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「お姉ちゃん、いま暇?」
「ん?どうかした?」
ふたりが私の部屋に入ってきた。妹だからいいけどノックすることを覚えた方がいいんじゃないかな。それとも別の場所ではしてるんだろうか。私が舐められてるだけか…。ふたりも中学生なんだから、人の痛みはそれなりに分かる歳だと思うんだけどなあ…
「ちょっと話がしたくて。今日これから用事ある?」
「流石に今からはないよ。あったらまだ帰ってないし」
「確かに。じゃあ話しようよ」
「いいよ。何の話?」
私が結束バンドに入ってから7年。バンドはそれなりの知名度を得てきている。虹夏ちゃんの夢にもだいぶ近づいたんじゃないかな。というか達成できている可能性もあるけど、現状に満足しないでずっと上を目指しているのが今の私たちだ。おかげ様で動画の広告収入に合わせてバンド活動でもそこそこの収入を得られるようになった。その代わり人前に出ることも増えて日々死にそうではあるけど…。なので家に帰れる日も昔よりはだいぶ少ない。今日明日は暇なのでこうして自室でゆっくりしていたところだ。ふたりには寂しい思いをさせているかもしれないな。…いやもう中学生だしないか?けど話がしたいなんて珍しい。たまには姉妹水入らずで会話するのも大事だよね
「あのさ、私のギター演奏聞いてくれない?」
「え?」
ふたりってギター弾けるの?今までたまに教えることはしてきたけど、すぐに飽きたりしてたからじっくり教えたことはないのに…
「その顔、私が弾けるのって思ってるよね」
「えっ、何で分かったの」
「お姉ちゃん分かりやすいから…。実はね、もうお父さんのギターってお姉ちゃんあまり使ってないじゃん。だから私が借りてこっそり練習してたの。お姉ちゃんここ数年は家にいない時間多いから隠れてやるのは簡単だったし、結構やってたんだよ?」
「そうだったんだ。ふたりってそんなにギターに興味あったの?」
「そりゃ実の姉が馬鹿上手いんだから興味を持つに決まってるじゃん。お姉ちゃん今やそこそこ有名人だし」
「そんな、照れるよ…へへ…」
「そういうとこだよ、お姉ちゃん…」
へへへ…そう、私は世間にギターヒーローバレしてからそれなりにメディアへの露出が増えた。同時期に結束バンドの知名度も上がったけど、それはギターヒーローのおかげだけではない。結束バンドもきちんと評価されることが増えてきたのだ。私としてはギターヒーローの方はもっと慎ましやかにやっていきたいけどね。まあ悪い気はしないです。へへ…
「でもそっか、お姉ちゃん嬉しいよ。じゃあ聞かせて、ふたりのギター」
「うん、じゃあ弾くよ」
「…終わりだよ。どうかな…?」
「…正直驚いたよ。かなり上手いじゃん」
「そうかな?ハードルが低かっただけじゃない?お姉ちゃんと比べたらミジンコ以下でしょ」
「そっそんなことないよ!お姉ちゃんは長くやってるだけでふたりの経験日数からしたら結構できてる方だと思うよ」
「ほんと?ありがとう、お姉ちゃん。えへへ」
ふたりが照れた顔になる。私と笑い方似てるかもしれないな。それでふたりの演奏だけど、思っていたより上手だった。中1の時の私よりは上手いんじゃないかな。そりゃ私は中1から始めたからあれだけど…。こんなにできるならふたりもバンドやればいいのに。いっそ提案してみようか
「ねえ、それだけ弾けるしギターが好きならふたりもバンド組んでみたら?あっでも中学でやるのってちょっと敷居高いかな?」
「どうなんだろ?お姉ちゃんができなかっただけで意外とできるんじゃない?」
「ぐはっ…お姉ちゃんのトラウマを刺激したな…」
「ごめん…。あのねお姉ちゃん」
「うん」
私の過去の悲しい記憶をフラッシュバックさせたかと思えば、急に真面目な顔になったふたり。切り替えが早くてお姉ちゃん尊敬しちゃうなあ。でもどうしたんだろ
「私、今年の文化祭でバンド組んでライブしてみたいと思ってるんだ」
「え…いいじゃん!やってよ、私の仇取ってよ!」
