんいい?」
「あっはい。何年も迷惑かけちゃったみたいですし」
「では焼肉屋へレッツゴー」
「行かないからな?」
「えっでもさっき2人で行こうって…」
「あれはぼっちちゃんが浮気すると思ったからで…」
「わっ私そんなことしませんって!」
「分かってるよ、ぼっちちゃんがそんなことしないのは。ちょっと不安だけど」
「でも今日で恋愛沙汰のない結束バンドは終わりなわけですし、最後にお互いの1番の親友とご飯に行くのもいいんじゃないですか?伊地知先輩はリョウ先輩と、私はひとりちゃんと」
「それだ。私の虹夏は今日ぼっちの元へ旅立ってしまうから、せめて最後にお別れを…しくしく」
「嘘泣きやめろー。大袈裟すぎるよ!私とぼっちちゃんが付き合っても結束バンドは変わらないんだから」
「あっはい、そうですよ」
そういう約束もしたんだし今更結束バンド内で状況が大きく変わることもないだろう。もしかしてリョウ先輩は虹夏ちゃんのこと好きだったのかな。だとしたら少し申し訳ないな
「それは分かってるけどたまにはいいじゃん。今はそういう気分。恋愛だけじゃなく友情も大事にすべき」
「そうですよ、第二の家族のことも大事にしてくださいね。じゃないと私グレますから」
「きっ喜多ちゃんが反抗期に…!大変です虹夏ちゃん、今日のところは別々にお昼ご飯行きましょう!」
「ぼっちちゃん落ち着いてー。でも分かったよ、2人とも寂しいんだね?しょうがないから今日はそうしようか。ぼっちちゃん、今度はっていうかこれからはなるべく一緒にご飯食べようね」
「あっはい!沢山食べましょうね」
ということで何故か2人ペアでお昼に行くことになった。喜多ちゃんと行くことに不満は全くないけどね。食べたらそのままうちに帰っちゃおう
「じゃあそういうことで、ぼっち」
「あっはい」
「虹夏を泣かせたらしばくから」
「そんなことしません!リョウ先輩の親友は私が守りますから!」
「よし、合格。今度ぼっちもご飯奢ってくれたら完全に許そう」
「あっそれはいつでもどうぞ!私だって先輩ともまだまだご飯行きたいですし」
「そっか。じゃあ明日よろしく」
「あっはい!」
「こら、すぐ後輩にたからないの」
「伊地知先輩、とっくに手遅れですよ。私のツケ帳簿見ます?」
「見なくても大体想像つくからいいや。リョウ、後でしばく」
「許して…」
やっぱりリョウ先輩は虹夏ちゃんに弱いな。色んな意味で
「あっそうだ。伊地知先輩」
「なに?」
「私の大事な友人かつ家族かつギターの師匠を泣かせたらギターで殴りに行きますからね。覚悟してください!」
「怖ぇー…。けどそんなことさせないから安心して。っていうかリョウも喜多ちゃんも誰目線なの」
「「親友目線(です!)」」
「そっか。じゃあ親友達を怒らせないように頑張ろうね、ぼっちちゃん」
「あっはい、虹夏ちゃんのことは必ず幸せにしますので安心してください!」
「もう、馬鹿…//」
「なんかむかつくから1回しばいときます?」
「いや、お昼めっちゃ食べてめっちゃ奢らせた方がいい」
「確かに…そうしますね」
喜多ちゃんとリョウ先輩が恐ろしい会話をしている。けど喜多ちゃんにならいくらでも奢ってあげよう。だって私そこそこ有名だからそれなりにお金あるし?うへへへ…お昼ご飯だけと言わずに何でも買ってあげちゃいますよ…
「…はっ!」
「ふたりちゃんどうしたの?」
「なんとなくだけど、この後お姉ちゃんが女を誑かす気がする」
「ギターヒーローのお姉さんが?」
「うん。考えすぎかなー、やっぱり何でもない!」
「ふたりちゃんのお姉さんって面白い人なんだね」
「面白いけど面白くないよ。妹としてはいつも心配なんだから」
「ふたりちゃんも面白いなぁ」
「えっ」
とにかく平和でいて欲しい