「お姉ちゃんの仇を取ろうとかじゃないんだけど…」
「あはは、ごめん。けどふたりがそこまでやる気だったなんて。ちょっとはお姉ちゃんにも話してくれてよかったのに」
「だから今こうして話してるじゃん。お姉ちゃん中々帰ってこないから話す暇ないんだよ」
「それはごめん…お姉ちゃんが悪いです…」
「もうちょっと言い返してくれてもいいのに…」
いえ、私が全面的に悪いです。…いやーふたりが文化祭ライブをしたいって思ってるなんてお姉ちゃん嬉しいな。中学では何もできなかった私の仇を是非取って欲しい。あれ、ということは実はもうバンドも組んでるんじゃ?姉の知らない所で妹が全てを3年早く始めている!?勝てねえ…
「あっじゃあふたりってもしかしてもうバンド組んでるの?」
「それはまだだよ。今日はそれについて主に話がしたかったんだ」
「?そうなんだ。じゃあ聞かせてよ」
「うん。私さ、後藤ひとりの妹じゃん。そこそこ有名な後藤ひとりの」
「そうだね…有名かな?へへ…」
あ、いけない。妹の前で調子に乗るのはやめよう。ところで何で2回言ったの
「…それでさ、私バレてるんだよね、お姉ちゃんの妹だって。天才ギタリストの妹だって」
「えっそうなの」
バレてるんだ…まあでも見た目似てるし、名前からして私たちが姉妹なのは一目瞭然か。もしかしてふたりは迷惑に思ってるのかな…思ってるよね。ごめんね、お姉ちゃんのせいで…
「それでね、普段からお姉ちゃんのサインを求められてるんだよ。しつこい友達もいるからいっそのこと書いてくれない?渡すから」
「えっほんとに?いくらでも書くから色紙買ってこなきゃ」
私のファンがふたりの中学にもいるんだ!うへへへへ…サインなんていくらでも書いてあげますよ…
「じゃあ後でお願いね。他にはさ、私がお姉ちゃんの妹ってだけで私もギターが上手いと勘違いしている人がいるんだよ。関係ないのにね」
「…ごめんふたり。迷惑してるよね、お姉ちゃん調子に乗ってごめん」
「ううん。私だって嬉しいんだよ?自慢のお姉ちゃんが学校でも人気で。けどちょっとだけ迷惑かも」
「あ、もしかしてふたりがギター練習してるのって周りの人に言われたから?」
そうだとしたら私はふたりを止めてあげたい。無理してやってもいいことなんてないはずだから
「違うよ、私がギターをやりたいからやってるの。お姉ちゃんのおかげなんだよ。だから心配しないで」
「そっか…。でもそうじゃないと文化祭ライブしたいとは思わないか」
「だねー。それでね、バンド組むためにメンバー集めないといけないじゃん」
「うん」
「でも私に寄ってくるのはお姉ちゃん目当ての人ばかりで…そもそも楽器やったことない人も多いし、ベースとドラム志望いないし」
「ああ…」
私目当てかあ…ふたりと仲良くなっても私と会うのは無理じゃないかな?私がその人たちに会うのが怖いから。この歳で情けない限りだ…。しかもそうだよね、中学でギタリストはいるかもしれないけどベーシストとドラマーなんてかなり貴重かもしれない。虹夏ちゃんやリョウ先輩みたいな人は稀なんだろうな
「あっでも喜多ちゃんって結束バンドに入った時は初心者だったんだっけ?だとしたらさっきの言葉ちょっとだけ訂正するね。楽器やったことなくてもいいんだよ。私だって初心者だし。ただお姉ちゃん目当てが嫌なのと、ベーシストとドラマーを集めたいの」
「そっか。初心者に関してはそうだね、喜多ちゃんはそうだったよ。今はかなり上手いから練習頑張ればそこはクリアできるはず」
「…まあ、正直ベースとドラムは諦めてるんだ。ギターだけでも何とかなりそうだと思うし。あとボーカルは欲しいかな」
「なるほどね。ボーカルはふたりがやれば?」
「え?うーん…考えとくよ。それでさ、ギタリストもせめてもう1人欲しくて探してたんだけど、中々私がいいと思える人がいなくて…」
「それってやっぱりお姉ちゃんのせいだよね。ごめんね」
「お姉ちゃんは悪くないよ!けど見つからなくて…だから学校でメンバー探すの諦めちゃった」
「え?」
諦めたって…それじゃあバンドは組めないじゃん。私の後追いはやめてよ…。1人で文化祭に出るのもいいかもしれないけど…
「お姉ちゃん、私は学校で探すのを諦めたって言ったんだよ。メンバー探し自体は諦めてないよ」
「え?…ああ、確かに。じゃあどこで探すの?」
「それはね…今目の前にスカウトしたい人がいるんだよね」
「目の前?…私!?」
「正解~!」
え、私なの?ふたりと私で中学の文化祭ライブ!?いや、私自身であの時の自分の仇を取るチャンスでは?それは…やりたいかも。けどスカウトは困るなあ…
「ふたり、気持ちはありがたいけどお姉ちゃんは結束バンドをやめるつもりはないから…」
「それは分かってる!お姉ちゃんの居場所を取るつもりはないよ。ただ文化祭のために期間限定で組んで欲しいの。それともお姉ちゃんはサポートすらもダメかな…?」
「…サポートも引き受けたことないよ。万が一引き抜かれそうになったら嫌だと思ってるから」
「そっか…じゃあやっぱり…」
しゅんとしてしまうふたり。待って、続きを聞いてね
「でも、ふたりならいいよ」
「え?」
「ふたりは私を引き抜くつもりはないんでしょ?」
「もちろん!今言った通りだよ」
「だったら組んであげる。期間限定バンド」
「ほんとに!?ありがとうお姉ちゃん!」
「うわっ」
ふたりが感激のあまりか抱き着いてきた。もう、まだまだ子供っぽいんだから
「…でも私って中学の文化祭に出れるの?私がいた時は外部の人間なんて来なかったよ」
「それは大丈夫!生徒会にも先生にも結束バンドやお姉ちゃんの大ファンがいるから!」
「それはありがたいけど…まあいいや。だったら心配ないね」
「あっでもお姉ちゃん自身の時間はどうなの?忙しいのに」
「大事な妹のためなら隙間を縫って頑張るよ。だからふたりも頑張ってよ?まだ何か月かあるしいけるって」
「お姉ちゃん…ありがとう!それで、実はもう一つお願いがあるんだけど…」
「なに?お姉ちゃんに任せなさい!」
珍しくふたりに頼られてめちゃくちゃ調子乗ってるな私。ふたりのためなら結束バンドのためと同じくらい頑張っちゃうもんね
「あのね、喜多ちゃんとも一緒にやりたいんだけど…どうかな?」
「喜多ちゃんと?」
これは予想外だ。ギター3人でやりたいってことかな。あとボーカルもか
「喜多ちゃんすっごく歌上手いじゃん?ボーカルも欲しいしギター3人ユニットも悪くないかなあと思って。ダメかな…?」
「それは…喜多ちゃんに聞かないと分からないや」
喜多ちゃんなら引き受けてくれるだろうけど、負担をかけるのは…
「ねえ、ふたりは姉妹ユニットじゃ嫌?喜多ちゃんにまで負担かけるのはちょっと申し訳ないかな…」
「だよね…お姉ちゃんと2人でやるのは嫌じゃないよ。むしろ光栄!けど、ボーカルが欲しくて…」
「そっか。お姉ちゃんが毎回自信をもって歌えればよかったんだけど、ごめんね」
「ううん。あのね、わがまま言って本当に申し訳ないけど喜多ちゃんに聞くだけ聞いてくれないかな?」
「…分かった。かわいい妹の頼みだもんね。今ロインで聞いてみるよ」
「お姉ちゃんめっちゃ機嫌いいね。そんなに私に頼られて嬉しい?」
嬉しいよ。それはもう嬉しいよ。大きくなったふたりと一緒に何かできるのがお姉ちゃんにはたまらなく嬉しいんです。それがバンドとなればもう最高だ。ふたりにはなるべくいい思い出を作って欲しいし、喜多ちゃんにも聞いてみよう
『喜多ちゃん、ちょっと相談が…』
「—あ、返信来た…電話したいって、いい?」
「うん。その方が伝えやすいし」
「分かった。いいですよ、と」
メッセージを送った直後に電話がかかってきた。早すぎる。私は通話に出るボタンをタップした
『もしもし、ひとりちゃん?』
「あっ喜多ちゃん。すみません突然」
『全然いいわよ。それで相談って?ふたりちゃんのことなのね?』
「あっはい。ふたりが直接話したほうがいいと思うので代わりますね」
『あ、待って。ビデオ通話にしようよ』
「えっビデオ通話ですか?」
えっそれは緊張する…ってふたりが主に話すからいいか。どうやって変えるんだっけ、あれ?
「もう、お姉ちゃん貸して…こんばんは喜多ちゃん!突然すみません」
『ふたりちゃん!久しぶりね、元気にしてる?』
「はい!おかげさまで元気です。早速ですけど相談があります。聞いてくれますか?」
『いいわよ。何かしら?』
「実は…」
『…なるほど。ふたりちゃんの中学の文化祭に私も出て欲しいってことね。ふたりちゃんとひとりちゃんと私の即興バンドで』
「はい。勝手なお願いなのは分かっています。でも喜多ちゃんも一緒に出てくれたら凄く嬉しいです。どうでしょうか!」
ふたりの説明が終わり、喜多ちゃんも話は理解してくれたようだ。途中雑談も混ぜてたけど、やっぱりこの2人仲良いよなぁ。初対面の時点で打ち解けてたし、明るい者同士通ずるものがあるのだろう
『うーん、私は構わないわよ。ひとりちゃんはどうなの?』
「あっ私もふたりと一緒にやるつもりです。妹の頼みですし」
『ふふっ、ひとりちゃんはいいお姉さんね』
「はい。普段は残念な生き物ですけど」
生き物って…せめて人間って言ってくれないかな
『ところで、私も誘ってくれた理由って私がギターやってるからなの?それなら姉妹ユニットの方がこう…エモくないかしら?』
「「エモい?」」
『そうよ、歳の差が大きい仲良し姉妹のバンドなんて素敵じゃない!エモエモのエモよ!私だって見てみたいわ』
喜多ちゃんのテンションが上がっている。そんなにエモいかな?ふたりとやれるのは楽しみだけど
「えっと…姉妹ユニットもいいんですけど、私は喜多ちゃんともやりたいです」
『そっか。そういえば詳しい理由を聞いてなかったわね。結局どうして私を誘ってくれたの?』
「喜多ちゃんを誘った理由は単純です。ボーカルをやって欲しくて…」
『そういうことか。別に喜んでやるけど…ちょっと待ってね』
「あっはい」
喜多ちゃんどうしたんだろう。ボーカルやってくれないのかな。それはちょっと、いやかなり困るかも…
『…うん、ボーカルもやってあげるわ』
「ほんとですか!ありがとうございます!」
『ただし!』
「「?」」
『ふたりちゃんも一緒に歌うこと。それが引き受ける条件よ』
「「えっ?」」
『ふふっ、驚く様子がそっくりね。やっぱり姉妹なのねー』
「え…喜多ちゃん、本気ですか?」
『本気よ。私、ふたりちゃんの歌聴いてみたいなぁ。ねえひとりちゃん、ふたりちゃんって歌上手い?』
「えっと、私よりは上手いと思います」
自分の歌がどのくらい上手いかは分からないんだけどね。ふたりは少なくとも下手ではないと思う
『じゃあ心配要らないわね。どう、ふたりちゃん?歌ってくれないなら悪いけど結束バンドで忙しい喜多ちゃんはお受けできないの…うう…』
「きっ喜多ちゃん、あまりふたりをいじめないでください!」
今日の喜多ちゃん、なんだかちょっと意地悪だ。しかも凄く楽しそう。ふたりと話せて嬉しいのかな
『ごめんねひとりちゃん。けど、私達が組むバンドは文化祭のためだけの即興バンドでしょ。それが終わったら解散。ふたりちゃんがその後もバンド活動をしたいなら、私達に頼らずにやっていかなきゃいけないよね』
「それは…そうですね」
『うん。そうなったらボーカルも欲しいじゃない?私じゃないボーカルが』
「はい…」
『もちろん歌の上手い子を見つけるのもいいけど、どうせならふたりちゃんが歌えばいいと思ったの。ひとりちゃん曰くかなり上手いらしいし』
「あっ私はそこまで責任持てないですよ…」
「そうですよ、お姉ちゃんは適当言ってるだけです」
「うぐっ…」
ふたりの容赦ない言葉が突き刺さる。けど、別にそこまで適当ではない。嘘は言っていないはずだ
「…分かりました。私も歌います。だから一緒にバンド組んでください。お願いします、喜多ちゃん」
『分かったわ。よろしくね、ふたりちゃん』
「…ふたり、大丈夫?嫌なら正直に喜多ちゃんに言っていいよ。お姉ちゃんがなんとかするから」
『ひとりちゃんがどうしてもって言うなら考えるけど…』
「いえ、もう決めましたから。そのうえで2人にお願いがあります」
「お願い?」
「うん。お姉ちゃんにはギター、喜多ちゃんには歌の練習に付き合って欲しいの。もちろん2人は忙しいだろうから無理にとは言わないけど…」
「なんだ、そんなことか」
『断る理由なんてないわよ、ね?』
「あっはい。っていうか最初からふたりに教えるつもりでいたんだけど」
「え…そんなにあっさり了承してくれるの?」
「『もちろん!』」
ギターはちょっとできるとはいえふたりのバンド人生はこれからだからね。お姉ちゃんでよければ出来る限りサポートするつもりだ。喜多ちゃんも一緒ならなお心強い
「ありがとうございます喜多ちゃん。お姉ちゃんも」
『いいのよ。でもスケジュール調整しないとだからすぐには無理かも。最初はひとりちゃんが帰ってる時にギターの練習だけお願いできるかしら?』
「あっ分かりました。じゃあ明日は暇だし早速やろうか、ふたり」
「うん、お願い」
『いいなー、明日はバンド活動はないけど用事があるのよね。私もふたりちゃんに会いたいー!』
「そのうち会っていただくんだから我慢してください。先にギター上手くなっておきますから」
『む、言っておくけどギターボーカルって大変なんだからね!私を舐めないでちょうだい!』
「舐めてませんよ、むしろお姉ちゃんより尊敬してますから」
「えっ」
そんな…喜多ちゃんに負けた…。私ふたりの家族なのに…。ギターヒーロー敗北…さようなら…
『…ひとりちゃん灰になってるわよ』
「よくあることじゃないですか。放置しておけばそのうち戻りますよ」
『あっそうなの?私達いつも頑張って修理してるんだけど』
「早く直したい時はそうした方がいいですね。ふふ、お姉ちゃんのことなら私だって詳しいんですよ?」
『ふたりちゃん…侮れないわね』
「当然です!家族ですから。だからバンドだって上手くいくに決まってます。家族のお姉ちゃんと、お姉ちゃんと家族みたいに仲がいい喜多ちゃんが一緒なんですから」
『…そうね。ふたりちゃん知ってる?バンドって第二の家族なのよ。ふたりちゃんと私もバンドを組むから、これからは家族みたいなものね』
「そうなんですね。改めてよろしくお願いします、喜多ちゃん」
『こちらこそ、数ヶ月の間だけどよろしくね。ふたりちゃん。…ところで、ひとりちゃん直してくれない?』
「別にいいと思いますけど…分かりました。えーと灰になった時は…こうしてこうか。お姉ちゃん、起きてー」
「…はっ!あれ?私何してた?」
記憶が飛んでるような…あっそうだ、喜多ちゃんに負けたんだった。姉の尊厳は完全になくなってしまったんだ…
『え、ふたりちゃんプロ?今一瞬で直してたけど』
「だから言いましたよね、私お姉ちゃんのことは詳しいんですって。お姉ちゃんは簡単には渡しませんよ?」
『むむ…まあいいわ、今度直接会った時にひとりちゃんについて沢山教えてくれる?』
「はい!楽しみにしてますね」
『私も。じゃあ後で会える日教えるからよろしくね』
「分かりました!」
2人はだけで随分会話が弾んでるな…負け犬は黙って眺めることしかできないんだ…うう…
「お姉ちゃん、そろそろ電話切るよ。喜多ちゃんに挨拶して!」
「え?…あっ喜多ちゃん、ふたりに付き合ってもらってありがとうございました。暫くの間3人のバンド活動もよろしくお願いしますね」
『うん、よろしくね。先輩たちにも話しておいた方がいいわよね?』
「あっそうですね。そういえば明後日って何時集合でしたっけ?」
『確か…11時よ。遅れないでね?』
「分かってます。リョウ先輩じゃあるまいし」
『ふふっ、また遅刻して伊地知先輩に怒られるのかしらね』
「そうかも…ふふっ」
「…お姉ちゃん、喜多ちゃん、結束バンドの話は後にしてもらえますか」
「あっごめんふたり!じゃ、じゃあそういうことで!喜多ちゃんありがとうございました!」
『う、うん。ごめんねふたりちゃん、またね!』
そう言って電話が切れた。2人だけで会話が盛り上がったせいかふたりが不機嫌になってしまったので、最後は慌てて通話を終える形となってしまった。ごめんねふたり。でもお姉ちゃんも数分前に味わったやつだからおあいこってことで
「はぁ…ほんとに仲がいいね、結束バンドは」
「うん。積み重ねてきた年月があるからね」
「むぅ、お姉ちゃんのくせに生意気。私とも積み重ねてよね。バンド組むのは短い間だけど」
「もちろんだよ。いやー楽しみだなぁ、ついにふたりがバンドを組む日が来たんだね」
「お父さんみたいなこと言ってる…お姉ちゃん歳?」
「なっ…!」
そういうこと言っちゃいけません!お姉ちゃんはまだ若いんだから!っていうかふたりが若すぎるんだよ…
「じゃあお姉ちゃん。これから暫くの間私と一緒にバンド活動してください。よろしくお願いします」
「どうしたの改まって…。私こそよろしくね、ふたり。ふたりが文化祭の後もしっかりバンドができるように沢山教えてあげるから」
「それは嬉しいけど…お姉ちゃん仕事あるでしょ?無理しないでね」
「あっふたりのためなら仕事減らすよ?家族の方が大事だから!」
「いつも家を空けまくってるくせに…けど、暫くはちょっとだけ甘えようかな。お仕事は減らしすぎないでね?減らせるやつだけ減らすんだよ?」
「わ、分かりました…」
これじゃあどっちが姉か分からないなぁ…。けど、こんなにふたりと話したの久しぶりだな。これからは普段からもう少し家にいる時間を作ろう。仕事っていうか本業のバンドも頑張るぞー、おー
「そういえばバンド名どうする?ふたりが決めなよ」
「えー、どうしようかな…。考えとくね」
結束バンドがネタすぎるから割となんでも大丈夫に思えそうだな。今となっては結束バンドって名前は世界一重要な言葉だけど
「じゃあ今日はもう寝ようか。明日からしっかり練習するんだよ。やる曲も決めないとね」
「分かってるよ。っていうかお姉ちゃん、まだ晩御飯食べてないじゃん…」
「あれ?」
「2人ともご飯よー」
「あ、お母さん呼んでる。行こう、お姉ちゃん」
「うん」
ふたりとバンドか…改めて考えると凄く感慨深いな。喜多ちゃんもよろしくお願いします。結束バンドとはまた違う期待を抱きつつ、とりあえず晩御飯を食べるために階段を降りる私だった
仲のいい後藤姉妹が書きたかっただけ
将来はふたりちゃんもギターやるんですかね